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切迫した私の人生、基本所得反対論者が憎い

[ワーカーズ開講準備号] 基本所得姉さん、私たちを救えるのですか?(5)

ユン・ジヨン記者 2017.02.25 12:47

[扉]今回は『基本所得』だ。 半額登録金、基礎老齢年金に続いて新しく発掘された大統領選挙用の福祉問題だ。 万人に平等な基本所得とは。 なぜか、今の窮乏した生活と不平等な構造を一気に解消する万能の鍵のようだ。 だが私たちが暮らしている資本主義社会はそれほど扱い易い相手ではない。 資本主義メカニズムが不平等を内在していることを知らない人はいない。 力が傾いていることからして不公平だが、彼らが素直に金と不平等の権力を差し出そうとするだろうか。 何か別の内心が隠されているようだ。 「チャムセサンXワーカーズ」は気になった。 基本所得が施行される未来の社会では、私たちの人生は平等だろうか。 そして崖っぷちに立つ人々を救い出せるだろうか。 悩んだ末に5回にわたり、企画連載記事を載せることにした。

大統領選挙局面のホットイシューに浮上した基本所得。 国民の半分以上が支持する流行のアイテムでもある。 基本所得をもらったらまず何をすればいいのだろうか? 浮き立って決心しようとした途端。どこかから殺人タックルをかける人たちが登場する。 基本所得が不平等をさらに深める逆行政策だという主張と共に。 さらに背信を感じるのは、彼らが「過剰福祉」や「堕落」を云々する保守勢力ではなく、進歩陣営の人たちだという事実だ。 暮らしが苦しく、基本所得をもらいたいというのに、なぜ彼らは久々に注目されている福祉問題にケチを付けるのか。 彼らに訊ねたい。 基本所得ほどに確実で至急な社会福祉政策には何があるのかと。 基本所得を邪魔して、何をどうしようというのかだ。

[出処:チャムセサン資料写真]

豊かさの中の貧困、それも貧困のくびきだ

整理解雇、非正規職があふれる世の中。 良質の仕事を探し回るが、結局到達する所は雇用絶壁でしかない社会。 そして4次産業革命で機械が雇用を代替する暗鬱な未来。 これらすべてを打開する代案として基本所得が出てきた。 すべての国民に対し、公平かつ平等に、何の条件もなく、一生支払われる現金所得。 普遍的福祉の決定版。とてもシンプルだ。だから興味がある。 なぜか大韓民国にはたった一人も野宿者がいなくなりそうだ。 だがシンプルなことはしばしば重要な変数も単純化させるもの。 基本所得反対論者が注目しているのも、シンプルさを打ち出す中であらわれるさまざまな穴だ。

最近の基本所得論争は、以前の無償給食論争で「普遍的福祉は善良だ」というフレームが維持・発展する過程と脈を同じくする。 だが現在の社会構造の中で、普遍的福祉は天使と悪魔という二つの顔を持つヤヌスだ。 社会福祉と労働フォーラムのチェガル・ヒョンスク博士は 「国民基礎生活保障基金40万ウォンと国民年金20万ウォンを受領する保護生活者がいると仮定すれば、現在彼が受け取れるのは40万ウォンだけ」と説明した。 その言葉はつまり、現在の制度設計が重複年金の受領が禁じられていて、最高受領額に当たる年金しか受けとれないという意味だ。 もし社会保障制度が縮小され、50万ウォンの基本所得がすべての国民に支払われたら。 生活保護受給者が受け取る所得は相変らず50万ウォンだ。 政府が今年、基礎生活保障給与水準の現実化政策として出した平均受給額は54万4千ウォンだ。

チェガル・ヒョンスク博士は「基本所得はむしろ不平等を深める逆行の政策になる可能性がある」とし 「普遍的、選別的福祉は善悪の問題ではなく、選別的福祉は不平等緩和のために無条件作動させるべき政策」と説明した。 正規職と非正規職の格差を減らすために非正規職の労働条件を押し上げなければならないように、 貧困層の生活を押し上げるには公共扶助の拡大が必須だ。 進歩陣営の基本所得反対論者が強調しているのもこの部分だ。 優先的に非正規職と老人、青年、貧困層などの社会的弱者の所得保障をセッティングしようということだ。 もちろん現在の設計の福祉制度では到底望めない。 最近問題になった映画の中の場面のように、失業給付一つ受給するのにも、途方もない羞恥心に耐えなければならない。 資格要件を証明するために、あらゆる個人情報が暴かれたりもする。 チェガル・ヒョンスク博士は 「現在の社会福祉体系は変わらなければならない」とし 「だがいくら問題が多いからといっても、不平等の緩和を目標にしていることは否めない。 重要なことは問題があるからといって無条件になくすのではなく、正確に問題を診断してこれを直していくこと」だと強調した。

労働の時代が暮れ、基本所得の新しい陽が昇るか

基本所得の議論は未来の雇用問題、つまり労働の問題と相対している。 4次産業革命で多くの雇用が人工知能とロボットで代替されるという危機。 そして幾何級数的に増える非自発的失業者の生計をどう解決するのかに対する質問が悩みの出発点だ。 悩みの結果は「脱労働」だ。 生産手段の所有の問題に触れず、背を向ける方式だ。 基本所得の非現実性もここから出発する。 韓神大のキム・ソング国際経済学教授は「労働の基礎がなければ福祉政策は存立できない」とし 「福祉政策を施行するには財政がなければならず、財政のためには所得がなければならない。 剰余価値や地帯所得を生産するのは機械ではなく労働者」だと説明した。 生産現場から労働者が排除されると、租税の基盤になる付加価値も減らざるを得ないということだ。

[出処:チャムセサン資料写真]

キム教授は「労働者が追放されれば利益率が低下する。 そうすると投資が減り、資本蓄積が鈍化し、雇用はさらに減る」とし 「このように付加価値の基盤財源がなくなった状況で、すべての人々が基本所得をもらえるというのは夢のような話」と指摘した。 雇用をめぐる質問そのものが間違っているという批判もある。 「雇用が減れば」ではなく、「長時間労働をなくせば」から出発しなければならないということだ。 チェガル・ヒョンスク博士は「3次産業革命の時は全世界の雇用の3分の1が消えると言われ、 コンピュータが発明されてからは単純労働がなくなると言われた」とし 「だがわれわれは今、コンピュータの前で夜を明かして働く。 10人がしていたことが5人に減ったのかはともかく、労働強度は強化された」と説明した。 安定した雇用を減らし、雇用競争をあおり、長時間労働を固着化させるいつものやり方だ。 そして労働界はかなり長い間、労働時間短縮で雇用を分けあうべきだと要求してきた。

さまざまな憂慮と批判にもかかわらず、「基本所得」は相変らず政界のホットイシューだ。 ここで確かめるべきことは、彼らに必要なものが本当に「基本所得」なのか、あるいは基本所得という「ネーミング」なのかだ。 先に言及したように、基本所得は何の条件もなく、すべての国民に同じように支払われる現金所得だ。 だが基本所得の伝導師を自任する李在明(イ・ジェミョン)城南市長のモデルはこれと違う。 城南市が推進した青年配当から、彼が公約に掲げた「児童、青少年、青年、老人、障害者、農漁民に年100万ウォン地域貨幣配当」まで、すべて基本所得だと命名した。 キム・ソング教授は「李在明市長が言う基本所得は、すべてこれまで存在している社会保障制度」とし 「大衆の支持は単に『基本所得』だからではなく、瓦解した生存条件を維持する社会保障制度に対する反応」だと分析した。 政界が社会保障制度に「基本所得」という包装紙をかけた理由は、何よりもシンプルだ。 キム教授は「半額登録金、基礎老齢年金など、大統領選挙の時に政界が問題化させた社会福祉公約に成功した例はない」とし 「すでに大衆が幻滅を感じる失敗した公約をまた持ち出すことはできないではないか。 新しい話題が必要にならざるをえない」と説明した。

だから、私たちの人生をどうしようというのか

だから何をどうしようと言うのだろうか。 久々に出てきた福祉問題を歴史の中に押し込めば気が晴れるのか。とんでもない。 ただ、基本所得論争の狭い囲いをあけてみようということだ。 チャムセサン研究所のソン・ミョングァン研究委員は 「今の論争はとても思弁的」だとし 「当初『クリフォード・ダグラス』が作り出した基本所得の根元と脈絡は死蔵されたまま、 財源とインフレ、基本所得金額に対する論争だけに行っている」と指摘した。 実際に基本所得の根は1920年代、「クリフォード・ダグラス』が書いた〈社会信用〉という著書から始まる。 彼の提案は2つだ。 企業の生産総量が常に消費の総量を超過することを埋めるために、保存貨幣を支払おう。 そしてインフレ抑制策として価格を調整するメカニズムを作ろう。 つまり基本所得と予想されるインフレを防ぐために、政府が価格を統制しなければならないということだ。

ソン研究委員は「価格統制がなければ市場を占有する供給者、販売者により価格が上昇する」とし 「販売者が優位にある住居、教育、医療などを始め、広範囲な財貨に価格統制が行われれば、 結局脱市場化が可能になる」と説明した。 税金と金額論争を越え、脱市場化による社会化論争まで引張って行かなければならないという要求だ。 何よりもカギは李在明式の基本所得モデルの真偽を明らかにするのではなく、 この機会に青年、老年、低所得層などをターゲットとする所得保障制度をどう作り出そうとしているのかだ。

ソン研究委員は「税金論争に閉じ込められれば、パイ争奪戦になる。 だが重要なことは、私たちには中央銀行という大きなパイもあるということ」とし 「青年、老人、貧困問題が深刻で重要なら、どんなパイでも持ってこなければならない。 朴槿恵(パク・クネ)が構造調整支援のための量的緩和に言及し、左派が戯画化したこともあるではないか。 むしろ私たちが社会福祉のためにさらに金を印刷しようと逆提案するのも十分に可能だ」と主張した。 暮らしの困窮は、世の中の困窮ではなく、1%の財閥が富を独占しているからだ。 奪ってくるにしても、印刷するにしても、 結局私たちが触るべきことは小さな福祉財政のパイではなく、金が溜め込まれている金庫にならざるをえない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-02-27 08:49:41 / Last modified on 2017-02-27 08:52:16 Copyright: Default

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