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基本所得184兆ウォン is 何でも

[ワーカーズ開講準備号]基本所得姉さん、私たちを救えるのですか?(3)

キム・ハンジュ記者 2017.02.24 13:43

[扉]今回は『基本所得』だ。 半額登録金、基礎老齢年金に続いて新しく発掘された大統領選挙用の福祉問題だ。 万人に平等な基本所得とは。 なぜか、今の窮乏した生活と不平等な構造を一気に解消する万能の鍵のようだ。 だが私たちが暮らしている資本主義社会はそれほど扱い易い相手ではない。 資本主義メカニズムが不平等を内在していることを知らない人はいない。 力が傾いていることからして不公平だが、彼らが素直に金と不平等の権力を差し出そうとするだろうか。 何か別の内心が隠されているようだ。 「チャムセサンXワーカーズ」は気になった。 基本所得が施行される未来の社会では、私たちの人生は平等だろうか。 そして崖っぷちに立つ人々を救い出せるだろうか。 悩んだ末に5回にわたり、企画連載記事を載せることにした。

基本所得の財源184兆ウォンは、社会保障制度に手を入れなければ用意できないのか。 チャムセサンは進歩陣営、自由主義陣営の基本所得の財政モデルを集め、 基本所得が施行されれば従来の社会保障制度がどう変わるのかを予測してみた。 同時に基本所得財源184兆ウォンで社会保障の水準をどれだけ押し上げられるかを分析した。

[出処:チャムセサン資料写真]

社会保障制度がなくなった社会、国家が消えた社会

韓国では進歩陣営の基本所得韓国ネットワークが基本所得運動を主導している。 彼らはホームページで 「基本所得は社会サービス型福祉を代替するものではない」とし 「基本所得運動は、これまで主張してきた無償教育、無償医療、住居公共性、無償保育、老後保障などの普遍的福祉と共にする」と規定した。 また基本所得のために既存の福祉制度で譲歩しなければならないというのは、金持ちの税負担を減らすための考え方だと説明した。

しかし説明とは違っていた。 基本所得韓国ネットワークが代替、受容する基本所得の財政モデルを調べた。 基本所得韓国ネットワークのカン・ナムン理事長(韓神大経済学科教授)が提示した2018年の基本所得財政モデルは、従来の社会保障制度の一部を代替する。 65歳以上、下位70%の老人に支払う基礎年金9.1兆ウォン、 基礎生活保障対象者135万人に支払う生計給付5.4兆ウォンを基本所得の財源に転換する。 2017年3月までに老人に支払われる基準年金額は約20万ウォン、 生活保護1人世帯の月平均生計給付は49万5千ウォンだ。 公務員年金、私学年金、軍人年金はもちろん、国民年金も基本所得の支持者が注目している代替資金だ。

さらに所得税値上げ、基本所得税導入など、普遍増税により一般の庶民もさらに多くの税金を払うことになる。 もちろんこれだけで基本所得の財源を用意するには力不足だ。 したがって土地税、生態税、不動産税、証券譲渡所得税、利子配当所得税などの金持ち増税を原則とする租税改革を断行しなければならない。

この程度の普遍増税、社会保障削減、租税改革で配当できる基本所得の月額は30-40万ウォン程度だ。 直ちに基礎年金を受けている老人、生計給付を受けている生活保護対象者は今よりも現金支援が減る。 進歩陣営が掲げたモデルがこうなのだが、自由主義者の基本所得モデルはまたどうだろうか。

基本所得を支持する保守・自由主義陣営では大胆に社会保障制度をなくす。 政治学者チャールズ・モレイは、米国が貧困減少、保健医療、年金などの福祉制度に使う2兆ドル(224兆円)を統合し、 年間1万3000ドル(145万円)を基本所得として支払おうと話す。 ドイツの企業家ベルナーもまた、年金、失業給付、住宅手当てなどをなくし、 行政費用を削減すればさらに多くの基本所得を支払えると主張する。

韓国の保守陣営もたびたび基本所得に言及する。 昨年、共に民主党の金鍾仁(キム・ジョンイン)前代表は「基本所得」が4次産業の代案であり、内需促進の政策だと主張した。 正しい政党の金世淵(キム・セヨン)議員は 「基本所得は小さな政府を試みる努力と見られる」とし 「福祉制度を統廃合して簡単に基本所得に代替できる」と話した。 さらに自由経済院は「基本所得制の施行はすべての福祉制度の廃止、一本化が前提条件」だと話した。

社会保障制度、何が先に消えるか?

▲基本所得が導入されればどの社会保障制度が先に消えるのだろうか?

社会保障制度は資本主義社会で暮らしが困難になった市民が戦って勝ち取った結果だ。 では現在の韓国の社会保障制度にはどんなものがあって、どのように使われているのだろうか。

2016年の政府財政は386.4兆ウォンだ。 このうち福祉財政は123.3兆ウォンで、31.9%に達する。 GDPに対する公共社会支出は2014年には10.4%でOECD平均の半分水準だ。

2017年の現行の公共社会支出を基準としてもっと詳しく見ると、 2017年の生活保護政府予算は10.3兆ウォンだ。 現金で支払われる生計給付は3.6兆ウォン、 1人世帯が平均49万5千ウォンの生活保護給付を受ける。 これ以外に住居給付、教育給付、医療給付もある。

緊急福祉制度は一時的に生活が苦しくなった場合に国家が迅速に支援する制度だ。 2014年の松坡三母娘自殺事件で特別な関心が集まった制度でもある。 2017年の緊急福祉予算は1013億ウォンだ。

公的年金も基本所得の代替財源の一つだ。 カン・ナムン教授は基本所得財源を早くしっかり用意できる手段として国民年金をあげた。 国民年金は2015年には2157万人ほどが加入しており、405万人が年金を受けている。

国家が失業者を支援する失業給付(2017年予算5.8兆ウォン)、 雇用の維持を支援する雇用維持支援制度(2017年予算2.6兆ウォン)もある。

繰り返すが韓国のGDPに対する公共社会支出はOECD最低水準だ。 だがGDPに対する国家負債は40%で、OECD平均の114%と比べて財政はしっかりしている。 増やすにしても、かなり増やさなければならないと言うことだ。

基本所得予算184兆、勝手に社会保障制度を強化する

▲基本所得韓国ネットワークが受け入れる基本所得財政モデルの1年の予算は184兆ウォン。勝手に184兆ウォンで福祉予算を編成してみた。

カン・ナムン教授の2018年の基本所得財政モデルは1年の予算184兆ウォンで月30万ウォンの基本所得を支払おうということだ。 では基本所得の財源で社会保障制度をどれほど強化できるだろうか? 勝手に184兆ウォンで福祉予算を編成してみた。

真っ先にすべての非正規職を正規職に転換してみよう。 昨年8月の政府の統計によれば、非正規職労働者は664万人だ。 非正規職の平均賃金は149万ウォンで、正規職の平均賃金は236万ウォンだ。 すべての非正規職を正規職賃金の水準に上げるには1年68.4兆ウォン程度が必要だ。

基本所得184兆ウォンでできないことはない。 「親の脛破壊」をなくす無償教育もしてみる。 現在、大都市の高校の授業料は年平均約150万ウォン、 2016年の平均大学授業料は667万ウォンに達する。 共に民主党の金太年(キム・テニョン)議員は、高校義務教育無償化に1兆ウォンかかると話し、 朴用鎮(パク・ヨンジン)議員は大学無償教育の実現に12兆ウォンが必要だと明らかにした。

この金があれば無償医療も難しくない。 現在、健康保険公団は20兆ウォンの黒字を出している。 この黒字を国民に返しても国民負担は大いに低くなるだろう。 それでも低所得層の医療費負担の解決には無償医療が答だ。 共に民主党は現行の健康保険保障率60%を実質的な無償医療に近い90%まで上げるために8.1兆ウォンが必要だと明らかにした。 保健医療団体連合は、保障性の強化と貧困層の無償医療、本人負担金の縮小、現金給付まで含む無償医療モデルに16兆ウォン程度かかると予測した。

保育大混乱も解決できる。 2017年の幼児保育料、家庭養育手当て予算は5.7兆ウォンだ。 満84か月未満の幼児1人当り約150万ウォンの養育手当て、および保育サービスが提供されていている。 これを200万ウォン水準に押し上げるためには1.4兆ウォンの追加財源が必要だ。

口先だけで「青年、青年」と言わず、すべての1人青年世帯に賃貸住宅を供給してみよう。 2017年の20-39歳青年1人世帯は17万6千人だ。 ソウル市は2017年の青年住宅供給に予算1.1兆ウォンを編成した。 この予算で賃貸住宅8万世帯を供給する計画だ。1.2兆ウォンの追加財源さえあれば、 1人青年世帯全体に賃貸住宅を供給できる。

月平均49万5千ウォンを受ける生活保護受給者に月30万ウォン基本所得は特に実効性がない。 現在の基礎生活保障受給者は約127万人で、1人世帯平均生計給付額は49万5千ウォンだ。 これを二倍水準の94万ウォンに上げるために追加財源約4兆ウォンがかかる。

OECD会員国のほとんどは失業扶助制度があるが、韓国では議論もない。 雇用保険未加入の労働者は失業給付の死角地帯に放置されている。 2017年に13万人を越えた長期失業者は言うまでもない。 彼らに対して最低賃金の80%水準の失業不調を提供しても、1.6兆ウォンしかかからない。

基礎年金を受け取る所得分位下位70%老人も同じだ。 彼らは現在約20万ウォンの基礎年金を受け取っている。 これを二倍に上げれば追加財源として約7.8兆ウォン(2016年基礎年金予算)がかかる。

社会への寄与は大きいが、一定の所得がない職業群の支援も必要だ。 特に文化芸術家がそうだ。 2010年の文化芸術関連従事者は43万人だ。 彼らの月平均収入は100万ウォンに満たない。 文化芸術家の50%は専業ではなく兼業をしている。4.1兆ウォンの予算で最低賃金60%水準の文化芸術家手当てを支払える。

これら全てで117.5兆ウォンだ。 勝手に社会保障制度を強化したが、それでも基本所得の財源184兆ウォンのうち67兆ウォンが残る。 チャムセサンの質問結果が見せるように、国民は住居、医療、教育などに多くの負担を感じて暮らしている。 つまり一般庶民が望むものは住居、医療、教育などの社会公共サービスだ。 今の社会保障制度に問題があるから直してくれと言っているわけだ。 しかしこうした一般的な要求や福祉の死角地帯についての考慮をせず、 大統領選挙走者や一部の進歩陣営は社会保障の需要を基本所得で置き換え、 既存の社会保障制度全てを威嚇する。 果たして私たちにとって本当に必要なものは何か、 もう一度じっくり考えてみるべきではないだろうか?

[出処:チャムセサン資料写真]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-02-27 08:48:08 / Last modified on 2017-02-27 08:51:43 Copyright: Default

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