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基本所得、1ラウンドが始まったシリコンバレーの社長と労働者

[ワーカーズ開講準備号]基本所得姉さん、私たちを救えるのですか?(4)

チョン・ウニ記者 2017.02.25 11:57

[扉]今回は『基本所得』だ。 半額登録金、基礎老齢年金に続いて新しく発掘された大統領選挙用の福祉問題だ。 万人に平等な基本所得とは。 なぜか、今の窮乏した生活と不平等な構造を一気に解消する万能の鍵のようだ。 だが私たちが暮らしている資本主義社会はそれほど扱い易い相手ではない。 資本主義メカニズムが不平等を内在していることを知らない人はいない。 力が傾いていることからして不公平だが、彼らが素直に金と不平等の権力を差し出そうとするだろうか。 何か別の内心が隠されているようだ。 「チャムセサンXワーカーズ」は気になった。 基本所得が施行される未来の社会では、私たちの人生は平等だろうか。 そして崖っぷちに立つ人々を救い出せるだろうか。 悩んだ末に5回にわたり、企画連載記事を載せることにした。

欧米でも基本所得をめぐる論争が激しい。 そのうち眼につくのは、シリコンバレーの社長たちと労働組合の立場だ。 見通し圏内に入った基本所得をめぐり、社長と労働者の額には玉の汗が浮かぶ。

[出処:www.unevenearth.org]

シリコンバレー、「21世紀の社会的ワクチン」

周知のように、シリコンバレーは普遍的基本所得の情熱的な支持者の一つだ。 だから彼らは深刻な失業問題に苦しむ青年たちには先駆者のように見られたりもする。 FaceBookとヒューレットパッカードの役員で、ベンチャー投資家であるマーク・アンドリーセン、ウェブ・グルのティム・オライリーなどの社長は、基本所得が 「21世紀の社会的ワクチン」とし、続々と支持を明らかにしている。 シリコンバレーで一番有名なスタートアップ・インキュベーターのワイ・コンビネイター(Y Combinator)は昨年5月、 米国のカリフォルニア州オークランドで暮らす100世帯に対し、 毎月1000-2000ドル(11-22万円)を支払う独自の基本所得プロジェクトを実施するとも明らかにした。 テスラモータスの創業者で代表のイーロン・マスクも基本所得は必須だと主張した。 米国だけでなく、ドイツテレコムの代表も基本所得を熱烈に支持している。

事実、伝統的な企業は基本所得に対し躊躇しているようだ。 だがシリコンバレーの社長が唯一素早く動き出した理由は何だろうか? 最近のガーディアンによれば、彼らは基本所得が破壊的な技術を補助し、社会を安定させられると考える。 ワイ・コンビネイター研究責任者のエリザベス・ロデスは 「技術によってますます多くの人々が雇用から所得を得られなくなるだろう」とし 「従来の社会安全網の代案を探求するために、オークランド基本所得プロジェクトを始めた」と言う。 もうひとつの理由は、人的資本に対する投資だ。 基本所得が「危険を甘受する人々」を支援し、4次革命を遂行する人々を育てるというわけだ。 最後に、彼らが攻撃する従来の社会福祉モデルを構造調整するためにもうってつけなので、支持する理由は充分だろう。

だから彼らは4次革命による雇用の流失を前提にして、そのために社会安定網であり、人的投資としての基本所得を支持するというわけだ。 結局、シリコンバレーの社長たちの内心は、彼らが技術を開発して金を稼ぐという点で、 自分たちが主役の4次革命のために基本所得の導入にさらに情熱である。 労働搾取を高度化し、雇用をなくす4次革命のための社会安定網を作ろう! この程度なら、労働者にとっては深刻な警告音になるだろう。

フィンランド・スイス・ドイツの労組、「ダメと言ったらダメ」

そうでなくても西欧では、 基本所得をめぐる労働組合の憂慮が高まっている。

まずスイスの主な労働組合は、長い間基本所得に反対の立場を明らかにしてきた。 昨年6月5日、基本所得導入に関する住民投票を前にして、 スイス最大のスイス労総(SGB)代表団は組合員に反対することを薦めた。 スイス労総が基本所得に反対する理由は 「良い意図だが、誤った試み」であり、「無条件性は残念ながら虚像」だという。

SGBのサイトに掲示されたダニエル・ランパルト経済部長のコラムによれば、 基本所得が社会福祉を代替すれば、福祉の恩恵がさらに劣悪にならざるをえないと警告する。 スイスの社会福祉モデルは、年齢、疾病、事故、失業などを体験する当事者への連帯的支援を基礎として運営されているが、 もし社会福祉が一般の個人に対する無条件の基本所得になれば、 それらの危険から当事者個人を保護することができないということだ。 受恵者の問題も海外居住や国内移住者などのために現実性が低いと見た。 そればかりか、いつも政策は政治的な関係を考慮せざるを得ないが、 現在としては社会福祉だけが攻撃されていると指摘した。 結局、スイスはご存知のように賛成23%、反対76.9%でこの住民投票を否決した。

基本所得パイロットプロジェクトが実施されてから約二か月になるフィンランドでも、 最大のナショナルセンターであるフィンランド労働組合中央組織(SAK)が 「基本所得は無用なプロジェクト」とし、 「作動可能でも効果的でもない」という立場を明らかにした。 フィンランド労働組合中央組織(SAK)のイルッカ・カウコランタ経済部長は2月10日、ブルームバーグに 「基本所得プロジェクトは誤った方向の社会政策」とし 「高い水準の雇用なしで、包括的な社会保障のための財源作りは可能ではなく、 むしろ働く動機を下げ、労働力を弱める」と指摘した。

ドイツでもドイツ労働総同盟(DGB)などの主要労働界がかなり以前から反対の意思を明らかにしてきた。 小規模な労組も基本所得に反対している。 ドイツ金属労組IGメタルは1月にもドイツの日刊紙「ベルト」に対し、 基本所得が「社会的でも、経済的でも、合理的でもない」と明らかにし、 ドイツサービス部門労働組合連盟(Ver.di)のフランク・ブシルスケ委員長は 「財政の充当が可能だろうか。低い水準の基本所得はすでに基本所得ではない」と指摘した。 ドイツ経済調査研究所(DIW)の2014年の研究によれば、ドイツの労働組合が基本所得に反対する主な理由は、 まず基本所得が労働組合の交渉力を失なわせる恐れがあり、 次に雇用保障を弱めるためのさらに柔軟な労働市場を作る道具として使われると見る。 最後に労働組合は、基本所得が促進されると労働中心性が弱まると憂慮する。 労働組合とマルクス主義分派の反対により、 ドイツ基本所得ネットワークの報道担当者として活動し、共同代表になったカトヤ・キッピングの左翼党も立場を定められずにいる。

だが英国の労働組合の雰囲気は全く違う。 英国労総(TUC)、一般労組(GMB)、ユナイト(UNITE)は昨年9月、次々と基本所得を支持する方針を定めた。 労組だけでなく、左派の議題にも浮上している。 昨年9月、英国労働党のジェレミー・コービン代表が基本所得制度を検討するという立場を明らかにしたのに続き、 労働党シャドーキャビネットのジョン・マクドネル財務長官は今月の初めに基本所得案のためのワーキンググループを作ると表明した。 英国の各労働組合の反応は異なるが、オブザーバーのソニーソーダ首席論説委員が19日にガーディアンに記録したように、 英国の労組はさらに大きな団体交渉権を持つフィンランド労組より失うものが少ないからかもしれない。 労働党内でも意見が入り乱れている。 労働党代表選挙の時、ジェレミー・コービンを推薦した36人の議員の1人だったジョン・クルーダース議員などは、 基本所得のために労働条件がさらに悪化すると警告している。

「反資本主義の論拠が必要だ」

結局、基本所得がバラ色の青写真とは違って労働条件と社会福祉を後退させ、 労働者への「トロイの木馬」になるという憂慮と議論は続きそうだ。 では、こうした議論を解決する方法はないのだろうか?

一方では反資本主義に立脚した原則をたてるべきという主張がある。 ニューヨークで活動するジェシー・A・マイヤーソンは、米国の社会主義ジャーナル「ジャコバン」に去る8月 「基本所得は政治スペクトラムによってその立場が変わらざるを得ない違うようになるほかはなく、 社会主義者はこれに対して反資本主義の論拠を提示しなければならない」と提案した。 彼はこの原則として、 △労働市場の暴悪性からの解放、 △社会福祉プログラムとしての基本所得、 △公共部門の雇用拡大による新しい社会保障制度の構築といった代案を提示した。

基本所得プロジェクトを控えているカナダで長い間貧民運動をしてきたある活動家は、 基本所得運動ではなく既存の社会福祉闘争を強化することでのみ労働者民衆の権利を実現できると主張する。 ジョン・クラーク活動家はテレスールに17日、 「社会福祉を攻撃しない基本所得モデルを紙に描くことは可能だろうが、 現行の政治経済的な議題と力の均衡により考慮しなければならない」とし 「結局、ダボスの1%の好みを望むよりもはるかに良い接近は、 過去の成果を防御して拡大し、そして接近可能な公共サービスのために闘争すること」だと明らかにした。

果たしてわれわれは、 労働搾取を高度化するシリコンバレーの社長たちのスローガンの中で、 そして韓国の政治環境でどんな選択をするべきなのだろうか?

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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