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「8・18合意」の種、判決が不信と対立の芽に

[現代車非正規職金属労組座り込み] (4)8・18合意の議論

チョン・ジェウン記者 2015.03.09 10:53

[現代車非正規職金属労組座り込み]目次

(1) 企画連載を始めるにあたり

(2) 蔚山非正規職支会長インタビュー

(3) 現代車支部長インタビュー

(4) 8・18合意の議論

(5) 委員長談話文の議論

(6) 企画連載を終えるにあたり

現代車不法派遣問題は、昨年8月18日の労使合意で突破口を見つけたように見えた。 だが1か月後に出された裁判所の「不法派遣」の判決で新しい局面を迎えた。 金属労組代議員大会で合意案は廃棄された。 その後、金属労組委員長の談話文での「合意尊重」という表現が抗議と反発を呼び、 金属労組委員長室の座り込みに至った。 異例の傘下組織の内部問題で民主労総が迅速に声明書まで出し、議論が広がった。

現代車不法派遣8・18合意の過程を調べる

2014年8月18日、現代車労使は「社内下請労働者4000人を新規採用方式で正規職に転換」することに合意した。 だがこの交渉には、蔚山非正規職支会が参加しなかった。 また、労組の規約による交渉権を持つ金属労組も参加しなかった。

交渉に参加した全州・牙山支会が組合員総会で各々71.6%、57.1%の賛成で合意案を通過させたとはいえ、 「不法派遣について一言の謝罪もなく、勤労者地位確認訴訟の放棄まで労働者に要求した使用者側は8・18合意により、事実上『不法派遣の免罪符』を受けた」という批判と、 金属労組が参加せずに行われた合意に対する承認の議論も静めることはできなかった。

▲金属労組現代車牙山社内下請支会は2014年8月19日に総会を開いて『社内下請関連合意書』暫定合意について賛否投票を行った。[出処:資料写真]

結末の対立、判決で増幅

現代車労使特別交渉が中断と再開を繰り返しつつ、 困難の中で進められている間、 労組も構成員の立場の違いで葛藤を経たようだ。

現代車全州・牙山・蔚山非正規職の3支会は8・18合意前の7月19日に3支会統合代議員大会で 「支会別交渉進行についての状況判断が違う部分を互いに認め、各支会の判断を尊重」することに決める。 「すべての組合員の全員正規職化転換」の要求で「共同交渉と共同闘争」の原則を放棄する決定だった。 換言すれば、「交渉要求と共同闘争」について相当な意見の相違があり、 これを「判断を尊重」するという修辞で縫合した。

だがこの縫合も不法派遣を認めた裁判所の判決が9月18日と19日に相次いで出されたことで壊れる。 裁判所判決は8・18合意に対する「ゴミ合意」の議論を呼び、 交渉に参加した牙山支会執行部は総辞職する。 その後、全州と牙山支会は「これ以上、全州・牙山組合員たちをゴミと冒涜しないで下さい」という題名の共同声明を12月に出した。

金属労組は当時「非正規職3支会の単一の立場が提出されない場合、交渉に参加できない」という立場だった。 労組は7月31日の金属労組と3支会との懇談会で「3支会の統一的対応を要求」し、 「交渉権および締結権が労組にあることを確認した」とする。 しかし金属労組はこの問題について主導的な交渉進行や責任ではなく、 蔚山支会と全州・牙山支会中間で調整する役割以上はできないようだ。

不法派遣交渉の過程で3支会立場の違いが分かり 「交渉権・締結権は労組にある」と話すが、 「該当主導者の意見も尊重するほかはない」という二重的な態度を見せた。

現代車の攻撃だけでなく正規職労組との対立を呼んだ要求案の変化

もうひとつの対立の要因は、要求案の変化だ。 「すべての社内下請の正規職転換」から「直接生産下請けの正規職転換」へ、 また「組合員を排除せず優先正規職転換」へと要求が変わった。

蔚山支会のキム・ソンウク支会長はこれに関して 「闘争の過程が厳しかったので組合員を捉えるためのやむを得ない選択」だったとし 「今考えれば誤った判断だった。 また、すべての社内下請の正規職化を要求している」と明らかにした。 現代車非正規職闘争共同対策委員会の活動家、イ・ヨンドク氏は、 昨年10月24日に開かれた公開討論会で 「要求の後退が続き、組合員が正規職になればいいという考えが大勢になった」と評した。

こうした要求の変化は、現代車使用者側の逆攻勢格も呼んだ。 特別交渉中の7月7日と29日、会社は 「支会組合員だけが労働者? 大多数の非組合員の4000人はどうなってもいいということですか?」とし 「非組合員には採用の機会も与えないということ」と攻撃した。

金属労組現代車支部もこの問題について意見を別にしたようだ。 メディア忠清とのインタビューでイ・ギョンフン現代車支部長は 「(特別交渉の過程で)蔚山支会組合員を優先採用してくれという注文があったが、われわれは『だめだ』と言った」とし 「なぜなら支会の実際の組織率は非正規労働者全体の数と較べれば少ないからだ」と明らかにした。

立場の差はどこから始まったか

こうした立場の差は、社内下請と不法派遣を見る問題意識、闘争の過程、現実判断、民主労組運動の問題までさまざまな要因があるだろうが、 裁判所の判決が予測できないことが圧力として作用したと見られる。 少なくとも、特別交渉に参加した主導者だけには。

キム・ソンウク蔚山支会長は「(9・18判決の前に) 3支会は各々工程が異なり、 全州支会は中央労働委員会で判決が分れたように、裁判所で一部敗訴しかねないという現実的な判断と、責任に対する負担があった」とし 「しかし蔚山支会は労働側交渉団会議で『1審の判決が出れば(労使合意は)すべて無効だ。 内容と要求そのものが変わるほかはない』と何度も主張した」と話した。

金属労組中央執行委員会も「当時の情勢を見れば、9月18日に裁判所で全員正規職化判決が出るという予測は難しかった」とし、 「したがって9・18判決の前に成果をあげる合意をすることで、何とか突破口が開けるという該当主導者の意見も尊重しないわけにはいかなかった」と 会議資料で内心を明らかにした。

「占拠座り込み、鉄塔座り込み、幟闘争、現場闘争などしてあらゆる闘争をしたが、 組合員たちは苦しみ疲れていく状況だった」というキム・ソンウク支会長の発言のように、 労組の組織力の弱化と損害賠償請求などの労組弾圧は、 社内下請闘争の主体にとって相当な圧力だったことは明らかのようだ。

8・18合意当日「蔚山支会、座り込みで抵抗?」
事実関係はどうだったのか

8・18合意の当日、すでに特別交渉に参加していない蔚山支会は合意の消息を聞き、 労働側交渉団会議が行なわれている現代車蔚山支部事務室で座り込みをする。

蔚山支会は「蔚山支会を適用しないという文言を入れることにして座り込みを解除した」と明らかにした。 だが合意書にはこの文句はない。 むしろ「当事者以外の者の訴え取下げ」の項目で 「訴訟の取り下げを前提として蔚山支会の組合員が現代車特別雇用に応募できるようにした」という評価だ。

現代車支部のイ・ギョンフン支部長はこれに関連して、 「蔚山支会の組織掌握力の問題」と述べたが、 蔚山支会の話の通りなら「現代車支部が約束を破った」という批判を免じにくい。 特に使用者側の要求のとおり、正規職になろうとする原告の訴訟取下げ申請が続くと蔚山支会の今後の闘争と訴訟の結果にも影響を及ぼしかねないからだ。

また、労使の暫定合意案が合意当日まで公開されなかった問題もある。 蔚山支会は8・18合意の当日、座り込みで抵抗する姿を見せたが、 「8・18合意を事実上承認したのではないのか」という見解もある。 金属労組もまたこの過程で「座り込みを継続しなければならない」という立場だったという証言があるが、 金属労組は公式の立場を発表しなかった。 金属労組のチョン・ギュソク委員長はメディア忠清とのインタビューで 「(座り込みを続けなければならないという金属労組の立場は)なかった」とし 「主体の3支会が共同で交渉と合意をして同意すれば金属労組は合意できるが、 そうではないので労組は合意できないというのが金属労組の立場」だったと明らかにした。

▲2014年8月18日現代車労使は『社内下請労働者4000人を新規採用方式で正規職転換』に合意した。だがこの交渉には蔚山非正規職支会と金属労組は参加しなかった。

裁判所の判決で内部の対立は腐り、労組は停滞

一方、金属労組が内部葛藤を続ける間、 ソウル中央地法は9月18日と19日に連日現代車社内下請すべての工程が不法派遣だと判決する。 二日間で1179人の労働者すべてが現代車正規職の地位を認められた。 こうした裁判所の判決は直ちに8・18合意評価の議論の燃料となり火がついた。

蔚山が抜けた半分の労使合意と、裁判所の判決という優位を得た状況で、 金属労組は「現代車は10余年にわたる非正規職支会弾圧と小細工を止め、 非正規職撤廃、正規職化という要求に直ちに応じろ」と声明を発表する。 蔚山支会や8・18合意に同意しない牙山支会の一部などで8・18合意についての議論が高まったが、 対立以上の実質的な闘争計画を提出して実践を組織したとは見られない。 こうなった理由の中に8・18合意がむしろ社内下請闘争あるいは現場闘争の障害になったという評価もある。 「8・18合意廃棄」、「8・18合意に対する明確な態度」など、8・18合意に対する鮮明性が労組内部で大きくなるばかりだった。

裁判所の判決の後、現代車使用者側は9月24日に「裁判所の最終判断まで行く」という立場を出して 「最終確定判決時に訴訟参加や組合員かどうかとは無関係に、 全ての人員に対して差別なく結果を準用」するといった。 だが労使合意の履行を主張して10月頃には蔚山支会幹部の出入りを止め、 蔚山工場を含む新規採用を強行する。 蔚山支会でさえ2010年の占拠座り込みで解雇された45人のうち29人が新規採用に応募し、16人だけが残る。

結局「8・18合意」という対立の種は、11月24日の金属労組38次定期代議員大会で8・18合意の廃棄が核心の4つの修正同意案通過で決着するかに見えた。 だがまた議論は高まり、不法派遣闘争をめぐる議論と対立、不信はジェットコースターのようになる。

現代車不法派遣8・18合意から金属労組臨時代議員大会まで

  • 2014年4月10日 現代車不法派遣特別交渉再開
  • 2014年7月2日 蔚山非正規職支会21次実務交渉中交渉決裂宣言
  • 2014年7月19日 全州・牙山・蔚山非正規職3支会統合代議員大会、『支会別の判断尊重』決定
  • 2014年7月31日 金属労組と3支会懇談会、労組に交渉権・締結権があることを確認
  • 2014年8月18日 金属労組と蔚山非正規職支会を除き労使8.18暫定合意
  • 2014年8月19日 全州・牙山非正規職支会総会、8・18合意を可決
  • 2014年9月18日、19日 ソウル中央地法現代車不法派遣判決
  • 2014年11月24日 金属労組38次定期代議員大会『8・18合意廃棄』修正同意案4本通過
  • 2014年12月2日 金属労組43次中央執行委、定期代議員大会評価『次期再議論』
  • 2014年12月16日 金属労組44次中央執行委、定期代議員大会評価『次期再議論』
  • 2015年1月5日 金属労組45次中央執行委で定期大会評価原案を承認。 ともに「組織内に混乱を引き起こしたことに対して委員長立場の文を金属労組新聞に掲載し、 次期臨時代議員大会に『定期代議員大会評価書』を報告して委員長が謝罪する」と決定
  • 2015年1月13日 金属労働者新聞257号委員長談話文「組合員同志に差し上げる文」発表
  • 2015年1月13日 蔚山非正規職支会と牙山社内下請支会の一部などの抗議籠城団が金属労組1階で座り込みに突入、(1)チョン・ギュソク委員長謝罪(2)中央執行委決定廃棄(3)金属労働者新聞の廃棄を要求
  • 2015年1月20日 金属労組47次中央執行委、「定期代議員大会の決定は翻意ではない」と確認
  • 2015年1月20日 抗議籠城団、金属労組委員長室に座り込み場所変更
  • 2015年1月24日 民主労総委員長名の「非正規職差別撤廃のための闘争は正当だ」声明発表
  • 2015年1月24日 金属労組2015年闘争宣言大会集会、暴力事態発生
  • 2015年2月2日 現代車不法派遣特別交渉推進方向議論、金属労組-現代車支部-現代車非正規職支会立場の差確認
  • 2015年2月4日 49次中央執行委、『定期代議員大会決定の翻意ではないことを再度確認』し、抗議籠城団に『備品の原状回復と座込場移動』を勧告
  • 2015年2月10日 金属労働者259号新聞、金属労組役員名の『定期大会決定翻意ではない』という内容の『組合員同志たちに差し上げる文』発表
  • 2015年2月11日、13日 金属労組-蔚山非正規職支会現代車使用者側に直接交渉要請
  • 2015年2月24日 金属労組110次中央委員会、中央執行委の定期大会評価に対する意見の差その他の案件で議論しようとしたが成立定数不足で流会
  • 2015年2月26日 大法院現代車牙山工場社内下請労働者に不法派遣判決
  • 2015年2月27日 抗議籠城団46日ぶりに金属労組座り込み終了
  • 2015年3月3日 金属労組39次臨時代議員大会、中央執行委員定期大会評価4本の削除要求を現場発議案で提出。その他の案件で案件成立の討論中に成立定数不足で流会
付記
チョン・ジェウン記者はメディア忠清の記者です。この記事はメディア忠清にも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-03-15 23:05:46 / Last modified on 2015-03-15 23:08:10 Copyright: Default

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