本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:[イシュー(1)]公共工事死亡万人率、建設業平均より高く
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 201909006
Status: published
View


公共が資本に越した労働者の死…国家は幽霊?

[ワーカーズ・イシュー(1)]公共工事死亡万人率、建設業平均より高く

キム・ハンジュ記者 2019.08.27 14:58

イシュー(1)[政府の依頼、資本の殺人]順序
1. 権限の分離、3人の死、責任の消滅
2. 公共が資本に渡した労働者の死…国家は幽霊?
3. 繰り返される「公共工事」の死亡事故…責任は誰に?

公共事業が資本に渡ったところで労働者の死が繰り返されている。 7月31日、ソウル市が発注した木洞の雨水ポンプ場で労働者3人が死亡したことに続き、 8月18日に首都圏広域急行鉄道の工事現場でも労働者1人が死亡した。 昨年のキム・ヨンギュン死亡事件以後、 「死の外注化」を防ぐ戦いが全国に広がったが、 労働者の死は「発注事業」というもうひとつの姿で続いている。 ワーカーズは政府が注文して介入した工事や事業で起きた労働者の死亡事故を 「発注処責任」の問題として中心にまた調べることにした。

国防部と韓進重工業

故キム・ジョンギル氏は昨年8月12日、空軍第17飛行戦闘団の 清州空港軍専用滑走路改善工事で死亡した。 国防部が発注して韓進重工業が受注した事業だった。 8月1日からこの日まで、最高気温は34度から38度だった。 1994年以後最悪の猛暑として記録された時だ。 この日の午前6時40分頃、キム氏はひとりで作業を始めた。 キム氏が死亡したところは主要作業場から約3km離れた所だった。 ここで安全要員もなく、一人で作業したため、安全事故に即座に対応できなかった。 さらに猛暑の中での掘削、エアコンは故障している状態だったが会社は作業を強行した。

現場の所長が午前9時53分に倒れているキム氏を発見した。 キム氏は7月19日から死亡時点まで25日間、1日も休めなかった。 当時の建設機械作業日誌によれば、1日9時間労働を超える記録が並んでいる。 キム氏の週平均労働時間は63時間近い。 過労死、温熱疾患が十分に予想されていた情況なのに、 警察は事故を「転落死」と見た。 当時、建設労組は事故を「猛暑の中での過労による転落死」と規定した。 労組は国防部を糾弾するテント座り込みを国防部の前で行った。

キム氏の同僚A氏は当時の国防部の態度は無責任だったと指摘する。 政府が発注して大企業が受注した工事だったが、国防部は 「法的に何もできない」、「私たちが責任を負うべき部分はない」と言った。 A氏の同僚の建設機械労働者が作業している現場は70%が公共工事だ。 ほとんどの公共工事が最低入札制で進められる。 原価削減を目的として進められる事業では、 安全要員の配置などの労働者の安全は不十分にならざるをえない構造だ。 A氏は「がっしりした同僚があのように死んだ。 私は当時、現場には安全管理体系がなく、倒れてから1時間以上放置したのは 明白な殺人行為だと主張した。 最低入札制で行われる公共工事では、 個人事業者(特殊雇用労働者)の機械労働者は最末端だ。 今も悪循環が繰り返されている」と指摘した。

実際に国防部の該当事業入札案内書では、 「安全管理業務の責任限界」の条項に 「安全管理不十分による安全事故についてのすべての責任は契約相手にあり、 損害の発生については契約相手の負担で処理し、 安全施工計画書の審議および安全点検を理由として その責任が消滅したり転嫁されない」と明記されている。 発注者が契約者に安全管理指針は出すが、 責任は事実上、負えないという意だ。

慶北道とGS建設

3月18日、慶北環境エネルギー総合タウンの工事現場でデッキプレートが崩壊し、 下請労働者3人が転落死した。 1月25日に韓国環境公団が該当作業場を点検してから51日後の大型事故であった。 労働者3人は高さ24mでコンクリート打ち作業をしていた。 彼らが立っていたデッキプレートは木材で支えられていた。 木材が荷重に負けて鉄筋コンクリートの枠から離れて崩れたのだ。 労働者たちは安全帽はかぶっていたが、墜落防止ワイヤーは連結していなかった。 墜落防止網もなかった。 建設現場は10mごとに墜落防止網を設置することになっている。 明らかな人災だった。

この工事は慶北道が11の市・郡から出るゴミを処理して エネルギー資源にするために、2013年に始めた事業だった。 総事業費は2097億ウォンにのぼる大規模工事であった。 GS建設などで構成するコンソーシアムが慶北道にこの事業を施行すると提案した。 そして慶北道は民間投資事業(BTL)提案書を受け付けて、 公共投資管理センターに検討を依頼し、 民間投資審議委員会の承認を受けて事業を公告した。 コンソーシアムは慶北グリーンエネルギーセンターという特殊目的法人を設立し、 BTL事業を進めた。

公共領域だがBTL事業という名分の下で、慶北道は事故の責任を免がれた。 大惨事だったため、慶北道、安東市、雇用労働部安東支庁、 GS建設などが事故対策本部を設置はした。 だが活動結果は出てこなかった。 慶北道庁の関係者は「調査結果報告書は特にない。 われわれは工事の設計図面も持っていない。 事業を道が承認したわけでもなく、主務官庁として事業公告を出しただけ」と言う。 作業安全マニュアルがあるかとという質問には 「労働者安全規則遵守やマニュアルは知らない」と話した。

防衛事業庁とハンファ

2月14日にハンファ(株)大田工場で爆発事故が起き、労働者3人が死亡、2人が負傷した。 昨年5月に労働者5人の命を奪った爆発事故以後、 すぐ隣の工程で、もうひとつの事故が起きたわけだ。 ハンファに仕事を出した政府機関は防衛事業庁だ。 ハンファは防衛事業庁との事業契約により、以前から武器製造事業を受注してきた。 2010年以後、ハンファと防衛事業庁が締結した契約金額の規模は72.3兆ウォン、 契約件数は1323件にのぼる。 現在もハンファは防衛産業業者で独占的な地位を享受している。 事故当時、遺族は「国家が関与した業者なので安全を信じた自分が悔しい」とし、 防衛事業庁を相手に責任を問うこともした。

事故犠牲者のキム某氏の母方のおじはワーカーズとの通話で 「ハンファは防衛事業庁のオーダー、仕事を受けて事業をしている。 それでは防産庁がハンファを管理・監督する問題でないのか」とし 「昨年の事故の後、大田工場の労働者は作業危険要因発掘報告書を何回も作成した。 1人当り、多ければ10数件を上げた。 だがハンファの玉経錫(オク・ギョンソク)(火薬防衛産業部門)社長は、 これを見ることができなかったと私たちに言った。 それなら防産庁がこれを確認して措置するべきだった。 注文を出した防産庁が管理・監督をしないから事故が繰り返された。 むしろ国家発注事業の方が安全をおろそかにしたようだ」と明らかにした。

防衛事業庁は「ワーカーズ」の情報公開請求に最近5年間に ハンファと締結した契約内容のうち、労働者の安全に関係する条項はないと答えた。

発注して災害統計も出さない政府

昨年、最も多くの死者を出した発注庁は、韓国電力公社(12人)だ。 韓国土地住宅公社(9人)、韓国道路公社(8人)、韓国農漁村公社(5人)、 ソウル特別市(4人)がそれに続いた。 この中で、ワーカーズはソウル市の発注工事で起きた死亡災害統計資料があるのかを ソウル地方雇用労働庁側に8月7日に情報公開請求したが、 労働庁の関係者は「いちいち事例を確認しなければならない」、 「何も整理されていない」と答えてきた。 公共機関が発注した工事で死亡した労働者が何人なのかを確認もしていないということだ。

公共機関の災害者数は2015年に1557人(71人死亡)、 2016年に1508人(53人死亡)、 2017年に1360人(59人死亡)、 2018年の1月〜9月に1165人(37人死亡)だった。 全体の災害者は減少する傾向だが、死亡者数だけは減らなかった。 また事故死亡者の85.2%は発注工事で発生した。 労働健康連帯のイ・サンユン代表は 「公共工事の特徴は編集された機関が多いという点」とし 「そのために工事、事業の構造はさらに複雑だ。 権限と役割が分れているので責任を怠る。 その延長線上でコントロールタワーがないという問題も発生する。 発注者には工事の責任もあるが、労働安全のために管制の責任もさらに重く話すべき時」と話した。[ワーカーズ58号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-09-01 14:22:34 / Last modified on 2019-09-14 04:28:30 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について