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ブラジル撤去民の涙…「私たちにとってワールドカップは退去」

[ワールドカップに正義のシュートを]ワールドカップ誘致決定後、最低25万人が強制退去
都市開発、スポーツではなく不動産資本に寄与

チョン・ウニ記者 2014.06.11 18:46

ブラジルのサンパウロ東部イタケラにある撤去民4千世帯の大テント村。 人々はここを「民衆のワールドカップ」と呼ぶ。

1月7日の早朝、ブラジルのリオデジャネイロ市警察は、メトロマンゲイラのファヴェーラ(貧民村)に到着した。 ワールドカップ閉幕競技が開かれるマカラナ競技場と半マイルほど離れたこの村で、 彼らがすることは強制退去であった。 40戸の家庭が、一部は家財道具も取り出せないまま数年、数十年間暮らしていた家からあわてて抜け出さなければならなかった。 わけも分からないまま追い出され、怒った住民たちが通りに追い出されると警察はペパースプレーと催涙弾を発射した。 悪い空気の中で涙を拭う間もなく、次々と爆発するゴム弾の爆発音。 撤去民が死んだといううわさが事実だったということを今になって実感する。 今年だけで最低45人が撤去の過程で死亡した。多くは子供だった。

▲強制退去に対抗して、ある先住民の母が子供を持って抗議している。[出処:http://www.tribunal-evictions.org/]

しかし追い出された人々が簡単に定着できる所はどこにもなかった。 リオのファヴェーラから追い出された数千人は、見捨てられた店舗地域に移り、小屋を作って世帯を作ると、また特殊部隊が集まって子供と老人と一緒に暮らす多くの家庭と土地を無茶苦茶にして追いやった。 警察当局はその上、低空飛行機で爆弾を投下し、火炎放射器で小屋に火を付け、 大人も子どもも無関係に化学物質を噴射した。 人々はまた市庁の前にキャンプを作ったが、市はまた特殊部隊を送った。

特殊部隊が近づくと彼らは警告や交渉もせずに住民を追い出し、機械を動員して家屋を撤去した。 ある女性は撤去を防ぐために家の塀に鎖をかけて抵抗したが、 用役は躊躇せず塀を押し倒した。 子供たちは恐怖に泣くこともできず、人々は意識を失って倒れた。

貧民村に爆弾、火炎放射器で撤去

そうして追い出された人々が「民衆のワールドカップ」と呼ばれるテント村に集まったのだ。 撤去された村から抜け出したが、ワールドカップによって天上知らずに高騰した賃貸料で行き場がない人々が、高速道路そばの荒れ地や、見捨てられた空地や建物の中に消えた。 その代わりに撤去された村には競技場の駐車場や新しい道路ができた。

そればかりか学校、先住民文化のための博物館、スポーツセンターといった公共機関は私有化され、 地域のための社会事業も中断された。 露天商の販売行為も禁じられた。 先住民社会はラテンアメリカで最も古い先住民博物館の未来がこれからどう進められるかについて、絶望している。

「いったい彼らは私達にどうしろというのでしょうか? 彼らは私たちに何の情報も与えませんでした。 単に発表されただけです」。 「私にとってワールドカップは2年前に始まりました。 国は国民を放棄して、ただFIFA(国際サッカー連盟)のことしか考えません」。 まったく理解できない政府に対する住民の問いは続いた。

▲2012年サンパウロ貧民街で人々が強制退去に備えている。

強制退去はブラジルがワールドカップの開催地に選ばれた2007年の翌年から始まった。 ワールドカップに反対するブラジル社会団体「ワールドカップオリンピック人民委員会」によれば、 ワールドカップが開かれるブラジルの12の都市で最低25万人、 サンパウロだけで約9万人、リオデジャネイロでは約10万人が強制退去された。 撤去民は市の法律により、市場金利以下の住居補償金しか受け取れないまま、遠い郊外に強制移住された。 運が良ければ実際の価格の50%の補償が受けられたが、 ほとんどは適正価格の20-30%を受けるのも難しかった。

ワールドカップ誘致が決定すると、各都市は開発事業に着手し始めた。 都市開発の名目は、競技場を建設して外国人訪問客を呼ぶために道路と大衆交通、 そして空港を改善するということだ。 しかし当初のメガトン級のイベントの核心目標は、スポーツとはかけはなれていた。 一例として、リオデジャネイロ市委員会は不動産投機を容易にできるようにする一連の法令を通過させた。 エドゥアルド・パエス市長は2010年4月、市当局が決めたすべての地域で強制退去の勅令を発表する。 この勅令は本来、自然災害で危険な場合に限り、市に強制退去の権限を付与するものだが、 不動産産業の利害がかかった地域を清掃する政治的な道具に悪用された。

リオデジャネイロ地域の社会活動家、カーラ・ヒルトは 「このイベントのモデルは都市再建設を通じた不動産投機にある」と話す。 現在、多くの都市でいわゆる「再生」が起きているが、公式の修辞と違い、こうした建設事業は住民の人生を改善せず、都市全体をエリート式に造成し、利益をあげる不動産資本の利害に寄与するだけだ。 そして不動産資本は政界に選挙運動資金を支援する大きなグループに属している。

都市開発、スポーツではなく不動産資本に寄与

不動産開発で少数の資本だけに利益が行くだけだが、予算のほとんどは国庫から出た。 体育部長官は、納税者の金は競技場建設には使われないと明らかにしていたが効果はなかった。 競技場が建設された後、政府は私企業に運営を任せる予定だ。 企業が納税者の費用で利益を上げることになるのだ。 しかし同じ主張が2010年、南ア共和国のワールドカップで使われたが偽りだったことが判明した。

ハイチ出身の対外政策研究者、ナタリー・パブテストによれば、 南ア共和国は競技場の建設に60億ドルを支出し、FIFAと南ア共和国体育連盟は国内総生産を約3%上げると公約していた。 しかし競技の直後、南ア共和国の財政長官は0.4%成長しただけだと表明しなければならなかった。 10の競技場のうち9つは、地域で使うには大きすぎ、空間と金だけを食う「白い象」になった。 ブラジル政府の監査院は、12のうち少なくとも4つの競技場が同様だと警告した。

これまでブラジルのすべての大都市で「ワールドカップはない」というモットーの下で展開されたデモは、こうした事情がある。 「家なき労働者運動(MTST)」は6月9日、サンパウロ市の東部に2千軒の庶民住宅を建設するなどの連邦政府の譲歩案により、ワールドカップの期間にデモを中断すると宣言した。 しかしワールドカップが終わっても続く強制退去させられた数十万人の苦痛が終わらない限り、対立は続く展望だ。


〈ブラジルの強制退去を記録した動画:2014年ワールドカップ、誰が勝つのか?〉

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-06-12 02:07:59 / Last modified on 2014-06-12 02:08:22 Copyright: Default

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