本文の先頭へ
LNJ Logo (2)白い服で隠された統制の陰、看護師
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 02
Status: published
View


靴下に穴があくほど病院を飛び回るのに笑えというのか?

[監視統制、崖っぷちの感情労働者](2)白い服で隠された統制の陰、看護師

チョン・ジェウン メディア忠清記者 2013.11.16 22:33

看護師の靴下はせいぜい一週間しかもたない。高価なブランドの「良い靴下」をプレゼントされれば、目の保養をしてお母さんに上げる。3交代と長時間勤務で昼夜、病室を飛び回ると、靴下はいつのまにか穴があく。靴下と仲良しの白い看護靴もすぐだめになる。一日8〜10時間、ほとんどを立って働くため、靴が悪いと足底筋膜炎(足の炎症)にかかる。病院は看護靴を提供するが、質が悪いので自腹で買って履いたりもする。

避けたい夜の勤務も1か月に6〜7回はしなければならない。午前4時には眠気が 押し寄せる。遊んでいてもつらい時間だが、仕事もするのではさらに疲れる。 日によっては眠たくなる暇もない。急病患者の治療は基本で、眠れないとコール ベルを押す患者の病室にも行かなければならない。体力はますます落ち、夜勤 手当てで精力剤を飲んで補充する。

しかし病院側は看護師たちに毎日笑えという。患者に「先生」どころか「看護師」 とも呼ばれず、「おねえさん」、「00女」と呼ばれても笑えという。その上、 性暴力を受けても患者が該当看護師をかわいがっているのだから我慢しろという。 病院側は「金を稼いでも体力管理費に使ってしまう」とむなしく笑う看護師を 無視するばかりか、見えない感情に点数を付けて縛りつける。性暴力の加害者に 制裁を加え、被害者を保護するどころか、苦情に気を遣う。

忠北大病院看護師のキム・セウン(8年勤務)、ノ・ヨンミ(7年勤務)、イ・ヘヨン (16年勤務)、イム・スミ(11年勤務)氏は、自分が患者を治療する医療関係者なのか、 顧客を満足させるサービス業従事者なのかわからなくなる。

おねえさん、おい、あの、00女と呼ばれる看護師
看護服が汚いと患者が苦情...全季節、白いズボンを履けという病院

「入院患者は治療のために病院にきたというより、休みにきたと思う傾向が強 いです。看護師にやさしくしてもらわなければと考えているようです。応急の 状況の時しか病室のコールベルは押してはいけないのに「水を下さい」、「今晩 ご飯を入れないで下さい」等の理由で看護師を呼びます。われわれは、各病室を 歩き回り、治療して、コールベルが鳴れば走っていきます。基本的に呼称も 「おねえさん、こっち、あの」です。看護師さんとだけ呼んでくれれば良いです」

「モンスター患者」に悪態と暴言を受けたことがあるかと聞くと、看護師たち は「いつもある」とし、一つ一つあげるのも面倒そうな雰囲気だ。「ひどいこ とを言ったり、看護師の口調や態度が気に入らない」と文句をつけたりもする が、看護師の治療の説明を聞かない時が特に困るという。患者に無視されれば 看護師としての自尊心も地に落ちる。

「看護師は医師の下の部下職員として働く人だと感じているようです。患者の 苦情はまず看護師が先に処理します。看護師の治療説明を聞かず『こいつらに 何が分かるのか』と無視して、医師が説明すれば何も言わず聞きます。同じ 説明でもですよ。気にくわなければ看護師に悪態をつき、手を上げて大騒ぎ をしたりします。電話で悪態をつくのも茶飯事です」。

患者は、看護服が汚いと苦情を入れたりもする。端正な服装はイメージ化され た「親切」の別名だ。だが彼らは看護服を清潔に着られない。彼らは一年中、 半袖、白ズボンだ。長袖の上衣は私費で買って着る。

汗でぬれた看護服は家に持ち帰り、一週間に2〜3回、洗わなければならない。 看護服にアイロンをかけて出勤しても、勤務が始まって5分で血がつく。一日に 何千回もポケットに手を出し入れするからポケットの上の部分がすぐほつれる。 病院側は看護服を1年に一着しか与えない。

「看護服が汚いのはそれだけ頑張って働いたわけでしょう? 病院の中間管理者 は看護服が汚いと言っても、『服をもう一着あげます』とは絶対に言いません。 網のヘアピンで髪の毛を縛れと言っても、これを提供しません。不必要な程に 端正な服装を強要する所が病院です」

制服が白いズボンなのも、看護師にはまったく理解できない。清潔なイメージ を象徴する白いズボンは、業務の便利性を考慮した制服ではなく「人目を考え て製作」した制服のようだ。女性労働者が多い事業場であることを考慮した 制服なのかも疑問だ。

「生理になると白いズボンに血がつくこともよくあります。同僚の衣装棚から 合わないズボンを取り出して着ます。分娩室と手術室ではガウンでもかけます。 時々水も飲めず、ご飯も食べられず、生理でもトイレにも行けずに働いている のに、患者に笑ってばかりいろというのですか? なぜ親切を強要するのか理解 できません。私たちも感情がある人間です」。

患者の怒りがやわらぐまで謝罪して、セクハラにも耐えろ?
親切も勤務評価-〉昇進と賃金不利益、イジメ-〉順応する労働者

病院は、患者の各種の苦情を看護師の個人勤務評価に反映させる。患者請願の 90%以上が治療関連の業務請願ではなく、親切度評価だ。1年に2回の親切教育 の内容も、笑う方法、話す方法、電話の応対方法などだ。デパート職員を教育 する講師が、看護師に親切教育をするのがおかしい。

「デパートの苦情と病院の苦情は内容が違います。一例として、患者が病院の 方針による治療を拒否すれば、私たちが親切に笑いながら応対しなければなり ません。医療関係者の立場から見れば、不親切が決まった通りのしごとです。 しかし病院の経営陣は『患者の怒りがやわらぐまでとにかくまず謝罪しろ」と いう立場でしょう」。

看護師は、勤務評価で昇進と賃金の不利益も受ける。公開されない勤務評価な ので、客観的な資料なのかは確認できない。中間管理者の気に入れば良い点数 を受けるのではないかと推測するだけだ。自然にヒラの看護師は、看護師長に コネ作りをするようになる。その隙に割りこまなければいつのまにか仲間はず れになる。その間、看護師は自分の感情を隠してイメージ化された感情を売る 機械になっていく。繰り返される悪循環は組織文化で構造化される。

「看護師長の憎しみを買って、昨年は20kgでも太りました。ストレスのために たくさん食べたのです。職場の上司の気持ちによって、一日が左右されます。 上司が出勤して笑っていれば一日が平和です。それがみんな鬱病につながり ます」。

「一度は私が二回目の妊娠で臨月の時、コールベルが鳴っても走っていくこと ができなかったんです。緊急な状況でもないのに患者の保護者が気に入らなかっ たのか、『亀のようにはってきた』と苦情を入れ、看護師長は私に謝罪文を書 けといいました。出産休職中に病院に出てきて謝罪文を書いたのに、看護師長 が気に食わないのでまた作成しろといいました。私は抗議して書きませんでし た。勤務3〜4年目の看護師は、看護師長が言うままに謝罪文を書くしかありま せん」。

患者から性暴力を受けた看護師が保護されないこともある。病院側に知らせて も被害者が我慢しなければならず、性暴力の加害者を制裁しない。苦情が入る と、事が大きくなるのを恐れて看護師に「我慢しろ」と言うのだ。

「セクハラされたことを知らせると、看護師長が『後で街で会ったらその患者 のお尻を一度叩いてやれ』と言った。患者が看護師の後姿をカメラでこっそり 撮影しても、看護師長は『我慢しろ』、『お前が可愛いからだ』といいました。 お尻に注射する時、膝までズボンをおろす患者もいます。嫌になります」。

自然に看護師は社会的に固定化された彼らのイメージに一言ずつ語る。親切な 看護師、従順な看護師に続いて『成績をもてあそぶ犬』に転落した看護師まで。 看護師という職業を卑下するイメージは、事業場だけでなく社会的にも再生産 される。最大の損害を受けるのは、まさに看護師だ。

「ドラマに出る看護師を見ると呆れてしまいます。チャートを両手で胸に抱え、 バカみたいに付いて回り、医者からひどい目にあいます。看護師という職業を 性商品化するのも非常に不快です。患者と保護者が看護師を無視するのには、 すべて理由があります」。

他人に吐き出しながら粘る看護師たち...「患者は顧客ではない」

看護師には、自分の話を打ち明ける所がない。個人が耐える人生になじんだの かも知れない。ストレス解消法を教えてくれと言うと、同僚とのおしゃべり、 酒を飲むこと、他の人への八つ当たり、眠るなどをあげた。

「他人に吐き出す場合が多いです。不満を受けた人のほうが上手に不満を言う というでしょう(笑)。『私はこんなに大変で、寝るまでずっと仕事するのに』 という考えが強いのです。それと共に他人が遊ぶのを見ることができません。 午前7時半〜3時半、午後3時半〜10時半、夜10時半〜翌朝8時半まで働く交代 業務は、周辺の助けがなければ難しい仕事です。看護の仕事と家事の両方を がんばっても、何も出ません」

「いつかはここから抜け出せるだろうと粘ります。しかし約束がありません。 患者の苦情が入ってくれば『なぜ私があそこであの患者に会ったのだろうか』 と考えながら、また粘ります。何故私に... 福不福ゲームのようです」。

「医院長と教授(医師)によく見られようと頑張った人が結局は昇進するから 『ああして暮らすのが賢いのか』と思います。ご機嫌を取り、笑いながら生き なければならないのでしょうか? まともに暮らしても何も残らないという気が します。まさに私が苦しい時、周辺には誰もいないと思うと恐ろしいのです」。

「では防壁が必要でないか」という質問に、彼らは根本的な問題を考えなけれ ばならないと話した。精神科のカウンセリングを受けて、業務上のストレスで 労働災害を申請することも重要だが、個人が息ができるようにするばかりでなく、 構造を変える取り組みが必要だという。事業場に労組があれば多くの不条理な ことが、それでもすくい上げられるように。個別化の代案は集団化だ。

「中間管理者は、苦情が提起されれば『髪型はどうでしたか? 化粧はどうでし たか?』と根ほり葉ほり問い質し、該当看護師を捜します。わざわざそうする ようです。そのようにして『抽出』された看護師は、それこそ個人です。だが 労組が提起して直したことも多いです。労組が看護婦に『ちゃんと勤務票を組 め』と警告したりもします。『看護婦が処理することなのに、労組がこんな細 かいことにまで気を遣わなければならないのか?』と思うほどです。労組がなけ れば勤務環境は本当に劣悪になるでしょう」。

看護師はまた、医療を商品化する認識が変わらなければと強調する。「患者」 が「顧客」になり、「治療」ではなく「サービス」を受けようと認識する瞬間 が、医療公共性解体のバロメーターだ。看護師の首にかける親切ステッカー票 が、病気の治療と何の関係があるのだろうか。考えてみるべき時だ。

「病院ごとに盛んに親切教育が行われ、労働者への感情統制が深刻になったの は、サムスン病院と牙山病院のような企業型私立病院ができ始めてからです。 医療の商品化でしょう。それで「患者」ではなく「顧客になったのです。 サムスン病院は、「顧客感動」を掲げて開業したでしょう? 学生の時に サムスン病院で実習しましたが、看護師が親切ステッカー票を付けて歩いて いました。部署ごとに親切グラフがあります。驚きました」。

この企画はニュースミン、ニュースセル、メディア忠清、蔚山ジャーナル、チャムセサン、チャムソリの共同企画です。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-11-19 20:45:59 / Last modified on 2013-11-19 20:47:02 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について