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"アンニョン"に問う。「これも不法デモですか?」

[取材文]全州青少年の「民営化反対」平和デモ

ムン・ジュヒョン記者 2013.12.17 13:04

不法デモへの青少年のやり方

12月16日午後8時、この時間に全州で一番混雑する街「歩きたい通り」。 大型スーパーの登場でずいぶん街が寂れたと言われるが、それでもショッピング のために多くの若い人たちが訪れる通りに一群の女子学生が立っていた。ある 人はゴマ粒のような文字で書かれたプラカードを持ち、他の人はその周囲を 通る人々をながめていた。もっと近寄ってみると他の2人の女子学生の足には 「二十歳、初めてのプレゼントは民営化?」と「目と耳を塞げば『元気になれる』 と信じていました」と書かれたプラカードが置かれていた。

▲48時間前に申告していない4〜5人のデモは不法だという警察の話を聞いて考えた彼らの方式[出処:チャムソリ]

「ここにくる前に警察署に電話をしました。デモをするのだが、人員は4〜5人 程度で、やってもいいかと聞きました。すると電話を受けた人が担当者に代わっ てくれて、その人は48時間前に申告しなければならないと言い、不法だと言い ました。それで、できないのではないかとドキドキしました」。

全州A高校三年のイ・ジュニ(仮名)氏が立ち上がって話してくれる。彼らが準備 したプラカードは合計3枚。同じ場所でこれらのプラカードをすべて持てば不法 だという事実に対して彼らが考え出した方法は、1人が代表でプラカードを持っ て立ち、他のプラカードは足に置くという方式だった。

アナムゴルで最初に「お元気ですか?」という言葉で始まった問いに対する答が 全国あちこちで巨大な声になって鳴り響いている。互いに「メリークリスマス」 と挨拶する12月、2013年の大韓民国では互いの存在を問う「本当に元気なのか」 という挨拶の方が自然だ。

全州の女子高生5人もその質問に全州市内で答えた。イ・ジュニ氏は「最近は、 鉄道民営化の問題が熱くて、それで始まった『お元気ですか?』という問いへの 反応が大きいでしょう。私たちもじっとしていられず、全州の市内でこうして デモをしてみようといった友人が提案して始めました」とし、全州市内に 出てきた理由を説明した。

▲正しいことを言うのだから、堂々としていたいという青少年。平凡な彼らに変なこの世界は勇気を与えたのだろうか? あるいは誰にでも勇気はあるのだろうか? 彼らの平凡で平和なデモにあえて勇気という言葉で特別さを強調することが正しいのだろうか? [出処:チャムソリ]

「暖かい応援、恐れが消えました」

彼らはデモだと言ったが、記者が見るには彼らの姿はフリーハグに近かった。 人生に疲れた人なら、いや、ただ人の暖かいぬくみを感じたい人なら、誰でも 抱擁できるように腕を広げている人。彼らはそんな気持ちで自分たちが持って いるプラカードを見てくれることを望んだ。

午後8時から始めた彼らのデモは、だから平和だった。彼らの気持ちに応えるか のように、通り過ぎる人々が暖かい飲み物とアメ、使い捨てカイロなどを渡した。 ある人は暖かい手袋五つを彼らの手に握らせた。デモから20分も経たないうちに 彼らが受け取った気持ちは持ちきれないほどになった。

「正直、始めるまで人々の視線が恐ろしかったです。あいつら、何であんなこ とをするのか? それで何が変わるのか? そんな思いで、ずっと心配していたの です。しかし実際にやってみたら、思ったよりたくさん応援してくれて、とても うれしい」。

▲青少年の平和デモに応援の気持ちが込められた飲み物と使い捨てカイロを渡す市民が本当に多かった。[出処:チャムソリ]

この言葉に記者も「そうだ! その通り。この人たちは高3だ。本当に何を知って いて、こうするのか?」という考えを、恥ずかしいことに持っていた。それで、 本格的に彼らに聞き始めた。

「マスコミも統制されて国民と対話の輪が切れれば、繋ぎ直さなければなりません」

最初の質問は、当然「民営化について知っているのか?」だった。イ・ジュニ氏 は、「民営化のことは知っています。十分に議論しなければいけないのに、で きていないでしょう。社会的合意が必要だと思います。そしてこの民営化だけ が問題ではないでしょう。双竜車、密陽送電塔、コレイルもすべてこれと似た 問題だと思います」と答えた。明快な返事だ。続いて彼女は「政府は対話をし なければなりません。それなのに言論も統制して、国民と対話の輪が切れたの ですから、またその輪を繋ぎ直さなければいけないと思います」と代案まで 提示した。

事実、彼らが持っているプラカードの内容は全てを含んでいる。社会に始めて 足を踏み出す彼らの世界は、民営化問題で疲弊している。国家機関は権力の肩 を持ち、彼らに与えられた任務よりインターネットのコメントの方に関心を傾 けている。労働者、農民、庶民の人生はますます悪くなり、小さな苦闘も認め られない。「目と耳を塞げば元気になれるという信頼」は、権力を振り回す者 に対する私たちの生存方式なのかもしれないが、就職難、経済危機など社会的 な難題は、もうこれ以上の沈黙で生命を維持するのは難しいということを示す。 青少年の自殺率1位、密陽送電塔と労働者の相次ぐ自殺は生存方式の転換をこの 社会に要求している。

▲全州市内「歩きたい通り」で「民営化反対」のプラカードを持つ青少年に対する関心は寒さにもかかわらず熱かった。[出処:チャムソリ]

「若いから政治に関心を持つなという言葉に反対します。韓国の教育が悪いの ではありませんか? 社会に関心がなかった友人が社会に出て、きちんと暮らせ ますか? 社会の動きを理解できるようにならなければいけないのに、学校は 勉強だけさせて、あとはすべて遮断します。これは悪習で、偏見だと思います」。

彼らの釈明に含まれる質問に対し、この社会は相変らず無対応だ。アナムゴル から始まった質問に答える全国各地の高校生の壁新聞は、学校現場からはぎ取 られている。大田と群山では、勇気ある学生たちが実名の壁新聞を校内掲示板 に貼りだしたが、壁新聞の生存時間はわずか10分ほど。A高校も2年生の後輩が 壁新聞を準備したが、勉強が優先だという先生の引き止めで、掲示板に貼るこ とさえできなかった。それでも彼らが街頭に出て来れたのは修学能力を受けた 3年だからだった。もちろんこれも両親の許諾と共に、学校に知らせなかった から可能だった。

「学校のそんな雰囲気は、先生も心配しているからでしょう。学生たちが変な ことに巻き込まれないかと心配しているのでしょう。大学入試や勉強に集中す べき子供がデモをすれば勉強に集中できないと思っているのでしょう。それが 学校としては損害に見えるかもしれせん。そして学校のイメージを失墜すると 思っているようです。しかし誤った考えです。私たちがしているのは社会変化 の第一歩だと思います。そして誰かがするべきことです。初めてだから難しい だけでしょう。イメージの失墜と思うかもしれませんが、むしろ人権が生きて いる学校だと認められるでしょう。壁新聞を貼ったらすぐはがすことがむしろ 抑圧的に見えて、イメージを失墜させるのではないでしょうか?」

▲青少年の「民営化反対」平和デモへの青少年の関心も高かった。友人や後輩もたくさん通りかかった。通りかかる青少年は応援を惜しまなかった。[出処:チャムソリ]

12年の禁止を経験した友人らの応援メッセージ、「禁止は破れと言われています」

一部の市・道では、やっと学生人権条例が公布され、学生の自由な考えを尊重 しようという声が高まっている。だが相変らず学校現場には彼らの声と自由を 縛る「禁止」でいっぱいだ。なぜ彼らが道路でデモをするのかを確認する問い は、自然にこの「禁止」についての話になった。12年の学校生活、通りに立つ 前、彼らの人生は「禁止」が日常になっていた。学生とはまさに、やってはい けないことで埋め尽くされた空間で生きる人々だ。民営化などの国家の政策に さからうストライキは「不法」であり、「禁止」という政府の弾圧に抵抗する 鉄道労働者の闘争。あるいは学生たちは12年間、その禁止に耐えて生きてきた 存在だった。それで年齢は若くても「禁止」に挑戦する労働者よりも彼らの方 が先輩かもしれないと対話の中で考えたりもした。

「やるなと言うこと、禁止は破れと言われています。自分の声を上げることは 正しいことなんです。だから鉄道労働者を応援して頑張ってほしいのです。 そして私たちを守るために、ああして闘争しているのだと思います。それで 鉄道労働者たちに守ってくれてありがとうと言いたいのです」。

禁止に耐えてきた先輩だと思い、労働者への言葉をお願いすると、真っ先に 謙虚にありがとうという言葉が出る。

「いつかは崩れるでしょう。火種だけでも残して頑張ってほしいです。火種を 残す余地と希望を残せれば、すぐ変化がなくても良いです。消えないことを 望みます。ですから最後までやってほしいです」。

苦しむ人々と共に抵抗していた同僚が世を去る姿を見ることほどの苦痛はない。 政府の間違った政策と企業の利益のための横暴に苦しんできた人々に、記者の ような人々はあえて「頑張れ」、「抵抗しろ」とは言い出せない。しかし頑と して融通がきかない学校で、朝から晩まで勉強という労働に苦しんだ人なら、 差別的な社会でさらに長く暮らして耐えなければならない人々が語る「希望」 と「余地」、「火種」なら、十分に力になることができるのではないかと思う。

▲ある市民が急いで彼らの手に1万ウォンを握らせた。強く拒んだが、市民は急ぎ足で消えた。[出処:チャムソリ]

全州の青少年が行った「民営化反対」プラカードデモ。かなり寒かったが、彼 らは予定していた1時間30分を過ぎた午後9時30分の後も続けた。これまで互い に持っていたプラカードを取り替えて、寒さに耐え抜いた。

「本来、それぞれ違うところで1人デモをしようと言っていました。そのために はプラカード一枚にいろいろな表現を入れなければいけないのですが、難しく て、こうして集まってすることにしました(笑)。こうして集まってやると力も わいて、伝達力も大きくなるでしょう。この社会は一人で暮らしているのでは ありませんから、これからもっと多くの人と一緒にしたいですね」。

通りかかる人々の応援が続き、同じ年頃の人たちの関心が高いことを体で感じ、 力もわくようだ。始める前はTVのニュースでデモの時に登場する険悪なおじさ んがきて、何か言われないかと恐れていたが、デモ中、ずっと明るい雰囲気は 壊れなかった。ある友人がFaceBookに書き込んだ写真はすでに「いいね」が 500を越した。

▲青少年の平和デモが始まってしばらく後にFaceBookに書き込んだ写真の「いいね」は500を越えた。ほとんどの青少年がFacebookの友人で、彼らへの支持を確認することができた。[出処:チャムソリ]

彼らの平和デモ、本当に不法なのでしょうか?

それでも「禁止」に慣れた彼らに心配がないわけではない。参加したイ・ソン ジン(仮名)氏は「両親は公務員で、被害が及ばないか心配になります。これが 知られると私のおかげで迷惑を被害を受けないでしょうか? これまでの苦労が 私の行動で崩れるのではないか。そんな小さな心配をするのかと思いながら、 しなければならないのは本当に悲しい」と胸の内を伝えた。

ある友人が話しかけた。「学校は仮名にして下さい。学校に知られたくないので」

記者が見ていた1時間30分のデモ。明らかに深刻な雰囲気ではなかった。しかし このデモが最近流行する「従北」の烙印に利用されるのではないかという彼ら の心配が笑いの裏にあった。なぜそうなのか?

「利己主義? よくわかりません。なぜ社会はこんな雰囲気なのか。ずいぶん前 からわざわざ自分の考えをいうことを防ぐために、偏見を植え付けたようです。 政治に関心がある子なら、色眼鏡をかけて見る社会の雰囲気もそうで、そんな 友人を見て、わけもわからず浮かれているのではないかと言うのもね。しかし 同じ年頃の人たちが自分の声を上げることを恐れてほしくありません」。

民営化に反対する青少年のデモの報せに接して彼らと会った。記者の取材不足 か、民営化反対よりも、青少年の発言と行動を乱暴に扱う社会の雰囲気に対し て、さらに多くの話を交わした。

彼らと別れる前、記念写真を要請した。写真を撮りながら、記事に入れると 言ったが、判断ができない。団体でプラカードを持つ写真が、警察が言う 不法デモの証拠になりかねないからだ。

果たして彼らのデモは不法で、禁じられるべきものなのだろうか? 彼らが応援 する鉄道労働者たちの民営化反対ストライキが、不法で、禁じられるべきもの なのだろうか? 密陽、双竜車、江汀村、韓進重工業、サムスンサービス、現代 車非正規職、才能教育、全北バスストライキ、アデカコリア、竜山など、到底 話しつくせない労働者と庶民の抵抗が、不法で、禁じられるべきものなのだろ うか? 判断は、この記事を読む読者がすることを望む。そして違うと思ったら、 彼らの抵抗を押しつぶそうとする暴力の前に、一緒に立ち向かってほしい。 世の中と読者を信じ、警察が言う不法デモの証拠を残して彼らの平和デモの 取材文を終える。

▲彼らに記念写真を要請した。とても楽しかった平和デモを残したかった。彼らが警察に問い合わせしたところによれば、48時間前に申告しない4〜5人のデモは不法だ。それでは不法デモの証拠写真だろう。読者が評価してほしい。「彼らのデモは不法ですか?」 [出処:チャムソリ]

付記
ムン・ジュヒョン記者はチャムソリの記者です。 この記事はチャムソリにも掲載されます。 チャムセサンは筆者が自分で書いた文章の同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-12-18 08:30:24 / Last modified on 2013-12-20 12:11:40 Copyright: Default

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