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トヨタ事態、故障したのは資本のアクセル

[寄稿]労働者を殺す生産システムで作った車が完全なはずがない

ハン・ジウォン(労働者運動研究所(準))/ 2010年03月04日15時50分

トヨタのリコール問題が3月も続きそうだ。トヨタ事態は、2月24日、トヨタ会 長が米下院聴聞会に出席してリコール事態で消費者に迷惑をかけた点を謝罪し、 米当局と国会は、すでにリコールが行われたペダルの欠陥の他の安全問題を明 らかにならず、鎮静局面に入るかと思われた。だが聴聞会以後、トヨタが3月に 21万台が追加リコールすると公開し、マスコミ各社によりトヨタが約100万台に のぼる車両を当局に申告せず秘密裏に修理した事実が明らかになって、またト ヨタの不道徳性への非難の世論が起きている。

一方、大部分の米国自動車専門家たちは、トヨタが1、2年間販売が減少するが、 他の自動車企業等のようにまた元に回復するだろうと展望する。彼らによれば リコール事態でつぶれた自動車会社は歴史的にもなく、毎年千万台近いリコー ルがある米国で、今回の事態は多少大きかったものの致命的ではないスキャン ダル程度だ。トヨタは2006年にも急増したリコールで日本とアメリカで問題に なったが、数か月後には何もなかったかのように販売を回復した経験がある。 ニューヨーク証券市場でもリコール事態以後、91ドルから71ドルまで落ちた トヨタの株価は24日から反騰し始めた。

トヨタ事態は一度の大きなハプニングで終わるのか?

トヨタ資本ひとつだけを見れば、ハプニング程度と見ることもできよう。だが、 21世紀の資本主義と自動車産業全体をめぐって考えると、トヨタ事態が意味す るものはそれほど簡単ではない。70年代の不況以後、超国籍資本が主導した資 本の世界化は、2008年世界金融危機で破綻した。20世紀の米国資本主義を代表 したGMは、政府支援と労働者健康保険基金出資でかろうじて破産を免れ、1910 年代のフォード主義以後最大の生産革新と称された8〜90年代のトヨタ生産方式 は、今回のリコール事態を契機に深刻な問題があることがあらわれた。

歴史的に見れば、金融危機からトヨタ事態に至る2年間に起きた出来事は、世界 の資本主義が20世紀後半から試みた革新が崩壊していることを示す。トヨタ事 態がトヨタだけの問題でないということだ。

2008年、2009年、米国内でリコールされた自動車の数は2160万台!

トヨタのリコール事態で浮き彫りにされなかったが、2008年、2009年はいつの 年よりも米国内のリコール車両が多かった。2008年、米国内でリコールされた 自動車の数は860万台で、全自動車販売台数1300万台の66%になる。そして2009 年には史上初めて一年間の販売自動車数より多い自動車がリコールされたが、 その間1000万台が販売され1520万台がリコールされた。2009年トヨタがリコー ルした車両が約500万台であることを考えると、米国自動車3社もそれに負けな いリコールをしたということだ。事実2009年のリコールに関し、トヨタと GMフォードの違いは国籍の違いしかないと見ることもできる。

販売した車より構造的な欠陥でリコールして修理する車が多いのは、トヨタだ けでなく、21世紀の大部分の自動車企業が直面する現実だ。特に自動車企業が 費用を削減するための構造調整を本格的に始めた80年代以後、リコールは幾何 級数的に増加した。代表的に現在のトヨタのリコールに次ぐ760万台をリコール した1996年フォードのエクスプローラ(Explorer)がある。GMはトヨタのリコール が始まる7か月前に自動車火災の危険が発生し、150万台をリコールした。トヨ タは今回のリコール前にすでに10年間で500万台以上をリコールした。

ほとんどのマスコミがトヨタのリコール事態の原因を品質に対する傲慢、また は成長一辺倒政策の中で緩んだトヨタ精神などだと指摘しているが、上のよう なリコール規模を考えると、あまりに単純な分析だ。すべての自動車企業が直 面する品質管理の問題は、自動車産業全般にさらに根本的な問題があることを 暗示する。

[出処:トヨタ ホームページ]

生産性向上の秘密、死の搾取工場で作った車が完全なはずがない

トヨタをはじめとする自動車企業の品質問題は、極端な費用削減政策が背後に ある。過度な費用削減が現場生産、部品調達など、さまざまな側面で品質の低 下を持たらした。トヨタは2000年代以後、『21世紀費用競争力建設(CCC21)』と 呼ばれる30%コスト削減運動を約10年間展開し、2009年だけで5兆ウォン以上の 費用削減を成し遂げた。

もちろんこのような費用削減はトヨタだけではない。GMは費用削減のための工 場移転と生産人材縮小で、米国内の労働者を9年で10万人近く減らし、08年末に は総従業員数を9万人水準に維持した。フォルクスワーゲンは中国、インド、ブ ラジルなどに生産を拡大して、現地生産割合を90%まで押し上げた。

もちろん自動車メーカーの費用削減は最近のことではない。国外工場の拡大、 アウトソーシングなどの費用削減政策は、自動車産業の開始と同時に始まった。 例えばGMは1938年に国外で25万台、米国内で10万台を生産し、国外生産の割合 は全生産の70%に迫った。

だが最近の傾向とは違い、1970年代までのコスト削減は労働費用より販売市場 に関する運送費用、関税回避などが主な理由だった。1910年代フォードが国外 に進出した時は、フォードの生産性向上について行けない運送システムが国外 進出の主な理由だった。1、2次世界大戦以後、資本主義の黄金時期に米国とヨー ロッパの自動車メーカーは高い関税を回避するため国外に生産工場を増設した。

世界資本主義高成長が終わり、1、2次オイルショックを契機として70年代の中 盤から新自由主義が始まり、状況は変わった。毎年成長する市場に対する販売 政策ではなく、生産費用そのものを下げる極端な方法が導入され始めたのだ。 自動車メーカーは販売地に近くなくても、労働費用を削減するために低賃金地 域に工場を移転したし、工場移転の脅迫により自国内の労働者の労働強度を飛 躍的に高めた。もちろん賃金も大幅に下落した。

1981年、フォードは50%賃金削減案を労組に提示し、GMは1982年に25億ドル(現 在のドルで54億ドル、約5600億ウォン)規模の賃金費用削減を労組に貫徹した。 連続した賃金削減要求で米国自動車産業労働者の実質賃金は77年以後約20年間 凍結した。産業内労働者数も急激に減り、79年には110万だった労働者は90年代 には90万水準に減り、2008年には73万にまで減った。一方同じ期間に従業員一 人当りの生産性は2.5倍以上上昇した。労働強度の上昇と雇用削減、そして 賃金の減少が同時に発生したのだ。

こうした労働強度強化と賃金削減を世界的に率いたのは、トヨタだった。トヨ タ主義とも呼ばれる80年代以後のトヨタ生産革新の中心には、極限の労働費用 削減、労働強度強化、労働柔軟化があった。

トヨタは、作業場で不自然な作業者の傾向、長時間の緊張、高負荷の労働など による休息時間を0に設定するゼロ余裕率、作業グループ間で生産性競争をさせ、 成果給に反映する能率競争、設備稼動率を100%に設定して策定する生産計画、 交代時間に残業を強制できる交代制、各種の会合による私生活の管理など、多 様な方式で労働強度を強めた。それだけでなくこうした労働強度で向上した生 産性で人員を削減し、その場を非正規職に変えた。

トヨタはこうした労働強度革新により、90年代初期から米国自動車業者よりも 優れた労働費用削減を達成した。90年代中盤のトヨタの一人当たりの生産時間 は米国より17時間近く短かった程に優秀だった。そして国外の工場も自動車労 組がない地域に移転し、賃金もまた下げた。トヨタ米国工場はGMフォードと較 べ、時間当りの賃金は半分以下だった。

90年代から、すべての自動車メーカーがトヨタの生産性を基準にし始め、トヨ タ生産方式は産業全般に影響を与えた。GMは、1984年にトヨタとの合弁工場 (NUMMI)をプリモントに建設し、87年には当時、他の工場より生産性を二倍近く 上げるという成果を上げた。世界の他の自動車企業もすべてトヨタまねること に熱を上げ、2008年には米国自動車3社はトヨタとの生産性(Hours Per Vehicle)格差を1時間以内に減らした。

そして当然、高強度労働、非正規職拡大、工場移転などの構造調整は品質問題 をさらに深刻にした。工場の労働者は品質はともかく、押し寄せる生産量に耐 えらるにも力不足だった。

トヨタ追跡に熱を上げたフォードは、1996年に最大の規模のリコール事態を体 験した。追撃してくる米国自動車企業を締め出すトヨタの30%コスト削減運動は、 2000年以後、毎年リコール台数が増え、2000年には10万台程度でしかなかった リコール台数を2005年には100万台水準にまで拡大した。

労働権の改善のない品質改善は労働者失脚でしかない

トヨタ事態を契機として、自動車企業すべてが品質を改善すると大騒ぎしてい る。現代車は会長が直接、納品業者の単価を下げないと言い、GMフォードは自 社(車)の安全に努力していると広告している。多分こうした言葉は営業戦略の 性格が強いが、とにかく品質の象徴だったトヨタ事態を契機に自動車企業がもっ と厳格な品質管理にさまざまな方法を講じるものと見られる。

だが、問題は現在、自動車メーカーが果たしてどのような品質管理ができるか ということだ。自動車メーカーの品質問題は、80年代以後の絶対的な費用削減 の要求があったためだが、現在この問題は全く解決されていない。世界的な資 本主義利潤率の低下の中で自動車メーカーは生存のためのコスト削減運動をし、 その過程でトヨタのような企業が労働者を殺す生産システムを作り出した。

自動車産業は1970年代以後、下落し続ける資本主義利潤率軌道の代表的産業だ。 20世紀の資本主義を代表する自動車メーカーは、世界資本主義の危機と共に大 きな収益性の危機を味わい、最近の経済危機でさらに深刻な事態に直面してい る。ある産業または企業の中長期的な収益性を示す資産対応収益率(ROA)を見る と、この5年間、ニューヨークの証券市場に上場する自動車メーカーの平均は約 2.8%だ。これは製造業500企業平均4.8%の60%程度にしかならない。さらにこれ は短期的な下落でなく、80年代以後の継続的な下落の結果だという点でも示唆 的だ。

もちろん産業内の平均利益より高い超過利益を獲得する先導企業の状況はもう 少し良い。90年代中盤から急成長したトヨタの100兆ウォンを越える現金性資産 は有名な例だ。だが日本の自動車メーカーの生産技術が普遍化したうえに、 2008年の経済危機以後、長期間の低成長が予想される状況で、一部の先導企業 の超過利益が続くと見るのは難しい。さらには中国、インドなどの新興工業国 家が自動車産業に本格的に飛び込み、低価格競争がさらに深まる状況はさらに 大きな悪条件だ。

では、こうした状況で、自動車企業の品質改善は何を意味するのか? 現在の品 質問題は、資本主義危機の局面の中で自動車企業が持つ構造的な問題だ。自動 車企業が収益性と直接関連する労働生産性を犠牲にしてまで品質改善はしない。 結局、品質改善に必要な費用はさらに多くの労働の譲歩により確保するほかは ない。自動車企業は品質改善という名分で労働強度、賃金などに対するさらに 多くの譲歩を労働者に要求するだろう。

トヨタのリコール事態を契機として自動車労働者は自動車産業の構造的な問題 を社会に提起する時になった。資本のマスコミは、トヨタ事態で韓国の自動車 企業の販売が伸びると歓呼の声を上げているが、事実、労働者立場では、これ は労働者の血と消費者の危険が入り混じった資本主義の矛盾を示す事件でしか ない。非正規職拡大、人間性まで抹殺する殺人的労働強度、下請け業者への 損失転嫁など、自動車産業は今、資本主義の明るい未来でなく最も暗い陰だ。

世界資本主義危機の中で自動車労働者が自身と全体労働者の労働権のために戦 わなければ、結局、さらに恐ろしい収奪の労働現場が再生産されるだろう。ト ヨタのリコール事態は、故障した資本主義の断面であり、労働者が戦わなけれ ばさらに恐ろしい搾取を受けることを知らせる警告だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-03-07 04:05:33 / Last modified on 2010-03-07 04:05:35 Copyright: Default

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