スペックを積むほど人生は不安になる

［想像をわけあう］スペック稼ぎのブームと陥穽

米国を震源地にした世界経済の危機は、韓国内の雇用市場を大きく萎縮させて いる。ところが現在のグローバル金融危機が招いた雇用市場の結氷は、外国為 替危機の時とは明確に異なる形態を示す。つまり、全般的な雇用難を呼んだ外 国為替危機と違い、今回は主に女性と零細自営業者のような脆弱階層に集中し ている。

性別で見ると、外国為替危機直後の1998年の就業者は前年より127万6千人減少 し、男性が63万6千人、女性が64万1千人とほぼ同じように減少した。しかし現 在、男性は昨年3万1千人増えたのに対し、女性は10万3千人減少した。自営業者 では、外国為替危機の時は従業員をもつ自営業者が24万7千人減少し、最大の被 害をこうむったが、今回には従業員をおかない零細自営業者が25万人減少して、 彼らに被害が集中した。

これとともに、年齢帯別の雇用難も外国為替危機の時とは違う。外国為替危機 の時はすべての年齢帯で就業者が減少したが、今回は50台以上が政府の公共雇 用政策に力づけられて増加したが、青年世代(15-39歳)は30万人減少し、低年齢 層での減少傾向が明確に現れた。

こうした現象は、外国為替危機以後に断行された新自由主義再構造化が招いた 社会二極化のもうひとつの結果だ。つまり、雇用の死角地帯と言われる女性、 零細自営業者、青年世代に集中した今回の雇用難は、これらの階層に現れる慢 性的な生活の不安定と危機を如実に示す。これから生活の安全に対する希求は 最大の関心事になり、よりまともな経済的な機会と補償のために資本が作った 型枠に自分の身をすっかり任せる。

就職競争に生き残るための大学生のすさまじいスペック積み競争は、上の情況 を反映する。彼らのスペック積みは高い点数の単位とTOEICはもちろんインター ン、資格証明、アルバイト、公募展、奉仕活動という『就職5種セット』が追加 で結びつく。ところが大学生のスペック積みは青年世代だけの物ではない。 つまり、スペック積みは無限競争で生活の周辺部に追放されまいとする大衆(す べての世代)の生存権的資源であり、アイテムになっているのだ。

若い学生にとってスペック積みは進学と直結する。小学生と中学生は国際中と 特別目的高校進学に必要な資格を得るために、TOEICと数学はもちろん倫理体育 と漢字まで勉強する。高校生は大学入試のためのスペックを積むが、国・英・ 数は基本、随時に必要な多様な資格(外国語、奉仕活動、倫理体育特技)まで備 えなければならない。もちろんこのようなスペック積みは私教育で形成される。

スペック積みブームは学生時代で終わらない。『社会人』と呼ばれる会社員た ちは、『負け組』にならないように今日も自発的(?)に残業に突入し、外国語だ けでなく各種のトレンドを集めて業務に必要な情報を貯蔵する。大韓民国の未 婚女性が望む配偶者年俸4579万ウォンに達すれば、彼らには結婚する資格も与 えられる。『沙悟浄』に属する40代も、名誉退職後に経済生活を営む創業設計 に怠けてはいけない。彼らに退職金で延命するにはあまりにも長い老後は手に あまるだけだ。

本来スペックという用語は製品説明書を意味する英語単語『specification』か らきた言葉だ。この意味は、現在では進学や就職準備生にとって単位、TOEIC、 資格証明、校内外活動、経歴事項を合わせた総体的労働能力の認証指標として 使われる。多様な分野に対する博学な知識の習得が問題なのではないが、昨今 のスペック積みは労働力を画一化・標準化していつでも交替可能だという点に 問題がある。労働力が画一化・標準化されるというのは自身の能力と才能を自 ら開発できなくし、常時的な交替の可能性は雇用不安の慢性化につながる。

結局スペック積みは生活の安定にとって有効なアイテムではなく生活の不安を 持続する原因だ。途方もない努力と精魂を込めた華麗なスペック目録が引き起 こしたこのような逆説を直視する必要がある。『雑草はない』という言葉と同 じように、それぞれの存在はそれなりの生存理由がある。自身が本当にやりた いことを見つけ、その仕事をしながら聞こえる心臓の鼓動が生活の安全を保障 する近道だ。これから自身の能力が代替不可能な固有の特異性と評価される時、 資本が作ったスペック積みの陥穽は無用の物になる。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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