本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:知りつつ放置した職業病、サムスンを許せないもうひとつの理由
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1501760865232St...
Status: published
View


知りつつ放置した職業病、サムスンを許せないもうひとつの理由

[連続寄稿]サムスンが変わらなければ犯罪は繰り返される(2)

イ・サンス(パノルリム常任活動家) 2017.08.01 15:56

[筆者注]サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の弁論終結が8月7日に予定されている。 弁論が終結すれば8月末頃に1審の宣告が出るものと展望される。 李在鎔副会長の裁判は歴代のサムスン総帥のうち唯一拘束された状態で受ける裁判で、 これまでサムスンが行った犯罪を審判する象徴的な裁判でもある。 だが、裁判の中で李在鎔無罪論や、処罰否定論がまた首をもたげている。 そのため「サムスン労働人権守備隊」と「半導体労働者の健康と権利を守る会」は、 李在鎔をきちんと処罰することがなぜ必要なのかを 「李在鎔をきちんと処罰しなければサムスンは変わらない」という連続寄稿で読者に知らせようと思う。 連載は3回にかけて進められる予定で、プレシアン、チャムセサン、メディアオヌル、OhmyNewsに共同で掲載される予定だ。

[連載順序]

(1) 李在鎔拘束以後、サムスンの支配構造は? |チョ・デファン(サムスン労働人権守備隊)

(2) 李在鎔拘束? サムスン職業病問題は相変らず未解決|イ・サンス(パノルリム常任活動家)

(3) 李在鎔無罪を叫ぶ言論、サムスンの言論支配は生きている |パン・ヒギョン(西江大言論文化研究所)

(4) サムスン電子の李在鎔副会長結審公判の日に起きたこと |イ・サンス(パノルリム常任活動家)

[出処:パノルリム]

「サムスンは初め、まったく化学薬品を使わないと言っていました。 そのうちに化学薬品が発見されると、有害な化学物質は使っていないといいました。 今は営業秘密なので化学物質を公開することはできないといいます。 サムスンは嘘ばかりついてきました。」

10年間、 サムスンと戦ってきたファン・サンギお父さんの言葉だ。

「米国の半導体チップメーカーに毒性の問題があり、 彼らはこの問題を外注化した。」

一か月前、ブルームバーグビジネスウィークが報道した探査企画記事の題名だ。 この記事は、サムスンの嘘を指摘したファン・サンギお父さんの言葉が 思ったより多くの真実を含んでいるという点をよく示す。

1980年代に米国のある疫学調査で、半導体工場女性労働者の流産の問題が深刻だという点が確認された。 初めての調査は議論を呼んだが、後続の調査は常に同じ結果を見せた。 1995年、IBM社は問題になった化学物質の使用を全面中断すると発表するに至る。

調査をした研究陣は、万一の危険性も共に警告した。 「この毒性物質は安く優れた性能を持っているので、 海外では高価な代替物質ではなく、この物質が使われる危険がある」

悲しいことに、この警告はそのまま韓国で実現された。 1995年、この毒性物質の使用を中断したIBMが同年1650億ドルもの大型納品契約を締結したが、 その相手が韓国のサムスン電子とハイニックスだったのだ。 韓国の半導体会社に対するこのような種類の契約は、インテルやHPのような他の会社に拡大していった。

いつしか歳月が過ぎて2009年、 サムスンとハイニックスから任意に採取したサンプルの半分以上でまさにこの毒性物質 EGEs(エチレングリコールエーテル)が検出された。 米国では1級生殖毒性物質と指定され禁止された後、 短くても15年近く韓国の労働者たちはこの物質に露出していたのだ。

本当にサムスンは知らなかったのだろうか? 米国の半導体メーカーが生産を中断し、彼らに巨額の契約を抱かせたその理由を、 サムスンは本当に知らなかったのだろうか? 不妊、流産、子供の奇形などを誘発する1級生殖毒性物質の存在を本当に知らなかったのだろうか? 簡単に検索しただけでも、この内容を報じた当時の記事を探せるのに? いずれにせよ、サムスンが昨年強行した秘密補償手続きには生殖疾患の項目が抜けている。 サムスンは例外なく、このように厚かましい。

無責任

ファン・ユミさんの死から10年、多くのことが変わった。 良心的な専門家が半導体産業の有害性について多くのことを明らかにした。 おかげでサムスンと勤労福祉公団の妨害にもかかわらず、 20人の被害者は労災を認められることになった。

SKハイニックスは、専門家たちが言う電子産業の職業病のほとんどを包括する補償制度と予防制度を導入した。 多くの国内外のマスコミが半導体電子産業の有害性を報道し、 不合理な法制度を改善するための努力も進んでいる。

だが、サムスンだけはこうした変化から相変らず外れている。 法的義務事項の作業環境測定もきちんとやらず、 必要な資料提出は「営業秘密」を口実にほとんどを拒否する。 サムスンは裁判所と国会に提出する安全報告書も操作して、告発された。

パノルリムと合意した唯一の争点である再発防止対策も、 きちんと施行されているのか疑わしい。 再発防止策として合意した「オンブズマン委員会」の活動を報告するイベントが 最近、大々的にマスコミで伝えられている。

だが、まさにこの場に討論者として参加した専門家は、 内容もなく準備も不十分で失望を隠せない。 実際の職業病予防に力を入れるのではなく、 「オンブズマン活動がある」という言論報道用のイベントだけに集中しているのでないかと疑わざるをえない。

サムスンが責任を回避している間、パノルリムの座り込みは660日を越えて続いている。 パノルリムは真摯な謝罪と透明かつ排除のない補償を要求している。 だが「調停委員会の勧告」によって被害者に補償したというサムスンのもうひとつの嘘が戻ってくるだけだ。

「サムスン電子は調停委員会と別途の独自の補償委員会を構成し、 調停委員会が勧告した補償基準を任意に修正した後、 調停委員会と関係なく補償手続きを執行する」

調停委員会の立場発表があったが、 やはりサムスンは関わらない。

処罰

年末から続いたキャンドルのおかげで李在鎔が拘束され、裁判を受けている。 サムスンをタダで世襲するために数百億の会社の金を横領し、隠匿して海外に引き出して、 黒い権力に賄賂を送った容疑だ。

賄賂の代価として李在鎔のための企業合併に国民年金の賛成を勝ち取っり、 その過程で国民年金にまで損失を与えて国民的な怒りを呼んだ。 李在鎔と共犯者たちは、この犯罪行為に対して全員が罪の代価を払わなければならないだろう。

裁判はいま、終結に向かっている。 宣告の日が近付き、「特検は不十分な証拠で無理に起訴」したとか、 「犯罪を立証する決定的な一発がない」と言って親サムスンのマスコミの大騒ぎはさらに過激になっている。 これらのマスコミを見ただけでは、れば李在鎔が釈放されるのではないかと心配になるほどだ。

だが、国政壟断全体と緊密にからむまっている李在鎔の犯罪行為はあまりにも大きく、 それほど簡単に消せるものではない。 合併の決定を主導した保健福祉部長官の文亨杓(ムン・ヒョンピョ)と国民年金基金本部長のホン・ワンソンは、 すでに2年6か月の実刑を宣告された。

青瓦台が組織的にサムスンの継承を支援したという広範な証拠が含まれる安鍾範(アン・ジョンボム)の手帳、 最近発見された青瓦台文書がすべて裁判で証拠に採択され、 李在鎔の犯罪をよく表わしている。 これらの文書を作成した前大統領府行政官は、禹柄宇(ウ・ビョンウ)が文書作成を指示したことも証言している。

未来戦略室で官僚ロビーを担当したチャン・チュンギの携帯メッセージは、 サムスンが政府の官僚を密着管理して、 ダウムやネイバーのようなポータルサイトの記事まで細かく管理してきた点を見せる。 チャン・チュンギが国家情報院の幹部を通じて政府の人事に介入した情況もあらわれた。 不正な権力を不正な方法で維持し世襲するために、 企業の内外でサムスンが行った醜悪な行動は、必ず断罪されなければならないだろう。

パノルリムは、サムスン電子脳腫瘍被害者のハン・ヘギョンさんとお母さんのキム・シニョさん、 そしてファン・サンギお父さんと共に、 しばしばたびたび李在鎔の法廷を訪れる。 法廷に行くたびに、サムスン社長団に忘れずに抗議も伝えている。

「サムスン職業病を解決してください」
「百人以上が死んだのにいつまで知らないふりするのですか」
「うちのユミを殺しておいて責任も負わないのですか」

嘘と無責任で綴られたサムスン。 会社の内外で違法も不法も厭わなかった李在鎔とサムスンの共犯者たち。 彼らはサムスンのために働いて死んで、病気にかかった労働者たちへの責任を全うするつもりは相変らずないようだ。 李在鎔とサムスンは、自ら変わることができないということを繰り返して見せている。 李在鎔に対してきちんと断罪することが重要だ。 ファン・サンギお父さんがいつも言っていた言葉の通りだ。

「サムスンが処罰を逃れるため、今になって刷新すると言っているが、 本当にサムスンを刷新するのなら、まず人的刷新が先です。 嘘ばかりついてきた人たちをそのままにして、 きちんと刷新できるはずがありません。」

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-08-03 20:47:45 / Last modified on 2017-08-17 18:38:29 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について