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LNJ Logo ヘイト合戦の様相の自民党総裁選(雨宮処凛)
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投稿者: 杉原滋慈

第734回:ヘイト合戦の様相の自民党総裁選〜「〇〇バッシング」という、何もしなくて
も「何かしてる感」が出せる魔法。の巻(雨宮処凛) | マガジン9
https://maga9.jp/251001-2/
2025年10月1日
5月まで、この国には「外国人問題」なんて影も形もなかったのである。少なくとも、選 挙の争点として浮上することはなかったし、政策の優先課題のリストにも載っていなかっ た。それが「日本人ファースト」という言葉で人々の何かのタガがハズれ、参政党が躍進 して「票になる」と思った途端、政治家がこぞって利用し始めた。  このことを、非常に情けない思いで見ている。  なぜなら、それはあらゆる国で起きていることだからだ。  さまざまな国で「外国人排斥」が、国民にガス抜きをさせ、大事なことから目を逸らさ せるツールとなり、支持率をアップさせる「金の鉱脈」になっている。  生活保護バッシングと同じ構図だ。 外国人問題を煽ることも生活保護バッシングも、「自分は何もせずに対象を貶めるだけで 何かやってる感が出せる」サボりのテクニックに過ぎないからだ。その上、支持率も上が るのだからウハウハだ。 ロスジェネ対策は物価高や米不足と並んで6月はじめ頃までは選挙の大きな争点と見られ ており、私もいろんな媒体から取材を受けるなどした。が、参政党の「日本人ファースト 」という言葉が、すべてを蹴散らしてしまった。 雨宮処凛さん×中島岳志さん:なぜ「日本人ファースト」は人々の心を捉えたのか?  2025参院選を振り返る──日本政治の現在地 | マガジン9 https://maga9.jp/251001-1/ 2025年10月1日 ■「ピストルの弾」は、ずっと前から込められていた 雨宮 5月には、「外国人問題」なんてまったく争点に挙がっていなかったと思います。それが いきなり、たった3カ月で政治のトップ問題に躍り出てきて、参政党だけではなく他の政 党も「日本人ファースト」と同じようなことを言い始めた。本来なら、それを諫めるべき 立場であるはずの自民党も「違法外国人ゼロ」などと言い出すし、本当にたがが外れたと いう感じですよね。  こんなに多くの日本人が排外主義的な感覚を内面化していたことにも驚いたし、空気が 急激に一方向に向かうという現象を目の当たりにして、「戦争ってこんなふうに始まるん だろうな」とも思いました。 5月頃までは、「外国人が問題だ」なんて口にするのは躊躇している人が多かったと思い ます。それに免罪符を与えたのが、参政党の「日本人ファースト」だったんじゃないでし ょうか。「日本人を優先すべきだ」「外国人がさまざまなことの元凶だ」という言葉が、 急速に「堂々と言っていいこと」になってしまった気がします。 中島 参政党が何かのきっかけで失速したとしても、また参政党のような、もしかしたらより悪 質な集団が出てくる可能性が高いでしょう。 雨宮 日本では外国人の割合もまだそこまで高くないし、一気にこんな状況になるとは思ってい なかったので、とても驚き、恐ろしいと感じています。
■「リスクと価値」から見る参政党 中島  参院選前、投票先を決めるのに「れいわ新選組か参政党か」で悩んでいる若者がかなり いるという報道を見かけましたが、この二つは実は縦軸の「リスク」、つまりお金の問題 については同じところに位置しているんです。横軸である「価値」の問題にはそれほど関 心がなく、それより毎日の生活が苦しいと考えている人にとっては、れいわと参政党にそ れほど違いがあるように見えなかったのではないかと思います。 雨宮  どちらの政党も新しく、またこの苦しい生活をなんとかしてくれそうだ、ということで すよね。だからそこに「参政党は排外主義で、差別的で」と価値の話をしてもなかなか伝 わらない。すごく難しいなと思います。
■「正しさ」に反発するポピュリズム 中島  「参政党の言っていることは差別だ」とか「憲法草案のここがおかしい」という話をし ても伝わらないのは、「正しさ」への反発みたいなものが起きているからでもあるんじゃ ないかと思います。 ファクトチェックで「これは誤りですよ」「こちらが正しいですよ」と指摘してもまった く届かず、むしろ反発されるだけになってしまいます。 雨宮 ファクトチェックが意味を持たない。参院選前に、「#差別に投票しません」というハッ シュタグが流行ったけれど「そうだね、差別はいけないよね」と思いながら参政党に投票 した人も、かなりいたんじゃないでしょうか。すごく難しいフェーズに入っているなと感 じます。 中島 こうした動きは最近の歴史修正主義の広がりなどにもつながっていると思います。 そうした動きもさらに強まっていくはずで、これもとても深刻な問題だと思います。
■民主主義と「移民」問題 ■解き方を知らない方程式に、世界が挑んでいる
中島 近い将来、日本人も国内では食べられなくなって、海外に「移民」として出稼ぎに行かな くてはならなくなるかもしれません。 どうすれば人を傷つけない安定的なシステムを作っていけるのか、丁寧に調整を重ねてい かなくてはならないんだと思います。  しかし、それをやる前に、生活が苦しい、将来が見えないといった、社会に広がる不満 の「はけ口」に外国人が利用されているのが現状です。それも、本質的にはターゲットは 「誰でもいい」んだと思います。かつては在日コリアンに対するヘイトスピーチが激化し ていたけれど、禁止する法律や条令ができたことでやりにくくなった。そこで今はクルド 人への攻撃が激しくなっているわけです。タイミングが違えば、また別の外国人コミュニ ティが標的になっていたかもしれない。そうやって不満をぶつけるターゲットを常に探さ ずにはいられないほど、日本が貧しくなってきているんだと思います。 雨宮  私は20年くらい貧困問題に関わってきていますが、国はこの問題の解決をもう諦めたん だな、と感じています。政治は貧困や生活困窮の問題に手を付ける気がないとみんなが知 っている、そういう状況が許されてきてしまった。だから外国人という「敵」を見つけて 、それを叩いてガス抜きをする方向に社会が向かっている。「日本人ファースト」という 言葉が、そういう機運を後押ししてしまった気がしています。 中島  そもそも「ファースト」って、特定の人を優遇せよ、ということで、根本的に差別性を はらんだ言葉ですよね。なのに、トランプ米大統領や小池東京知事によって、なんとなく 「問題のない言葉」のように扱われ、その差別性がしっかりと指摘されることがないまま 来てしまった。でも、雨宮さんも以前どこかで書いておられたと思うのですが、その「フ ァースト」の中に自分が入っているとは限りません。次は自分も「ファースト」から排斥 される立場になるかもしれないんですよね。
■「自民党対参政党」の時代が来る? 中島  今、参政党は衆議院に3議席しか持っていないので、すぐに連立政権入りという話には なり得ません。でも、この流れのまま次の衆院選を迎えれば、おそらくほとんどの選挙区 で「自民党対参政党」という構図になるんじゃないでしょうか。 雨宮  そして他の野党は、いないも同然になってしまう……? 中島  既存のリベラル野党には、そういう未来が来るかもしれないことをちゃんと見据えてい ますか、と聞きたいですね。 雨宮  そういう意味では、今回の参院選結果はリベラルにとって、自分たちの「正しさ」を疑 う絶好のチャンスだと思います。「なんで負けたんだろう」とみんな思っているだろうか ら。もしかしたら、自分たちの「正しさ」は、違う立場の人には違和感を抱かせるものだ ったのかも、と疑ってみる。そういう人の立場に一度立って世界を見てみる。そこから始 めるしかないという気がしています。

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