![]() |
高井弘之:日本ナショナリズムにどう対抗し、解体するか | ||||||
Menu
おしらせ
■サブチャンネル ・映画祭報告(7/27) ・レイバーネットTV(9/12) ・あるくラジオ(11/3) ・川柳班(9/27) ・ブッククラブ(10/18) ・シネクラブ(10/11) ・ねりまの会(6/28) ・フィールドワーク(6.1報告) ・三多摩レイバー映画祭(5/25報告) ・夏期合宿(8月23-24日) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第106回(2025/9/15) ●〔週刊 本の発見〕第402回(2025/9/4) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2025/6/12) ●川柳「笑い茸」NO.162(2025/7/25) ●フランス発・グローバルニュースNO.19(2025/8/5) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第100回(2025/6/5) ●「美術館めぐり」第14回(2025/8/25) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・CLP・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信・Tansa・市民活動情報プラットフォーム
|
情報提供 : 高井弘之 参政党など極右勢力が台頭する状況について、ある通信に書いた拙稿です。この問題は、世界の同時代的状況・問題としての視座はじめ、さまざまな角度から捉える必要があると思いますが、ここでは、「日本ナショナリズム」の問題としての歴史的な視座から、不十分ではありますが、簡単なスケッチをしてみました。 日本ナショナリズムにどう対抗し、解体するか ―排外主義に反対するネットワークの形成を!― 【状況の起点は30年前に】 日本の侵略・植民地支配を認め謝罪する1990年代前半の日本の社会・政治のそれまでになかった動きに危機感を募らせた右翼・排外主義勢力は、その後半、歴史認識問題を中心に巻き返しを始めた。その言動は徐々に影響力を持ち始めて社会全体を右傾化させ、歴史教科書の改ざんにも成果を上げていく。 2000年代後半からは、街頭で公然と「朝鮮人を皆殺しにしろ」とまで叫ぶ「在特会」などの新たなヘイト・排外主義団体が登場し、10年代後半には、新興の極右政党が組織され始めた。 22年の参院選で極右政党が議席を獲得し始め、今回の参院選の結果は周知のとおりである。 多くの分析にもあるように、参政党に投票した人の中には、元々は、右翼・排外主義志向を強くは持っていなかった人もいただろう。しかし、そのような人たちも含め、参政党が提示した「排外主義装置」に乗っかったのである。 たとえば、自分の生活が厳しいのは政府の経済・福祉政策のためではなく、「外国人」のせいだ、「日本人ファースト」を行なわずに「外国人」を優遇するからだといった「論法」に共感し、支持したのである。(注1) 30年前、歴史事実を歪曲・捏造する形で始められた排外的ナショナリズム運動は、いまや、個々の生活の苦しさの原因を歪曲・捏造するところにウイングを広げ、生活現場にまで根を下ろしたと言えるだろう。 このような状況に対しては、たとえば、多くの人を不安・苦境に追い込んでいるほんとうの原因を明らかにし、そこから脱し得る政治的展望を提示していく運動が必要である。だが、この小稿では、この30年間の状況展開の駆動力となって来た「日本ナショナリズム」の問題に焦点を当てたい。 【日本ナショナリズムの原理】 参政党の主張の基本には、「日本(人)対外国(人)」という構図があり、彼らは、ナショナリズム・レイシズムに基づく「自他の強固な差別化」によって世界を見、解釈する。 「日本」の政治・経済が悪くなっているのは「外国」勢力のせいであり、食の安全や健康も「日本人」だけのそれを求める。「日本人」でない存在は差別・排除しても構わないというのが彼らの姿勢・立場である。 ところで、「日本人」という集団も、自分が「日本人」であるという意識も、「我われ日本人」という集団意識も、所与の自然的現実ではなく、人為的・歴史的に形成―構成されて来たものである。 それは、150年余り前、この列島の住民を「天皇制日本国家」のもとに統合・組織する形・方法でつくられ始めた。 その近代日本国家を成り立たせ、運営して来た原理である国体―天皇制、植民地主義・レイシズム・帝国主義、侵略的「富国強兵」政策、他のアジアの国々・人びとに対する傲慢な姿勢と排外主義、自国内の「日本人」以外の人びとに対する差別・抑圧体制――本居宣長を教祖的存在とする偏狭な自己中ナショナリズム。 これらは、国家成立直後から開始されたアジアへの侵略・植民地支配の終結点であった80年前の敗戦時に反省―解体させることはできず、新憲法下の戦後日本に継承された。(注2) この間の30年とは、その「継承」の程度をよしとしない日本ナショナリズム勢力が、これら大日本帝国原理とでも呼ぶべきものによって、日本人・日本社会を再組織化してきた時間だったと言える。いま行われている「対中戦争態勢」の構築も、大日本帝国の歴史の軌道の上にあるものだ。 【排外主義に反対するネットワークの形成を!】 ならば、私たちは、この極右・日本ナショナリズム勢力が日本社会を席捲する状況を前に、「日本150年」をその根底から批判・総括する視座と射程を持たなければならない。 この列島もそこに作られている社会も、「日本人」集団の専有物ではない。このことを大前提に、私たちは、列島に住むすべての人びと・集団が対等・平等な関係と権利の中で構成される社会を目指さなければならない。 出自や国籍などに関係なく誰もが平等に尊重され差別されずに生きていける社会、国家ではなく個人の尊厳が保障される社会、軍事ではなく対話・外交・平和が尊重される社会、すべての人の人権が保障され共に生きていける社会――これらを上の「大日本帝国原理―日本ナショナリズム原理」に対峙させながら、同時に、目前の状況を具体的に変革していく方途を探っていかなければならない。 まずは、今回の選挙によって強い危機感を持ち始めた多くの市民・団体・政党がつながり合って、「排外主義に反対する」統一戦線的なネットワークを形成することが急務だと思う。そこで論議し、知恵を出し合い、共に連帯して行動することによってこそ、私たちは差別・排外主義を押し返していく「共同の力」を獲得できるのだと思う。私たちは始めなければならない。 (注1)「日本(国)」ではなく「日本人」ファーストだから、「アメリカ」ファーストよりレイシズムの性格が濃く強い。米国で「白人」ファーストを主張するのと同じである。 (注2)拙著『礼賛される「日本150年」とは、実は、何か―日本ナショナリズムの解体と新たな列島社会の形成に向けて―』を参照されたい。 Created by staff01. Last modified on 2025-09-15 14:28:58 Copyright: Default |