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LNJ Logo 現地レポート : 大阪・関西万博 中国館の建設工事で起きていたこと
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「パパ頑張ったで」誇りを持って働いた

かわすみかずみ

*中国館(Record Chinaより)

「うちは入社したら1年で辞めてもらうんです」。びっくりする言葉だった。中国館の 空調設備に入ったBさんの話はここから始まった。兵庫県でU空調設備を営むBさんは26 歳で起業。「兵庫で1番の空調チームになる」ことを目標に働いてきた。Bさんは中学し か出ていない。それでも社長になれると後輩を育てる。1年程の修行後、ひとり親方とし て一緒に働く仲間になっていく。

「最初は1台のエアコン工事が1万円にしかならず、ほとんどお金は残りませんでした 。でも、一つづつ仕事をこなしていくうちに1台20万円になり、信用も仕事もついてき ました」という。

中国館の工事に関わったのは、一緒に仕事をしたS社から誘われたからだった。S社は万 博で中国館の工事に関わっていた。別ルートからも万博工事の依頼があり、既に3カ国の パビリオンの空調設備を手掛けていたU社は中国館の工事に参加した。

当時の様子が、U社のブログに書かれていた。「『パパ頑張ったで』と言われるような 仕事ができました」という言葉とともに、現場の写真が写っていた。1台1万円の仕事か らここまで来たという感慨がブログから溢れていた。

要領を得ない現場

中国館の工事に入る前の状況は他館と違った。他館では交わされていたグリーンファイ ル(安全確認書類)や施工体系図などなかった。Bさんは「それだけ切迫しているのだな 」と思ったそうだ。

元請けのC社から来た番頭は内装業者で、空調の打ち合わせは覚束なかった。U社の職 人は自らC社の上役と打ち合わせをして工事を進めた。

本来なら1年半かかるところを、2024年10月末から翌年年3月末までの4ヶ月 で工事を終えた。開幕に間に合わせるために夜間も働いた。中国館は規模が大きく、巨大 なスクリーンや独特な照明など、中国側のこだわりもあった。一般の工事では使わない太 い電線を使い、張り巡らせる工事が大変だった。

分電盤の増設を急きょ指示されたり、コンセントの位置を変えるといった工事の変更 は多かったと、Bさんは証言する。 資材についてはC社に相談し、中国側に伝えてもらう二段階方式で時間がかかった。貿 易の関係で資材が届かないこともあった。現場の雰囲気は良かったというが、3月下旬く らいから、怪しい噂が流れてきた。

理解できない言い訳

中国館に関わる他の業者から、未払いに遭っているという声が聞こえてくる。このま までは自分も未払いになると感じたBさんは、大阪府のホームぺージから「市民の声」に 投稿。助けを求めた。府から万博協会の相談窓口を紹介され、問い合わせフォームから相 談したが、数週間後に「受け付けました」と連絡が来ただけだった。

3月24日、S社とともにC社の大阪支社に行くが社長に会えず。電話で催促すると、 「S社に全額払っている。S社に聞いてほしい」と言われた。S社はC社から一億以上の未 払いに遭い、急を要する話になっていた。

4月初旬、中国館でC社の社長に会う。C社は同じことを繰返すだけだ。4月18日、S 社とともにC社の本社に向かう。経理担当者らと入金表を突き合わせた。S社に4000万円 しか払っていなかった。

U社に対する基本工事分は全額支払われたが、追加工事分は未払いのままだ。ひとり親 方40人ほどを抱えるBさんは、支払いはできたが、今後は経営を圧迫する可能性があると いう。

「寄り添わない」万博協会

Bさんは、「C社は話し合いのテーブルにもついていない。出てきて説明してほしい」 と憤る。

「ドバイでは、未払いについては国がすべて払ったし、ロンドンオリンピックではお金の 流れを把握して、未払いがないように監視していたのに、日本はなぜできないのか」とい う。

国家プロジェクトとして参加し、誇りを持って働いた中小建設業者を見殺しにする国、 万博協会、大阪府市の身勝手さ。やりがい搾取とはこのことだ。


Created by staff01. Last modified on 2025-06-19 08:50:34 Copyright: Default

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