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気づかなかったことや自分を掘り下げる機会にもなる本・映画

昨年の振り返りの一押し「本」と「映画」をご紹介してから1年が過ぎた。今年も、さま ざまな事件や事象が起きたが、本も映画をしっかりとそれらを捉えて、私たちに考えを深 める機会を与えてくれた。 最後に堀切さんが「こんなにいい映画あるのに、若者層の料金設定が高すぎるのではない かという意見に、全く同感だった。若者はますますネット配信の小さい画面で見るだろう。 あの大スクリーンで見る醍醐味と感動を忘れてもらいたくないと思う。 この「映画と本で振りかえる…」は、2年前に亡くなった木下昌明さんが、楽しみに構成し ていた番組だった。彼はシネクラブも主宰していた。今年もビデオカメラを構える彼の写 真と共に進めていった。            報告:笠原眞弓                                                ■〈映画と本で振りかえる2022年〉  レイバーネットTV・第178号放送  2022年12月14日                        アーカイブ録画:https://www.youtube.com/watch?v=4Kc4-EL0lS0 構成・司会 : 堀切さとみ   ゲスト:本部門(オンライン参加)志真秀弘(ブッククラブ)・志水博子(元教員)       映画部門(スタジオ参加)永田浩三(学生たちに映像制作も教えている)・                   笠原眞弓(川柳班) 全アンケート結果は、下記に掲載。
http://www.labornetjp.org/news/2022/1214anketo スタジオは、たくさんの映画のチラシが貼られてにぎやかなうえ、机には会員の方から差 し入れの愛媛のみかんが鎮座している。ありがとうございました。 ◆ざっと今年を振り返ると 永田浩三さん「年末に差しかかってて、戦争の足音がヒタヒタと近づいてきている。閣議 決定で何でも決めて、裏付けの税収のことは言わない」。笠原は「安倍や菅すらできなか ったことをやろうとしている。戦争をリアルに知いる人が少なくなっている中、「攻めら れたらどうする」という人たちにどう対応していいか、若い仲間と話し合っている」と。 ◆本 閣議決定 戦争の足音  ブッククラブは2017年に始まり、およそ5年の課題図書の紹介を「週刊 本の発見」と題し て39冊の本(今年は6冊)をレイバーネットのHPに紹介してきた。 志真秀弘さんは、今年のお薦めの1冊14作品から、傾向を分析。これまでは「楽しそうだ なァ」という本があったのに、今回は時代の反映か厳しいものばかりで、次の6つに分け られるという。 戦争、労働、社会、死刑、戦いの軌跡、小説。 これは、今の時代「戦」に正面から向き合っていると思ったという。
◇『戦争よりも本がいい』池内紀/推薦者:ジョニーH 筆者の著書・訳書は250冊を超え、広い分野に広がっている。 志水さんは、文学者がこの様な題材で書くことがいいという。 ◇「第三次世界大戦はもう始まってまっている」エマニュエル・トッド/推薦者:柴田武 男 仰々しいタイトルだが、NATO対ロシアの戦争になっているということ。筆者は「日本は核 武装するべき」と言っているが、それは推薦者同様、お断りしたい。 ◆志真秀弘さんの推薦(14作品のうち) ◇『中学生から知りたいウクライナの事』小山哲・藤原辰史/推薦者:志真秀弘 若い時から、ウクライナのことを知るのが大事。と同時に、プーチンやゼレンスキーを主 語にして語ってはならないという「主語は民衆」という視点に共感。そこから平和の主張 が生まて来る。 ◆志水博子さん推薦 ◇『格差に挑む自治体労働政策』篠田徹・上林陽治/推薦者:白石孝 現状の分析「労働・格差・貧困に関わる運動に示唆を与えている」に共感した。 ◇『ルポ 自殺』渋谷哲也/推薦者:河添誠 推薦者は「生きづらさ」を正面から取り上げたといい、日本の労働組合運動や社会運動が もっともっと正面から取り組まなければならない課題と言っている。日本の労働問題が、 自死する人が出るほど問題を抱えている現実をおもう。
◇『企業のヤスクニ「企業戦死」という生き方」金子毅/土屋トカチ ご本人制作映画『アリ地獄天国』が引用されていることから読んだと。「企業戦死」とい う副題、バブル期の水面下で「過労死・過労自死」が蔓延していった日本社会。その文化 的背景は、日本軍の思想と直結していると。
◇『子どもたちはみんな多様ななかで学びあう』佐々木サミエルズ純子/推薦者:志水博 子 障がい者教育について書かれたもの。周りにほとんどインクルシブ教育(障害の有無にか かわらず、一緒に学ぶ)に関心のある人がいない。現在国連などで、関心がもたれ、日本 の取組み方に対して勧告を受けている。 ◆永田浩三さん推薦の1冊 永田浩三さんの読書量は、半端ではない。その中から本日は、今の時期とても大切な本を 紹介してくださった。 ◇『ヤジと民主主義』北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班/推薦者:永田浩三 安倍さんがあのような形で亡くなり、政治家の警護のありようがどうなっていくのか?警 察の本来の仕事はヤジを保証するためにいる。ヤジは民主主義なのだということが書かれ ているという。ところが今は、その逆になっていないか。 ◆映画では何が見られてきたか
バラエティに富んだ皆さんの一押しが、超特急で読み上げられ、個別の紹介にうつる。 ◇『RRR』/推薦者:ワニワニ インドの植民地支配を批判した『RRR』の予告編が流れる。久しぶりのインド映画は、歌 と踊りで楽しい。しかし内容は、1920年代のイギリスの植民地支配されていることへの抵 抗を描いている。 堀切さんは、早速観に行き、インド人を殺すのに銃の弾1発も惜しんでいる。そんな中での 印度人の躍動感など、迫害をどう描くのかと関心があった。しかもこれは、インドどころ かイギリスでもヒットしたという。 推薦者によると、インド人を人間と思わないイギリス人に対するインド人の闘い。実際に は出会ってないが歴史上の人物を作中です出逢わせる映画で、終映後まさかの拍手が起こ ったとか。 ◇『マイスモールランド』推薦者:柴田武男/河添誠 推薦者は、クルド人難民の生活を通して日本の入管、そして日本社会の問題を描いている とのこと。ドキュメンタリーにすると、出演した人に害が及ぶかもしれなと、かなり忠実 に劇映画にしたという。 笠原はこの映画を、日本人にとっての人権問題だという。若者を主人公に軽くさらっと描 かれているだけに、何時までも心の中に沈殿し、若い人でもいつかまた取りだして考えら れるのではないかとの感想。 ◇『土を喰らう十二ヵ月』推薦者:ジョニーH 予告編の後、永田さんは水上勉の原作と軽井沢の料理を中心とした『精進百選』の本を見 せてくださる。料理の監修は、土井喜明氏がしたという。今年は。食にこだわる映画が多 かったと。 ◇『ザリガニの鳴くところ』推薦者:永田浩三 「秘密はすぐ下のところに埋められているんだよ」ということが通しのテーマ。本は世界 で1500万部読まれたという。DVを受けた沼地に住む女性が1人で生きていく話で、映画は プロデューサーも監督、カメラ、すべて女性だという。小説にない映画のいいところは 彼女のスケッチなどがみられること。それが出版されるようになるのだが、沼地の生き 物の絵と共に彼女の崇高さが表れていたと、映画ならではのよさを語る。 ◇『百姓の百の声』推薦者:笠原眞弓 たくさんの農家が出てきて、さまざまな側面から彼らの取り組みや暮らしが紹介されてい く。そしてこの映画の胆は、最後に登場したお百姓さん。彼は自分が持っている木からは、 倍の収入が得られると分かると、その苗木を無料で分けることにする。この「無料」と いうところが大事なのだ。種子の海外流出をおそれて、自家採種ができない法律を作り、 儲けようとする姑息な商社やそのお先棒をかつぐ役人・政治家(米国の差金かもしれない が)と根本的に違うのだ。 ◇『すずめの戸締り』推薦者:永田浩三 このアニメ映画も地方の食とつながりがある。神戸の震災、100年前の東京の震災、そし て福島と旅をしていくが、その途中漁村の生業や愛媛のみかん農家などが出て来る。 テーマは、封印していた記憶の扉を開けることで次の一歩が踏み出せるというもの。込み 入ったストーリーで、優れたインスピレーションに満ちた作品。親子や高校生など、どん な年代の人にも訴えるものがあるという。 笠原も観たが、最後の章でそれまでの様々な事象が立体的に結びつき、納得できた。 ◆社会派の劇映画が増えたのではないか ◇『千夜、一夜』『ある男』推薦者:永田浩三 『千夜、一夜』は、夫の失踪をテーマにしている。失踪して30年になる夫を待つ人と失踪 2年で、離婚したい人が繰り広げる物語。日本で、年間どれだけの人が失踪しているのか と考えさせられたとか。 『ある男』では、夫が亡くなったが、戸籍の人物と違うことが分かる。その人物の特定を 頼まれた弁護士も、複雑な気持ちになっていく。 木は百年を生きるが、前半は森の中で、後半は家具などになって”名前を変えて”生きる。 人間だって前半と後半、違う人生を送ってもいいじゃないか。人間の根本的な孤独や負 の履歴を背負ってどのように生きていくかにもつながる。 ◇『夜明けまでバス停で』推薦者:永田浩三 これは、現実の事件をモチーフにしている高橋伴明さんの意欲作。 ◇『原発を止めた裁判長―そして原発をとめる農家たち』 樋口英明裁判長は、合計4基の原発を停めた。論理は簡単で1、震度6や7の地震が来ない という保証はないこと。2、原発は構造が複雑なので住宅より地震に弱いこと。その2点に おいて稼働出来ないことは明白であると指摘している。後半は、二本松有機農業研究会の メンバーが、原発が悪いと言いながら、何もしてこなかったと反省し、太陽光発電を始め た。ここまでは、笠原も関わる国際有機農業映画祭で短い動画を作った。これはその続き のようなもので、うれしかった。 続けて数点の外せない映画を紹介した。『愛国と教育』『私の話 部落のはなし』や中村 哲さんの『荒野に希望の灯をともす』(24日のレイバーフェスタで上映)にも触れた。 これから話題になると思われるのは『愛国の告白―沈黙を破るパート2』。これはイスラ エルの兵士たちが、自分たちが日常的にパレスチナ人の人権を奪っていることに気づき運 動を始める。国内では、反発にあうが、それでも続けていくというもの。 さらに『オレの記念日』を勧める。この事件を含め冤罪事件はたくさんあり、支援者と共 に何年もかかって無罪を勝ち取っていることが、パンフレットに記されている。 ◆最後に志水さんと堀切さんの一本を挙げる ◇『教育と愛国』推薦者:志水博子 教育関係者しか見ないかと思ったら、一般の人に関心があってうれしい誤算と。 ◇『プラン75』推薦者:堀切さとみ 1本に絞るのは難しいと言いつつ、上記を推薦。是枝監督が募集したオムニパスの中の1本。 10年後の高齢化社会を想定し、75歳を過ぎたら「自死」する権利を与えるというもので、 実際に死を志願する人がいることを想定したもの。若い人がかなり見ていて、彼らが自 分に重ねているのではないか。こんな社会でいいのかと思ったということだ。 ◆5ミニッツ  川柳コーナー    ホンモノの映画に出会う旅   乱鬼龍   本屋減り焚書坑儒ジワジワと  蘭綺麗 ジョニーHの替え歌コーナー   マリノの「one love」の替え歌。ところどころ漢字の歌詞も混じっていた。 今年の放送は終わる。次回は来年2月22日です。ご期待ください。

*準備風景 この日は映画取材のカメラも入った。

Created by staff01. Last modified on 2022-12-20 12:13:39 Copyright: Default

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