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『死刑について』読書会報告 : 「憎しみ」の共同体から「優しさ」の共同体へ | ||||||
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●第38回読書会:平野啓一郎『死刑について』(10/1)報告〜「憎しみ」の共同体から「優しさ」の共同体へ 困難な道だがともに歩みたい
本書は、2019年12月に大阪弁護士会が、2021年10月に日本弁護士連合会が主催し た講演会・シンポジウムでの著者の講演をもとに加筆・再構成したもの。それだ けにとても読みやすく、よどみなく一気に読み終えられる本です。 とはいえ、内容は深く、真摯な思考がめぐらされていて、ずしりと重い読後感が 残ります。読書会冒頭のひと言感想では、「死刑存置派だった平野さんが実体験 を踏まえて死刑廃止論に転換していった過程が自然で、好感が持てた」「なぜ死 刑がなくならないのかを考えることで日本という国の姿も浮き彫りになる、とい う問題提起を受けとめたい」「戦後の人権教育の失敗が死刑支持につながってい るとの指摘は大いに賛成」などの発言がありました。 議論は続きます。「暴力は相手を力でねじ伏せて自分の言うことを通してしま う。戦争と死刑とは密接に関係している。人間にとって重たい課題」「なぜ人を 殺してはいけないのか。改悛しない殺人犯であっても死刑にしてはいけない、と 言えるのか。平野さんの答えは『基本的人権を保障した憲法があるから』。これ はすごく大事なこと」「加害者の立場になって考えるというのは、ブレイディみ かこさんの“他者の靴を履く”“エンパシー”と通じる」「たとえ憲法がなくても、 人が生きること、どんな命も大切にする。それはこの社会が優しいか優しくない かの分かれ目」… 「命のかけがえのなさを思う。それは加害者も同じ。人間の尊厳を考えると、殺 してしまったらおしまい、二度とない」という発言に関連して、チャットで、 「個人の尊重、生命への権利」を定めた日本国憲法13条は「公共の福祉に反しな い限り」との条件付きなのに対し、大韓民国憲法やスイス連邦基本法の同様の条 文には一切条件が付いていない、という重要な指摘も寄せられました。 どのようにすれば死刑をめぐって理性的な議論を深め、死刑廃止へと近づいてい けるのか。死刑に関する世界の趨勢などさまざまなデータをきちんと伝えるこ と、死刑執行の実態とくに絞首刑の残虐さを知らせること(大阪弁護士会制作の ビデオ「絞首刑を考える」がYouTubeで見られます:https://www.youtube.com /watch?v=wD4x8LcmKy8 )が必要でしょう。被害者のケア、被害者の苦しみに徹 底して寄り添うこと、被害者を救済する制度づくりも不可欠です。被害者遺族と 死刑囚が直接面と向かって話をする場を設けたらどうか、遺族にとって「ゆる し」のきっかけになるかもしれない、という提案もありました。 報告者の特権として、この本で私が一番感動した個所を引用させてください。 70〜71ページ、あなたが殺されて、あの世から残された家族を見守っているとし たら、というところです。家族の周りにただ犯人への「憎しみ」にだけ共感する 人たちが集まっているのが見えたとして、それは本当に喜ばしいことだろうか、 と平野さんは問い、こう自答します。−−せっかく一度しかない人生なのだか ら、もっと楽しいこと、心安らぐこと、美しいものに触れること、何もかも忘れ て好きな人と一緒にいること、……そんな時間の使い方をしてほしいとは願わない でしょうか? そして、そのための手助けをしてくれる人たちが集まって、優し く気づかってくれるとするなら、それは憎しみの連帯よりも望ましいことではな いでしょうか。−− 朝日新聞や朝日新聞デジタルに死刑制度に関する記事が載り、NNNドキュメン ト'22で「飯塚事件」のことが放送されたこともあり、タイムリーな読書会とな りました。(浅井健治) *次回は12月3日(土)14時〜を予定しています。取り上げる本は未定です。 Created by staff01. Last modified on 2022-10-06 17:16:26 Copyright: Default |