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解雇家族の苦難と希望〜『グッバイマイヒーロー』レイバー映画祭で初公開

 2009年大不況のなか、韓国・李明博政権は大企業を優遇し、労働者民衆への抑圧・搾取・失業を激化させていた。双龍(サンヨン)自動車では、2600人の大量整理解雇の嵐が吹き荒れた。これに対して組合(金属労組双龍自動車支部)は平沢工場を占拠し無期限ストに突入、76日間の死闘をたたかった。しかし特攻警察隊の弾圧でストは解除され、労組指導部は投獄された。その後、組合は復職に向けたたたかいを続ける。国会議員立候補闘争、裁判闘争(最高裁で敗訴)、煙突に昇っての籠城闘争などを展開する。そしてついに2015年12月に労使合意がなされ一部復職を実現した。サンヨン争議は7年に及ぶ壮絶なたたかいで、自死を含め約30人の労働者の犠牲者が出た。

 『グッバイ・マイヒーロー』はサンヨン自動車争議を描いているが、労使の激突シーンはほとんどない。出てくるのは、解雇家族の家庭や学校の生活だ。ドラマのようなつくりで、それがこの映画の魅力である。主人公は、組合リーダー・キムジュンウン(写真右)の長男ヒョヌ(左)。カメラは9歳から16歳になるまでヒョヌの姿を密着して追っている。父親はいつも「組合活動」ばかりだった。そして占拠ストライキを行ったことで1年間、投獄された。

 労働運動にまったく関心がなくスマホゲームばかりしていたヒョヌだが、父親の背中を見ているなかで、徐々に変わっていく。中学入学で父の職業欄を書くところがあったが、解雇者で失業者で闘争者の父のことを書けずに悩むシーンは印象的だ。

 ヒョヌが学校授業で検察と刑務所を見学するシーンがある。案内人は「検察は正義のために頑張っている。刑務所は悪い人が入るところ」と説明される。ヒョヌも以前は「刑務所は泥棒や人殺しが行くところ」と思っていた。しかしもう違っていた。「本当に悪いことをした人は入らず、正しいことをしたのに入れられる。収監者は悪い人ばかりではない」と。

 しかし父の闘争にも付いていけない。「父は道徳的には正しいが、会社と敵対するのはよくない。会社に言われたとおりにするのがいいと思う」と。サンケン争議に対して世間は冷たかった。煙突籠城に対しては「バカな奴らだ。煙突の上で凍えて死ね!」とSNSで悪罵が投げつけられる。そんな状況に囲まれ、争議家族の一人として、ヒョヌは揉まれて生きてきた。映画はそれを余すところなく描いている。そして父は、7年間たたかい抜き復職する。復職初日、工場の門に入っていくところで映画は終わる。ヒョヌがそこで感じたものは・・。


*父親のキムジュンウンさん(右)にインタビューする監督のハンヨンヒさん(左)と

 国や大企業の一方的都合で行われる整理解雇。日本でも23年にわたった「国鉄1047人解雇争議」やいまなお続く「JAL争議」がある。理不尽に解雇された人たちの思いは共通している。労働法があっても労働者の権利が簡単に踏みにじられる時代。家族にまで強いられる苦難と犠牲。『グッバイマイヒーロー』は、こうしたたたかう労働者が置かれた普遍的な問題を、子どもの眼からじっくり描いている。希望も含めて。(M)

*韓国 2017年公開・ハンヨンヒ監督・110分・日本語字幕=レイバーネット国際部。7月31日(土)レイバー映画祭の午前の部で日本初公開。ぜひご覧ください。オンライン視聴もできます。詳細は次のページから。 〔映画祭詳細ページ〕


Created by staff01. Last modified on 2021-07-27 13:40:58 Copyright: Default

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