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LNJ Logo 志水博子:チャレンジテストあって教育なし
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大阪の志水博子です

少々長いですが、大阪の公教育にとって極めて深刻な問題です。お読みいただければうれ
しいです。

(全国学力テストと大阪のチャレンジテスト)
 2007年、第1次安倍政権下で復活した全国学力・学習状況調査(以下、全国学力テスト) により、「学力」はテストの点数に収斂して捉えられ、翌年2008年当時大阪府知事であっ た橋下徹氏が全国学力テストの市町村別成績を公表したことにより、さらに競争に拍車が かかった。民主党政権下では悉皆調査から抽出に変わったが、第2次安倍政権下の2013年 には再び悉皆調査となった。 本来は行政調査であるはずの全国学力テストが、まるで点数競争合戦の様相を帯びるよう になった背景には、安倍自民党政権と大阪維新の会の施策があった。 2015年大阪維新の会は学力テスト結果を高校入試への使用を決定したが、さすがに文部科 学省の待ったがかかった。1年限定の実施の後、大阪府の首長が主導する形で始まったの が大阪府中学生統一テスト「チャレンジテスト」である。最初から、本来教員(中学)が 評価権を持つ内申(調査書)に行政が介入する目的で制度化されたわけである。 表向きには学力向上が挙げられているが、真の目的は、統一テストの点数により中学を格 付けし、5段階絶対評価の配分率を事実上決定すると言う、他には例を見ないものである 。当然のことながら、地域の経済格差がそのまま中学の格付けに表れる。 本年、コロナ禍の影響により、実施以来初めて中3チャレンジテストが中止となった。そ れなら、他の都道府県と同じく中学(教員)に評価権が戻ったかと言うと、何と大阪府教 育委員会は、首長に忖度してか、何が何でも中学の格付けを行うようである。なんと1年 以上前の中2チャレンジテストを利用して各中学ごとの内申(調査書)5段階の配分率を決 定すると、先日の6・19大阪府教育委員会で決定した。 (はじめに) 大阪府教育委員会が、なぜ「チャレンジテスト」を実施するのか?今回のことでよくわか った。結局、生徒を利用し中学をランク付けし、入試選抜においてより“点数の取れる” 生徒を合格させるためである。こうやって公立高校復権を図り公私の競争をより激化させ るためであろう。 (代替手段) 6月19日府教育委員会が決定した、今年度中3チャレンジテスト中止に伴う「調査書評定の 確認方法」に納得できない。いや納得できないと言うより、ここには府教育委員会が生徒 をどのように捉えているかが明確に見て取れる。言葉は悪いが、学校をランク付けするた めのモルモットだ。 (「確認」は欺瞞) まず、明確にさせておこう!「確認方法」とあるが欺瞞である。大阪の中学教員なら誰で もわかっていることだが、これは「確認」などではない、事実上の教育委員会からの「指 示・強制」である。 どういうことかというと、「中2チャレンジテスト(5教科)の結果と府全体の評定平均によ り各校の 『評定平均の目安』を求め」とあるが、これは誰が計算しても“数字”(デー タ)として出てくる。例えば、A中学は3.45、B中学は4.32というように。それに±0.5加 えたものを「評定平均の範囲」とすると。これも数字として出て来る。問題は最後のとこ ろだ。「府教育委員会は、各中学校の調査書評定の平均値が「評定平均の範囲」に 収ま っていることを確認する。」とある。 (はじめに「評定平均の範囲」ありき) これでは、まるで各中学各教科担当の先生が絶対評価で個々人の生徒に評定をつけ、その 平均値が、上記で算出した「評定平均の範囲」の収まっているかを「確認」するかのよう に読めるが、実際にそうしている中学はおそらく皆無であろう。なぜならその方法では、 上手く「評定平均の範囲」に収まるまで何度も調整することが必要だからである。 では、実際はどのように3年生の評定はつくのか。最初から「評定平均の範囲」に収まる よう、先生たちが個々人の生徒の評定をつけるわけである。 今回の提案にあたって、資料としてあがっているのは、《 中2チャレンジテストの結果を 活用することの検証 》のみである。そこには「過去3年間のデータを分析したところ、中 2チャレンジテストの結果から算出した中3の「評定平均の目安」±0.5 を各校の「評定平 均の範囲」とした場合、98.4%の学校が範囲内におさまることがわかった。」とある。つ まりデータとして中3チャレンジテストを実施した場合にかなり近い数字が得られると言 うことだ。データ的にである。 (データではなく生身の生徒を見よ) しかし、データ的に対応できる数字が得られた云々を言う前に、当事者である中学生、そ して中学校に了承を得たのか、ということが重要である。しかしその点については一言も 説明はない。1年以上前に実施した、しかもその時には中3チャレンジテストの「評定平均 の目安」利用することなど、当然のことながら一切書かれていない。そもそも現行のチャ レンジテスト制度において、中1・2と中3チャレンジテストは明らかに性格が違う。中2チ ャレンジテストはたった1回のテストの点数により、学校(先生)がつけた個人の評定を 修正すると言うものだ。これは多方面からの批判により2019年度で見直しが決まった。こ の“個人戦”と言われる中2チャレンジテストで評価を下げられた生徒もいる。生徒が受 けたテスト結果(データ)を当初に説明した目的外使用するなら、当然当事者である生徒 の了解が必要である。 (契約として成立しないはず) 今回のことは喩えて言うなら、契約を交わすにあたって事故があり当初予定していた契約 は不成立となった。それならば1年前に交わした同じような別契約があるからそれをもっ て契約成立とみなそうと言うものである。契約の前提も中身も全く無視である。こんな非 常識が通るわけがない。 (生徒はモルモット?!) これは、府教育委員会が、テストとはいえ実際の教育において、子どもを主体的には捉え ていないことの表れである。言葉は過ぎるかもしれないが、府教育委員会は、入試に際し て学校(教員)のつける「評定」は信用できないとし、生徒を利用して学校のランク付を 行い、それに合わせて5段階の評定の配分率を各校ごとに決定したものである。ある人は こう言った、学校(教員)がつける評定が信用できないからと言ってかりにも生徒を利用 するとは何事だ、と。 (データが大事なら・・) 府教育委員会の理屈に合わせれば、それなら中3チャレンジテストなど、最初から実施し なくてよいことになる。データ的に過去のテストで対応できると言うなら。 (府教育委員会の姿勢に疑問) 長々と書いてきたが、こう言った、生身の生徒の学力や姿を見ようともせず終始データだ けで生徒の未来がかかっている高校入試の内申を学校をランク付けすることによって調整 しようとする府教育委員会の姿勢を問題にしたいわけである。 (チャレンジテストは廃止あるのみ) 今回のことで、チャレンジテスト制度は、府教育委員会が生徒の学力向上を掲げながら、 その実、学校のランク付けにこそ目的であることがよくわかった。このような制度は廃止 しかない。

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