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ジャーナリストの言葉が胸に沁みたシンポジウム〜「貧困ジャーナリズム大賞」授賞式

白石孝(反貧困ネットワーク世話人)

 今年で13回目となる「貧困ジャーナリズム大賞」の授賞式とシンポジウムが、11月26日夜 、文京区民センターで行われた。大賞は、沖縄タイムスの篠原知恵、又吉嘉例、嘉数よし の、勝浦大輔記者による長期連載「『独り』をつないで−ひきこもりの像−」とした。

 「貧困ジャーナリズム特別賞」は、あらいぴろよさんのコミック「虐待父がようやく死 んだ」と映画監督隅田靖の映画「子どもたちをよろしく」。「貧困ジャーナリズム賞」は 10作で以下のとおり。

 中国新聞の栾暁雨(らん・しょうう)、林淳一郎「この働き方大丈夫?」、ドキュメン タリーコレクティブDocuMeme(ドキュミーム)の松井至、内山直樹、久保田徹、平野まゆ 、中川あゆみの NHKBS1スペシャル「東京リトルネロ」など。小原美和(NHKプロデューサー)、後藤秀典 (ディレクター)、長塚洋(ディレクター)のNHKテレビ番組「分断の果てに“原発事故 避難者”は問いかける」、NHK青山浩平のETV特集「調査ドキュメント〜外国人技能実習制 度を追う〜」、毎日新聞 上東麻子、塩田彩、宇多川はるかの連載「やまゆり園事件は終 わったか」、神奈川新聞取材班(佐藤奇平 田中大樹 高田俊吾 成田洋樹 石川泰大 川島秀宜 山本昭子)の「やまゆり園事件」(幻 冬舎)などを中心とした報道について。テレビ新潟報道部加藤頌子、捧美和子、芝至、須 山司の「桜SOS 〜フードバンクと令和の貧困〜」、朝日新聞白石昌幸、山田佳奈の「内密 出産 国は動かず」、 藤田和恵の「『コロナで失業』40歳男性はなぜ派遣を選ぶのか」(東洋経済オンライン) 、東京新聞 中村真暁の「足立区生活保護とりやめ問題」。

 今回は、自薦他薦合わせて相当数の選考対象作からこの13作を選んだ。大賞についての み選考理由を紹介する。

 内閣府の調べでは、わが国における15歳から64歳までの「ひきこもり」の人数は115万400 0人と推計されている。ひきこもりが長期化・高齢化する中で、80代の親が50代の子ども の面倒を見て生活困窮に陥る「8050問題」は深刻な社会問題となってきている。しかしな がら、ひきこもりは本人の努力不足や甘えの問題、親のしつけの問題とする「自己責任」 「家族の責任」を問う風潮が強いため、本人や家族の多くは社会の中でひっそりと身を潜 めて暮らしているのが現状である。また、これまで国や自治体もひきこもりの問題を重要 な社会問題として直視してこなかった。 沖縄タイムス社の本報道は、長期間にわたる取材の中で本人や家族、支援者らとの信頼関 係を築きながら、口をつぐみがちな本人や家族の声なき声を拾い上げ、これまで分かりづ らかった本人や家族が直面する厳しい現実と苦悩を「当事者の目線」で伝える報道である 。本報道が、同じような問題を抱えて悩んでいる全国のひきこもり当事者や家族を大いに 励ます報道になったことは想像に難くない。また、本報道をきっかけに、官民連携した「 ひきこもり家族会」の発足や自治体においてひきこもり支援体制を強化する動きが出てき ていることは、マスコミ報道の重要性と役割を改めて再確認させるものである。

 会場には受賞者を含めおよそ70人が来場、表彰式に続くシンポジウムに聴き入った。「 有名な賞よりこの賞をいただけることが何よりも嬉しく、励みになる」「報道でこうい う賞をいただくのは複雑な思い。いくら頑張って報道しても改善になっていないからだ。 副賞金額ゼロが救い」「どの取材をしても当事者以外は得している社会が見えてくる」な どジャーナリストの言葉が胸に沁みる、シンポジウムだった。

 なお、あらいぴろよさんからは欠席のメッセージが寄せられ、中国新聞のお二人はオン ラインで参加された。


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