「生きる権利」に貫かれたレイバーフェスタ2019 | |||||||
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「生きる権利」に貫かれたレイバーフェスタ2019堀切さとみ*『東京干潟』監督の村上浩康さん(右) まず、多摩川の河川敷で捨て猫と暮らすおじいさんのドキュメンタリー『東京干潟』は圧巻だった。「なぜ猫の世話をするのか」という質問に、おじいさんは「しょうがないじゃん、生きる権利もってるんだもん、コイツらも」という。ここで泣けた。 捨てられた猫たちを世話するため、おじいさんはシジミを採って餌代に代え、その猫たちによっておじいさんは生きている。人は何のために生きるのか。チラシに「私たちだって生きる権利があるんだ」と書いてあったけど、今回のフェスタはこのテーマに貫かれていたと思う。 ふつうに生きることがとても困難な社会。ちょっとしたつまづきで、人生カンタンに転落してしまう。国が支えてくれることはほとんどなくて(今年の台風は、まさにそうだった)、人々の善意や、同じ志を持つ者どおしが助け合うこと、勇気を出して声を上げる人の登場によって、何とか保たれている。 音楽もよかった。「世界の闘いの歌」そのものだった。フィリピンの派遣労働者アリソンさん(写真上)が歌う「わが祖国」をはじめ、すべての出演者から、苦しい現実や力を貸してくれる仲間への感謝が伝わって、心がふるえた。 メトロコマースの寸劇は、ますます磨きがかかっていた。映画『メトロレディーブルース』(2013年)で非正規(契約社員B)の置かれた理不尽さを知ったのだが、彼女たちは誰かに伝えてもらうだけで満足するのではなく、自分たち自身で表現してしまうからすごい。労働者はアジテーションだけでなく、芝居でも歌舞伎でも音楽でもなんでもいいから伝える手段を磨くことが武器になると思った。メトロの四人、素晴らしいです。 関西生コンの映画。オリンピック国立競技場建設で過労死した労働者のことを伝えていた。一か月の残業は190時間だという(私の労働時間以上の残業時間だ!)。人間らしく生きるための文化活動をする時間は皆無だっただろう。『東京干潟』のおじいさんは竹中工務店の労働者で、戦後の高度経済成長を支えたが、映画の中で「建てた後が問題だ」「もう見たくない」と語っていた。1964年の東京五輪と2020五輪を比べてみれば、この国の退廃が浮き彫りになる。戦争体験を語る人と同様に、戦後の高度経済成長を支えた人たちの言葉も、ますます貴重なものになってくるだろう。 『がんを育てた男・その後』をみて、40代で亡くなったジャーナリスト、千葉敦子の『よく死ぬことはよく生きることだ』を思い出した。山口正紀さん(写真上)もジャーナリスト、異色の読売新聞記者だった。副作用のつらさを訴えても「我慢しろ」といわれ、患者と向き合う医者を探す。がん患者の立場からも、社会を変えるのは自分なのだと身をもって教えてくれる。 三分ビデオは冒頭作品から「生きる権利」がテーマだった。佐野サービスエリアのスト、若い労働者が頑張っている。ダブル受賞した私の作品『帰れる場所』は、来年の「復興五輪」がどれだけの人たちを切り捨てるのかを知ってほしくて作った。日本はここまで壊れてしまったけれど、声をあげる人と仲間がいること、それが希望だ。 Created by staff01. Last modified on 2019-12-24 11:06:13 Copyright: Default |