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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(4月11日)/自己反省なしの都教委からのメッセージ
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●根津公子の都教委傍聴記(2019年4月11日)

自己反省なしの都教委からのメッセージ

 今日の公開議題は議案「東京都教育委員会から生徒と教員へのメッセージについて」、報告が「来年度使用の都立高校用教科書の採択方針について」。非公開議題は議案「教員の懲戒処分について」(停職・免職事案)が2件、報告も「教員の懲戒処分について」(戒告・減給)。北村教育委員が欠席。

 議案「東京都教育委員会から生徒と教員へのメッセージについて」を報告します。
 メッセージを出す目的は、生徒に対しては「学校生活を送る上で生じる様々な感情と上手に付き合うことの大切さを伝えるとともに、悩んだときには身近な大人に相談するよう促す」、教員に対しては「日頃の教育活動に感謝して激励するとともに、課題の解決に向けた取組をともに行っていくことを伝える」のだという。

メッセージは次のようにいう。
◆生徒の皆さんへ
○新学期が始まりました。皆さんは、今、学校生活を楽しんでいますか。保護者の方や学校の先生たちは、皆さんが楽しく充実した学校生活を送ってほしいと願っています。
○充実した学校生活を送るためには、友人や先生などと心を通わせて、良好な人間関係を普段から築くとともに、学校の集団生活における決まりや社会のルールを守ることが大切です。
○しかし、学校生活を送る上で、困ったことや納得できないことが起きた時などは、不安や不満、怒りなどの感情が湧くことがあるかもしれません。皆さんにとって、こうした感情と上手に付き合っていくことも重要です。
○そして、自分たちだけでは解決できないと思った時には、まず、保護者の方や先生など身近な大人に相談してみましょう。もし、大人への相談が難しいと感じたら、東京都教育相談センターなどの相談機関を利用することができます。また、LINEで気軽に相談できる「相談ホットLINE@東京」という方法もあります。これらの相談窓口は皆さんを全力でサポートしてくれます。
○ところで、皆さんがよく使うSNSは便利な反面、軽い気持ちや何気ない言葉などの書き込みによって人を傷つけることがあります。また、写真や動画等をSNS上に一度流出させると完全に消すことはできなくなります。こうしたSNSの危険性を正しく理解してください。
○皆さんが夢と希望を胸に、未来に向かって羽ばたいていけるよう、保護者の方や学校の先生、地域の皆さんと一緒に、東京都教育委員会は心から応援しています。
平成31年4月11日 東京都教育委員会

◆子供たちの健やかな成長を願って 〜教員の皆さんへ〜

○先生方におかれましては、全ての児童・生徒が充実した学校生活を送れるよう、日頃からご尽力いただき、ありがとうございます。 ○さて、児童・生徒への指導に当たっては、日頃から個別の言葉掛けなどにより一人一人の理解を深め、教員としての信頼に基づく良好な人間関係を構築することが大変重要です。
○そして、学校の集団生活における決まりや、社会のルールを守る意味などについて、児童・生徒が十分に理解し、日常の行動として実践できるよう、丁寧かつ継続的に指導していくことが必要です。
○また、児童・生徒への指導や外部への対応に苦慮するケースもあることから、担当教員を孤立させないよう、学校は複数の教員が協力して指導に当たることを基本とした校内体制をしっかり定着させる必要があります。こうした組織的な取組を通じて、体罰を絶対に許さない学校風土を一層強固なものにすることにも努めていただきたいと思います。
○東京都教育委員会は、教員の皆さんがやりがいをもって日々の仕事ができるよう、今後も学校訪問等を通して皆さんの仕事の実情や日々の努力を理解、共有するとともに、皆さんが抱えている様々な課題や悩みなどの解決に向けた具体的な取組を全力で行っていきます。
平成31年4月11日 東京都教育委員会

 生徒へのメッセージは都立学校の生徒に発出する。また、区市町村立中学校では校内掲示するよう、各地教委に依頼する。教員へのメッセージは、都立学校の全教員にメールで発出する。また、区市町村立学校の全教員に配布するよう各地教委に依頼するとのこと。

 この提案に対して教育委員からは、「掲示だけではなく、全ての生徒に伝わるようにしてほしい」などの補強意見があっただけで問題点の指摘はなく、議案は承認された。こんな内容でどうして教育委員たちは承認してしまうのか、と思う。

問題点を挙げると—―。
1.両メッセージは、都教委の存在をアピールするためのもの。

2.「生徒の皆さんへ」では、都教委が良しとする生徒像そのままに、決まりやルールを守ること、自分の感情をコントロールすることが大事と説く。決まりやルールを論議し見直すことが必要となっても、それにブレーキをかけることになりはしまいか。一人が皆と異なる捉え方や判断をし、納得できないことが起きたなら、皆で話し合いをすることこそが大事なのに、それを否定する。個性を認めず、「規律と秩序維持」を最優先する、都教委の道徳心を刷り込むものだ。

3.「教員の皆さんへ」では、都教委がすべき教員の過重労働軽減については触れないまま、したがって、教員が子どもと自由に過ごす時間的保証をしないままに、「児童・生徒への指導に当たっては…」と説き、職務職階級制賃金及び人事考課制度で教員を競わせ、協働を奪っておきながら、「複数の教員が協力して」と説く。 教員が子どもと自由に過ごす時間があれば、教員はいじめに気づくし、相談にも乗れることが、教育委員にはなぜわからないのか。「複数の教員が協力して」の前に必要なのは、教員たちが論議し学び合える場である職員会議を復活させることだ(2004年から都教委は職員会議を校長の伝達機関とし、教員の発言を禁止した)。 「学校訪問等を通して」というのも、これまでの都教委の学校訪問から推察すれば、学校を監視し、管理支配を強めるということではないかと疑念を持つ。

4.区市町村中学校では、生徒向けメッセージを校内に掲示するという。「それでは、読まない生徒もいるかもしれない。全ての生徒に伝わるようにしてほしい」との教育委員からの発言に対して指導部長は、「16日に全中学校の校長を集めるので、そこで依頼する」とのこと。「東京都教育委員会」名の入った掲示は、都教委の威厳を示そうとするものか。

 ここに書かれているのは、人が日々を丁寧に生きていけばみんな、自分で力をつけることができることばかり。教育関係者が訴える事柄ではない。自己反省のかけらもない両メッセージに、恥ずかしく、怒りが沸き上がる。もっと教育界で筋を通すべきことがあるはずだ。教育について真剣に考えてほしいと思う。


Created by staff01. Last modified on 2019-04-12 22:12:17 Copyright: Default

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