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LNJ Logo 木下昌明の映画批評 : 崔承浩(チェ・スンホ)監督『自白』
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●木下昌明の映画の部屋 第247回

北朝鮮のスパイねつ造事件を暴く力作〜崔承浩(チェ・スンホ)監督『自白』

 政治悪に立ち向かう人々を描く韓国映画から目が離せない。なかでも今度、劇場公開のチェ・スンホ監督の『共犯者たち』(2017年)と『スパイネーション/自白』(16年)の2本のドキュメンタリーは強烈だ。いずれも時の権力者の牙城を突き崩していくところがすごい。

 チェ・スンホとは何者か? 彼は韓国のマイケル・ムーアといった観がある。腰は低いものの、どんな権力者だろうとズケズケと質問し、たじろぐ相手を追いかける。

 彼はMBC(公営放送)の調査報道部にいて、日ごろから足でニュースを追いかけていた。その彼が李明博(イ・ミョンバク)政権下で不当にも大勢の記者とともに解雇される。これに怒った彼は有志と「ニュース打破」という独立メディアを立ち上げ、そこを拠点に政治の不正腐敗を暴いていく。その一本が『共犯者たち』だが、これについては自主上映の折、本誌6月10日号で紹介した(本欄では242回に載っています)。ここでは『自白』について紹介、批評したい。

 実は、韓国で起きた2016年のキャンドルデモによる保守政権からの転換には、この『自白』もまた影響していた。大統領の直属の情報機関である国家情報院(元KCIA)は、大統領の手となり足となっていたが、その権力の基盤を突き崩したのがこの映画だったからである。

 映画は、北朝鮮のスパイねつ造事件に疑問を抱いたチェ・スンホ監督が、脱北した兄姉で、兄をスパイと自白した妹から話を聴く場面からはじまる。妹はあの手この手で虚偽の陳述をさせられたと訴える。そこからチェらの調査取材が始まるが、それはまるでサスペンスミステリーを見ているようだ。

 そして、スパイのデッチあげが歴史的なものだったと暴いていく。それは南と北の分断支配をより強固にする手段だった。

――ドキュメンタリー映画は、ドラマ以上に劇的であり、世界は変わることを教えてくれる。

(『サンデー毎日』2018年12月16日号)

※東京・ポレポレ東中野にて現在2作品同時公開中。全国順次公開

〔追記〕チェ・スンホらのたたかいは、ドキュメンタリーの制作と、メディア媒体「ニュース打破」の二つが柱となっていることで、大きな力を発揮している。


Created by staff01. Last modified on 2018-12-07 16:57:21 Copyright: Default

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