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理不尽に虐げられる女性たち〜パキスタン女性監督作品『娘よ』

 部屋の外に、楽しそうな少女ザイナブとお母さんアララッキの声が漏れている。婚礼衣装を着ている。外ではイライラした男性たちがいる。しびれを切らした父親が開かないドアを蹴破ると……。

 この婚礼は、部族間の長年の争いを収めるために、10歳の娘を相手の求めに応じて高齢の部族長に差しだすためのものだった。互いに面子をつぶされた二組の部族によって、追跡された二人は、危ういところをトラックに強引に乗り込み、逃げる。もともと人がいいのか、トラックの運転手ソハイルは乗りかけた船と、危ない橋を渡ることにする。

 パキスタンで10年前に実際に起き事件をヒントにした、パキスタン女性、アフィア・ナサニエルの原作・監督による第1作目の映画である。そしてそれは、全女性へのまた、理不尽に虐げられている人々へのエールでもある。

 パキスタンでは、男性がいないと生きていけない世界だという。アララッキも自分が15歳の時に、同じように何番目かの妻として嫁に出されたことから、まだ結婚がなにかも分からない子どもに同じ経験をさせたくないと、ただそれだけで、それだけでも十分な理由で逃げ出したのである。

 ショックだったのは、これが昔の話ではなく、現在のことだということ。携帯で連絡を取り合う現代に、部族間闘争があり、女性を「もの」のようにやり取りしている。そうして男たちの争いごとから逃げたにも拘わらず、やはり「女性として」という因習にとらわれざるを得ないアララッキであり、ソハイルなのである。

 それは、異国のパキスタンのことではなく、わが日本のことでもあり、すべての国のことでもあると思わずにはいられない。確かに日本でも、歴史をひも解くまでもなく、延々と現代に続く閨閥はあり、道具としての「女性」はいつの時代にもいた。それは、世界中に今も残っている。だから、映画の中のアララッキに深く心を寄せることができるのだと思う。

 彼女たちは、追っ手からうまく逃げおおせたのだろうか。男のいない家族としてパキスタンで平穏に生きられるのだろうか。それも気になるエンディングであった。【笠原眞弓】

*監督・脚本・プロデュース=アフィア・ナサニエル。2014年/パキスタン・米国・ノルウェー/デジタル/93分。4/28まで岩波ホール。その後名古屋、静岡、大阪など順次全国展開。公式ホームページ http://www.musumeyo.com/intro.html


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