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LNJ Logo 「改憲発議」どころか、自公政権も支持されたとは言えない〜参院選の結果について
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 参院選が終わった。野党共闘の成立、18歳〜19歳への選挙権年齢引き下げという新たな変化もあり、最後まで結果を見通せない選挙だったと思う。改憲発議に賛成する勢力が戦後始めて3分の2を確保。これで終わりではないものの、戦後史の転換点がいよいよやってくると覚悟を決めざるを得ない局面を迎えた。

 ここまで来れば、今さらじたばたしても仕方ない。強権的な安倍政権、ふがいない野党、この期に及んでなお選挙に行かずパンケーキを食べたり、競馬をしている救いようのない無党派層、そして「大政翼賛」報道に明け暮れたメディア――言いたいことは山ほどある。だが、今さら誰かのせいにしたところでどうなるものでもない。戦後70年間、何度も自民党政権を倒すチャンスがありながら実現できず、よりいっそう自民一党優位体制を強化する形で復活を許してしまった自分たちの力不足を率直に認めることからしか始まらない。「最悪の事態=改憲」に備えて何ができるか、少しでも希望の持てる論評をしたいと思い、ここに思いを述べておくことにする。(以下、文中敬称略)

 ●象徴的な福島、沖縄での自民敗戦

 象徴的選挙区を挙げよともし聞かれれば、文句なく福島と沖縄だと答える。沖縄に関してはもはや多くの説明を要しない。「安倍政権応援団」の大手メディアは与党敗戦必至と見て、開票速報から早々と沖縄を消してしまったが、開票開始早々の野党統一候補(伊波洋一)当選は、基地の島の不屈の意志を示した。

 代わって「大手メディア的注目選挙区」に躍り出たのが北海道、そして福島だ。

 このうち北海道は、1票の格差「違憲」判決を受けた2015年7月の定数是正で、定数が4(改選2)→6(3)に増員となった。前回までは自民(長谷川岳)、民進(徳永エリ)が議席を分け合っていたが、今回は両党が新たな議席確保を狙って2人目の候補を擁立した。自民は新人・柿木克弘、民進は元職・鉢呂吉雄。鉢呂は旧社会党系で福島第1原発事故当時の経産相。「福島は死の町」発言で辞任に追い込まれ、2012年総選挙での落選後は政界引退を表明していたが、増員に伴って再び担ぎ出された。

 結果は長谷川が先行、2位に連合北海道の組織支援を受けた徳永エリがつけ、最後の3議席目を鉢呂、柿木で争った結果、大票田の札幌市を制した鉢呂が競り勝った。民進の「護憲派」が2議席を確保、増員に伴って2人目を担ぎ出した民進党の積極策が功を奏した。

 福島県は、北海道と対照的に、2013年選挙から定数が4(改選2)→2(1)に減員。前回(2010年)当選した2人の現職、岩城光英(法務大臣、自民党県連会長)と増子輝彦(民進、野党統一候補)が争った。共産党は前回までは岩渕友(党県委員会役員)を擁立していたが、今回は岩渕を比例に転出させ増子支援。社民も増子を支援した。結果は、夜10時半を回ってようやく増子に当確が出る激戦だった。安倍政権幹部が相次いで福島入りし、「岩城が負けたら復興予算が減る」と脅したが、福島県民は屈しなかった。

 福島、沖縄での自民、しかも現職閣僚の敗北は重要な意味を持つ。この2県は「県民総ぐるみ人権剥奪」といっても過言ではない状況で、誤解を怖れず言えば、政府がどこまで憲法、法律を無視して住民を強権支配できるかテストする「緊急事態特区」扱いにされている。その意味では支配層にとっての「モデルケース」だ。安倍政権を背後で操る日本会議の思うとおりに改憲すれば、日本全国が福島、沖縄のようになる。日本国憲法が「適用除外」になっているこの2県で自民の現職閣僚が敗北したことは、改憲否定の意思表示であるとともに、「他都道府県のみなさん、私たちと同じ目に遭いたくなかったら改憲を拒否して闘ってください」という両県民からのメッセージである。

 ●北海道、東北で2勝7敗の与党

 北海道(改選3)、東北6県(青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、改選各1)の1人区で、自民が確保したのは北海道の長谷川の他、秋田だけ。それ以外の東北各県はすべて野党統一候補(民進または無所属)が勝利し、野党が7勝2敗と圧勝した。TPP反対を公約しながら協定締結に踏み切った自民に対し、東北5県(青森・秋田・岩手・宮城・山形)の農政連は自主投票を決め、唯一、「復興には与党の力が必要」との理由で農政連が自民支持を打ち出した福島でも、会津地方を中心に農家が猛反発した。自民の相次ぐ敗北は、久しぶりの「農家の乱」だった。

 しかし、東北での自民の弱体化は昨日今日始まった話ではなく、過去の国政選挙では自民が全滅したこともある。小沢一郎・生活の党代表の地元である岩手では、現職の主浜了が介護を理由に直前に引退表明。後継者として知名度のない木戸口英司を急きょ擁立したが、それでも自民に勝利した。東北では、自民党農政はとっくに農家に見放されている。

 岩手では、古くは1987年3月に行われた参院補選で、小川仁一(社会党)が自民党候補を破る「岩手ショック」が起きたこともある。この与党の敗北が、当時、売上税導入を狙っていた中曽根政権を直撃。中曽根政権が売上税導入をいったんは断念するきっかけになった。政局の節目節目で、きちんと政府与党にお灸を据えることができるのが岩手という土地柄である。

 青森から太平洋沿岸を下っていくと、青森(東通、六ヶ所)、宮城(女川)、福島(福島第1、第2)、茨城(東海第2)にはすべて原発・核施設があるのに岩手だけ原発がないことに気づく。いかに自民が圧倒的多数でも「反対」の声を上げることは決して無駄ではないのだ。

 自民の優勢が伝えられ、勝てると思っていなかった大分でも野党候補が勝った。東日本大震災で大きな被害を受けた東北6県のうち5県、そして熊本地震で熊本に次いで大きな被害を受けた大分。大地震の被災地でことごとく与党が敗れているのを偶然と思えない。ゼネコンだけが儲かり、地元住民そっちのけの「復興」に、被災地は拒否の意思を示したと思う。

 ●「大金星」だった鹿児島県知事選での勝利

 参院選の影に隠れてほとんど報道されなかったが、同時に行われた鹿児島県知事選で、川内原発の再稼働に同意した伊藤祐一郎知事が新人、三反園訓に敗北した。三反園は川内原発をいったん止め、再検査するよう求めている。日本で唯一、稼働中の原発が停止、再び「原発ゼロ」になる可能性が出てきた。

 鹿児島で過去、4選した知事はいないこと、「女子に三角関数を勉強させてどうなる。植物の花や草の名前を教えた方がいい」という許しがたい女性差別発言などが続き、次第に伊藤知事への反発が高まっていた。そこに熊本地震が発生したが、伊藤知事は「原子力事故が起きても避難の必要がない。普通に生活してもいい」「もし福島みたいなことが起きても、もう命の問題なんか発生しない」と発言。国、薩摩川内市、九州電力と一体になって原発を運転し続けた。こうした姿勢が結果的に命取りになった。

 鹿児島県、薩摩川内市、九州電力が3者で結んだ安全協定の第10条は、「甲(鹿児島県)及び乙(薩摩川内市)は、……立入調査の結果、発電所周辺地域の住民の安全の確保及び環境の保全のために必要があると認めた場合には、丙(九州電力)に対して直接又は国を通じて適切な措置を講ずることを求める」「丙は、前項の規定による求めがあったときは、誠意をもって措置し、速やかにその結果を甲及び乙に文書で報告する」と規定している。鹿児島県が川内原発の安全性に疑問を持った場合、立入調査を経て直接原発停止を要求できる、と読める内容だ。熊本地震の余震は今なお続いている。三反園新知事は県民の「民意」を受け止め、速やかに川内原発の停止を求めるべきだ。

 ●市民派はずっと正念場、あきらめず改憲粉砕を

 今回、戦後初めて衆参両院で改憲派が発議に必要な3分の2を確保したことで、護憲派はいよいよ崖っぷち、正念場という声が強まっている。だが、小選挙区制が導入されたときから市民派はずっと正念場だったし、いつかこの日が来ることもわかっていた。今さら焦っても仕方ない。こうなったら、国民投票を正々堂々と受けて立ち、改憲策動をどうすれば粉砕できるか作戦会議を始めよう。堂々と国民投票で私たちが勝利すれば、今度こそ私たち日本国民ひとりひとりが自分で選び取って確定させた憲法ということになり、右翼・改憲派お決まりの「アメリカの押しつけ憲法」論を粉砕できる。

 敵はすでに走り出している。私たちも次の闘いに向かって走りだそう。大阪都構想をめぐる住民投票でも、EU離脱をめぐる投票でも、住民ひとりひとりが支配者たちに一泡吹かせた。この流れに乗って安倍自民最大の野望を阻止し、新しい朝を迎えよう。今日からまた闘いのスタートだ。

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黒鉄 好 aichi200410@yahoo.co.jp

首都圏なかまユニオンサイト
http://www.syutoken-nakamaunion.com/hp/

安全問題研究会サイト
http://www.geocities.jp/aichi200410/

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