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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(6/23) : 都の教育内容は悪くなるばかり
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●根津公子の都教委傍聴記(2016.6.23)
*根津公子さんがこの日は傍聴ができなかったため、根津さんの依頼で渡部秀清さんの報告を掲載します。

都の教育内容は悪くなるばかり

6月23日、都教委定例会を傍聴しました。

舛添が辞職し、都庁の中は少し落ち着きを取り戻したようでした。 しかし、定例会で出てきた教科書関係の報告を聞く限り、都の教育内容は悪くなるばかりという印象を受けました。

定例会での<議題>は以下のとおりです。
1、議案 都公立学校教員等の懲戒処分について(非公開)
2、報告事項
(1)2017年度使用都立高校(中等学校・特別支援学校の高等部含む)用教科書の調査研修資料について (公開)
(2)2015年度に発生した都内公立学校における体罰の実態把握について(公開)
(3)都公立学校教員の懲戒処分について(非公開)

まず、公開された(1)についてです。

報告の中では、
<1採択の権限と教科書調査研究資料の役割>と言うのが述べてあり、そこでは最初に「採択に当たっては、採択権者である東京都教育委員会の責任と権限の下、・・・・最も適した教科書を採択することが求められる。そのため、全ての教科書について、十分かつ綿密な調査研究を行うことで必要である。」と、都教委の「責任と権限」、「綿密な調査研究」が強調されています。

また、各学校については、「校長の責任と権限の下、・・・『教科書調査研究資料』を活用して・・最も適切な教科書を選定する。」 と、あくまでも都教委の決めた枠内での選定を事実上強制しています。

次に、ここで調査研究されている教科書は全教科ですが、「日本史A」については、<調査項目の具体的な内容>では次のようなことが重視されています。

*我が国の領域をめぐる問題の扱い(学習指導要領に基づき、これらの問題を正しく理解できるようにするため)
*国旗・国歌の扱い(〃)
*北朝鮮による拉致問題の扱い
(都教委教育目標の基本方針1に基づき、人権尊重の理念を正しく理解できるようにするため)
*防災や、自然災害時における関係機関の役割の扱い
(関係機関の役割等について考察させることを通じて、これらの問題を正しく理解できるようにするため)
*一次エネルギー及び再生可能エネルギーの扱い
(学習指導要領に基づき、・・・これらの問題を正しく理解できるようにするため)
*オリンピック、パラリンピックの扱い
(国際社会に貢献できる日本人を育成するという観点から・・調査する)

これらは、「日本史」教科書を選ぶ視点というよりも、現在安倍政権が進める政策についてどのように書かれているかを点検・検閲するような調査項目といえます。

本来、<教育条件整備を目的>として作られた教育委員会が、これほどまでに、<教育内容に介入>しているのです。まさに、国家主義教育の具体化です。そして、その仕事を担当している職員の多くは、そのことを自覚しないまま、その枠内で膨大な資料(あわせて3キロにもなりそうな傍聴資料が渡されました)を作っているのです。

なお、これまで、国旗掲揚や国歌斉唱について、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」などと記述され、都教委は「考え方が異なる」として3年間現場に選定させなかった実教出版の「日本史A」「日本史B」のうち、「日本史A」はその記述が消えた(実質的には都教委が消した)として解除することになりました。 しかし「日本史B」の教科書は従来通りの扱いです。

教科書検定を通った教科書さえも「考え方が異なる」として引き続き排除する。このような異常な体質が依然として都教委を支配しています。そして、前述のような国家主義的な <調査項目の具体的な内容>が出ているのです。

次に、(2)の「体罰の実態把握」ですが、これは各学校で、<教職員・・・校長による聞き取り調査>と<児童・生徒・・・質問紙調査及び聞き取り調査>を突き合わせ、<報告のあった学校数>として報告されていました。それを見ると、
 2013年度(全2,184校中795校<36.4%>)
 2014年度(全2,179校中468校<21.5%>)
 2015年度(全2173校中397校<18.3%>)
という具合に減少しているようですが、調査方法からしてどれだけ実態を把握しているか疑問があります。

また、教育委員からは「確かに減少しているが、根絶できていない」などの意見が出ていました。しかし、現場教員の「君が代不起立」に対し、人権無視の数多くの厳しい懲罰を加え、かつ思想転向をせまる「再発防止研修」なども課し、裁判所で何度もその不当性を断罪されながら態度を改めない、都教委の特異な体質が改まらない限り、体罰の根絶はないでしょう。むしろ体罰肯定論さえ出てくる可能性があります。


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