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LNJ Logo 22日朝、首都圏JR大混乱について
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特急たから@鉄ちゃん(鉄道ファンの略称)です。

今日は、JRの株主総会を狙い撃ちするかのように首都圏でJR大停電が起き、万単位の人が線路
上を歩かされる大混乱がありました。実は、私も株主総会会場での宣伝行動、国土交通省前座り込み
に行く予定で、予告もしていたのですが、JRに歩調を合わせるかのように本業でトラブルが発生し
て行けなくなってしまいました。
今回、「ドタキャン」に追い込まれてみて痛切に思ったのですが、平日の昼間に株主総会を開催して
喜ぶのは経営陣と「サクラ動員」の社員株主、そして総会屋だけ。私たち普通の労働者は参加も困難
です。株主総会は週末開催を導入すべき時期に来ていると思います。

さて、そんな話は置くとして、首都圏JR大混乱についてです。
報道された情報を総合して、私は今のところ「エアセクション区間におけるパンオーバー事故」と考
えています。


実は、架線方式で電化されている鉄道(地上鉄道のほとんどは架線方式)では、10km、20kmといっ
た長い区間を1本の電線で通すようなやり方はとられていません。考えてみれば当然で、車両側のパ
ンタグラフと常に一定の間隔で接触しなければならないのですから、鉄道の電線は常にまっすぐピン
と張った状態でなければなりま
せん。電柱と電柱の間では電線がある程度垂れ下がっていても許される電力会社の電力線とは違いま
す。


このため、鉄道の電線はいつでもピンと張った状態になるように、終端地点に重さ数十kgの重りが
つけられているわけですが、一方で、電線をピンと張った状態に維持しようと思えば、長い電線にな
るほど重りの重量を増やす必要が出てきます。このことは、長い電線ほど強い力で引っ張られること
になり、それだけ切断の危険が
高くなることを意味します。輪ゴムを強く引っ張って伸ばせば伸ばすほど、弱い衝撃でも切れてしま
うのと同じです。


こうしたことから、一般の電力線が短く区切った電線を電柱で連結しているのと同じように、鉄道
でも短く区切った電線を連結する手法が採られるわけですが、電力会社の電力線と鉄道の電線が決定
的に異なる点は、鉄道では2本のレールの間に電柱を立てるわけにはいかないことです。さらに前述
した通り、電線をピンと張った
状態に維持するため、両端区間に重りを設ける必要もあります。

そこで、鉄道の電線の接続区間では、電線を線路外から線路内に引き込む一方、別の電線を線路内
から線路外へ引き出すという形を取ることになりますが、結果としてこの接続区間では2本の電線が
重複することになります(この区間を「エアセクション」という)。

これを文章だけで表現するのは不可能なので、この原理をわかりやすく図解で説明している鉄道フ
ァンのサイトをご紹介します。こちらをご覧いただくと、この複雑な原理が理解しやすくなると思い
ます。
http://deadsection.image.coocan.jp/dead_sec/dead_sec.htm

このページの「2.「ふつうの」セクションと「デッド」セクション」の項で一番初めに出てくる
図が、架線の重複の原理をわかりやすく表したものです。

ところで、このエアセクション区間では、当然ながら両方の電線に電流が流れています。この接続区
間の目的が、電車への電力供給を途絶えさせないようにしながら、電線だけを物理的に切り替えるこ
とを目的としているからです。
エアセクション区間にパンタグラフが位置した状態で電車が停車すると、2本の電線がパンタグラフ
によって短絡され、2本の電線が導通する事態が起こります。この導通状態を「パンオーバー」と呼
びます。

今回、事故が起きた大宮〜さいたま新都心間は直流1500V区間ですが、パンオーバーが起こると限
界値をはるかに超える過大電流が両方の架線に流れるため、その過電流で電線が溶断してしまいます
。今回の大停電事故は、このような経過をたどって起きたと考えられます。

なぜ、わざわざエアセクション区間を選ぶように電車が停車したのかは今後の究明を待たねばなり
ませんが、パンオーバー発生の恐れがあるエアセクション区間には標識が設置されているのが普通で
あり、運転士がこの標識を見落とした恐れがあります。
今朝は雨が降っており、車輪のスリップを心配して運転士がいつもより手前でブレーキを操作した可
能性もあると思います。

マスコミ情報からわかることは、現時点ではここまでです。
ただ、一般マスコミの中には「架線の定期検査では異常がなかった」などと的外れな報道をしている
ところもあります。(例えば以下のニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000092-jij-soci

パンオーバーは電線同士の短絡によって突然起きる現象なので、定期検査で異常があったかどうか
はほぼ無関係と考えてよいと思います。一般家庭で、電気の使いすぎでブレーカーが落ちたからとい
って、通常「設備がおかしい」とは考えないと思いますので…。

ただ、こんな事故がよりによって株主総会の当日、それも開始直前に起きるとは、JR東日本は運
にも完全に見放された感があります。意地悪な言い方ですが、日頃の行いが悪いからでしょうね。
どちらにしても、分割民営化から20年を経て、本業である鉄道業の劣化にのたうち回るJRの断末
魔を表す現象のひとつと言えるかもしれません。

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特急たから

国労闘争団支援私設サイト「闘争団とともに 人らしく」
http://www.geocities.jp/aichi200410/

鉄道ファンサイト「罪団法人 汽車旅と温泉を愛する会」
http://members.at.infoseek.co.jp/m_c_hama/

鉄道ファンのブログ「人生チャレンジ20000km」
http://blog.goo.ne.jp/hitorasiku/
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