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「権力型性暴力」問題の解決で注目すべきこと

[インタビュー]チャンイム・ダヘ韓国刑事政策研究院研究委員、法女性学博士

パク・タソル記者 2020.07.27 14:47

最近の共に民主党所属の自治団体長による一連の性犯罪は、 加害者が自分の優越的な地位と権力を利用して行った、 いわゆる「権力型性暴力」だった。 権力型性暴力加害者たちは、保守と進歩という古い両極端の問いの中で、 しばしば「進歩」の人物と分類されたりした。 彼らはMeTooを支持し、女性のための政策と制度を整備し、 与党の伸張が当然必要だと強調した。 そのためか、相当数の支持者は性暴力事件を努めて否定したり、 政治的陰謀説を提起した。 その過程で被害者は、疑いと非難の中で犯罪事実を立証する責任を抱え込んだ。

法の網にかからない搾取的関係に追いやられた被害者たちは、 被害立証の困難をあじわう。 さらには最近の朴元淳(パク・ウォンスン)市長事件の場合、 被疑者と指定された人物が死亡したことで該当事件が「公訴権なし」で処理し、終結する予定だ。 果たしてわれわれは相次ぐ階層と威力による権力型性暴力、 そして職場内性暴力問題にどのように接近して解決していかなければならないのだろうか。 「ワーカーズ」がチャンイム・ダヘ韓国刑事政策研究院研究委員で法女性学博士と会って話を交わした。

「業務上威力姦淫、被害者抵抗の難しく被害期間は長い」

▲チャンイム・ダヘ韓国刑事政策研究院研究委員[出処:ユン・ジヨン記者]

「権力型性暴力」は現在の韓国の司法体系でどのように処理されているのか。

業務上威力姦淫事件は申告も多くなく、起訴も容易ではなく、 MeTooの前には判例も多くなかった。 安熙正(アン・ヒジョン)事件などで最近に争点になった。 しかし職場内のセクハラ、性暴力事件は、業務上威力醜行として広く認められた。 この時の「威力」とは、被害者の抵抗という要件を充足しなくても良い。 業務上の保護監督関係があれば業務上威力醜行と認定される。

業務上保護監督関係での威力による醜行、姦淫規定は、他の国では見つけ難い。 韓国の刑事法だけの特異な規定というわけだ。 米国の場合、70年代からセクハラの概念が飛躍的に発展した。 米国は、韓国で業務上威力による醜行、姦淫と分類される行為を性暴力ではなく、 「職場内差別」に持っていった。 そのため米国はセクハラを判断する時に、相手方の意図や、 どのように力を行使したかを重く見ない。 被害者-加害者の関係を権力関係から見るのか、 問題の行為が被害者の労働権を侵害したのかなどを集中的に見る。

業務上威力姦淫での争点は何か。

現在、業務上の階層あるいは威力による姦淫を問う時の困難は、 こうした関係では拒否意思を明らかにしたり抵抗が難しいという点だ。 また業務上威力姦淫の事例を見れば、被害期間が長い。 被害の序盤には強圧的な状況があっても、 時間が過ぎると強圧的になされるというよりも、被害の反復が続く。 実際に被害者は自ら諦めたり、状況を避けるための行動を取るため姦淫を立証するのが難しい。 これまで申告が多くなかったのもこのためだ。 だがMeToo運動が起きて平沢対総長事件 [1] 、 安熙正(アン・ヒジョン)事件 [2] 等が有罪判決を受け、転換の契機になった。 それでも微妙な点があるため、法律的な争いは続くだろう。

法的争いが予想される『微妙な点』を説明してくれ。

刑事法体系では加害者の故意がなければ処罰が難しい。 安熙正事件の場合、 安熙正本人が威力を行使して相手方を性的に率いた状況を認識したかのがとても重要な地点だった。 威力姦淫・醜行で故意が認められにくいのは、 権力者が自分に対する好意を簡単に前提として、 性暴力状況における他の脈絡を全く理解できないためだ。 刑法では意図がないということで抜け出る余地が非常に高い。 これに反してセクハラ、職場カプチル(パワハラ)などは加害者の意図が重要ではない。

業務上の威力による姦淫事件では、被害者陳述の他に直接証拠が不足している場合も多い。 この過程で被害者はどんな困難を経験するか。 性暴力事件ほとんどが被害者の陳述の他には直接の証拠がない。 被害者はこれを補充するために陳述の信頼と信憑性を裏付ける情況証拠を提示する。 被害事件の前後の状況、やり取りした携帯メッセージなど、 資料をたくさん集めるほどしっかりする。 この過程で被害者が甘受しなければならない状況も生まれる。 各種の証拠に基づいて起訴権がある人を説得し続けなければならないのだ。 論理的に話さなければならず、 さらに広く私がどんな生活を送ってきたのかを証明するべきだが、 この過程が容易ではない。

「朴元淳市長事件、職場内セクハラ・性暴力事件として扱うべき」

朴元淳市長事件の場合、故人が死亡したため法的な争いができなくなった。

多くの人たちが業務上威力による醜行事件に焦点を合わせているが、 この事件はもはや刑事事件ではない。 むしろソウル市が主導して、職場内セクハラ・性暴力事件として扱うべき事件だ。 刑事政策研究院は、職場内セクハラ事件に差別問題として接近している。 こうした接近は加害者の意図や加害者の有無は重要ではない。 加害者が被害者の職場にいなくても、被害者のために職場ではこの事件を規定によって処理することができる。 まずはソウル市が解決の主体になると言っているが、 差別問題として見た時は、国家人権委員会に行くことができる。

ソウル市のアンケート調査を見ると女性公務員が職場内性差別を強く感じている。

女性に差別的に応対する文化が広がる時、 あるいは女性が少数か低い地位に集まっている時、 性的な被害もたくさん起きる。 韓国の労働構造における性差別的な慣行は根が深い。 差別がセクハラにも、カプチル(パワハラ)にも、職場内いじめにも続く。 これまでは性に対する認識の変化があったためにセクハラ問題として扱ってきたが、 最近では人権侵害などとして扱えるカテゴリーができている。 刑事的な対応と同時に、国家人権委員会などに持っていくことができる問題だ。

安熙正事件でも労働現場での差別問題が存在したのか。

キム・ジウン氏の業務そのものが差別的な労働だった。 当時、被害者側で強調したのはキム・ジウン氏の不安定な地位だった。[3] 随行秘書、政務職秘書として女性が採用されたのはキム・ジウン氏が初めてだったが、 個人の時間を確保できない条件であり、私生活と業務が区分がなされなかった。 24時間待機状況だった。[4] 公務員の身分であも知事が任命した人なので、 知事が切られれば共に切られる構造だ。 知事が出て行けと言えば出て行かなければならない。 だがこの秘書の場合、きちんとした解雇通知さえなされなかった。 労働権を保障されない残酷な業務だった。

「秘書」という職種の業務性格は、どのように差別的なのか。

秘書は上司の私生活をはじめあらゆる雑務を手伝う。 上司が高位職であるほど、さらに多くを補助する。 こうした関係で業務の性格はとても従属的にならざるをえない。 業務はいわゆる「女性的なこと」に集中している。 上司のあらゆる私的な領域、食べること、着ること、寝ること、遊ぶことまで面倒を観なければならない。 つまり家庭内で女性が処理してきたケア労働の仕事をしている。 そのような業務は、「誰でもできること」に置き換えられ、 まともな労働として評価されない。 感情労働も低評価されている。 労働現場での差別は女性的な仕事と男性的な仕事を区分して、 女性の仕事を非専門的な仕事と扱うことで現れる。

業務処理も私的な方式で行われる。 業務が公的でないことが問題だ。[5] これと共に、秘書職の特徴である雇用の不安定性を照明する必要がある。 秘書職の場合、正規職よりも非正規職を採用することが多く、 年齢帯が低い女性が多い。

労働組合の存在が職場内性暴力事件の解決に影響するか。

2017年に職場内いじめ関連の研究でアンケート調査をしたことがある。 労働組合や女子職員会のような組織がある場合、 職場内いじめやセクハラへの対処が多少円滑だったという回答がはるかに高かった。 どんなマニュアルや制度よりも、被害者を励ます組織が内部にあるということが大きく影響しているようだった。

「権力型性暴力の公論化、MeToo運動による社会変化過程」

関連の政府の対策があふれているが性暴力事件は絶えない。

逆に、こうした問題が水面上に浮上したのは MeToo運動による社会変化の過程ではないかと思う。 人権弁護士、著名な市民運動家、ソウル市長として名をはせた人物が 性犯罪を行ってきたと言えるのは、あるいは今の時期だから可能なのかもしれない。

2次加害にも変化の様相があるか。

朴元淳事件で驚いたのは、 世論が半々だったという点だ。 キム・ジウン氏事件までは悪意的なコメントが多く、コメント操作団まであった。 今回の事件はMeToo運動がどの程度の影響力があったのかを確認する契機になった。 事実、2次加害は避けられない。 韓国の特性上、状況を変えようとする人々は、簡単に攻撃の対象になる。 2次被害を解決しようとすれば本人が動かなければならない。 2次加害を制御する方法は、被害者の告訴告発以外の方法はない。 勇気を出した被害者が最後まで頑張って戦えるような支持と連帯が必要だ。

今回の事件では加害者が死亡して被害者の苦痛がさらに強まった

加害者とされた人が死亡し、これに対して痛ましさをためらうことなく表した人々がいる。 だがこうした追慕が現在の状況と脈絡で、被害者にどのように受け入れられるのかも考えるべき問題だ。 問題を提起した人に非難が傾きかねないからだ。 今は申告者を尊重して、2次加害予防のために社会的雰囲気を造成することが重要だ。 機関次元ではセクハラ、性暴力に対して厳重に扱っているという社会的シグナルを与え、 徹底的に予防しなければならない。 朴前市長が自殺した最大の理由も、 本人がずっとそのようなシグナルを与えた人だったためではないだろうか。

女性問題に声をあげてきた人が加害者に指定されると、自ら命を絶ったという事件を見て、多くの人が当惑を感じた。

根深い性差別構造の中では、常に緊張感を持って自分を振り返らなければならない。 自分をフェミニストだと規定する人々さえ、似たような問題を起こす。 フェミニストだからといって、性差別をしないわけでもない。

朴前市長に対して残念なのは、 この事件を責任を持って解決する姿を見せてくれなかったということだ。 誰も私は絶対に違う、そんなことはないと自信を持つことができない。 自分の信念に反する行動で非難され、挫折するかもしれない。 本当に問題を認知していれば、私もするかもしれないということを認め、 しっかり解決するために努力するべきだった。

性犯罪加害者が解決と反省に最善を尽くして社会に復帰した事例はあるか。

聞いたところでは、運動社会には復帰を夢見て与えられた課題を熱心に履行する人々がいるという。 現在は復帰すること自体をダブー視しているが、そのフレームは変わる必要がある。 単に性暴力事件だけでなく、何か悪いことをすれば直す余地がなければならない。 いつもアウトにするだけでは組織は変わらない。 「非寛容原則」も大きな問題だと考える。 朴元淳市長は 「非寛容原則」を明言した張本人なので、 自分で終わりだと考えたのだろう。 解決することを「ケリをつけること」だと考えた人が出す結果だったと見る。

脚注

[1] 平沢大学教職員A氏が20余年間、総長から性暴行と性暴力を受けたとし、 2016年末に総長を告訴した事件。 控訴時効のために2013年から2016年11月の間の容疑だけが問われ、 1審の裁判所は総長に対して業務上威力などによる醜行で懲役8月と 性暴力治療プログラム40時間の履修を宣告した。 総長は1審裁判に従わなかったが、控訴審裁判所も2018年12月に同じ宣告をした。

[2] 2018年3月、安熙正(アン・ヒジョン)前忠清南道知事の政務秘書キム・ジウン氏が7か月間続いた安前知事による性暴力を告発した事件。 1審裁判所は「威力が存在するが行使することはなかった」という判断と共に、 安前知事に無罪を宣告した。 だが2019年2月の2審裁判所は業務上威力などによる姦淫および醜行などで安前知事に懲役3年6月を宣告し、 同年9月に大法院も有罪を最終確定した。

[3] キム・ジウン氏は2017年7月から安熙正の随行秘書として働き始めた。 そして4か月後に政務秘書へと役職が移動した。 キム・ジウン氏は「キム・ジウンです」で「前任の随行秘書は運転秘書から始まり、 8年近く知事に使えたが解雇の一週間前に通知を受けて出て行くことになったといった。 専従者には扶養すべき二人の子供と妻がいたが、生計のための何の措置もなかった。 特別職公務員の任免権限は絶対的に機関の長である道知事にあることを実感し、 仕事を始めた」と話した。

[4] キム・ジウン氏が安熙正性暴力事件を告発し、 554日間の法的闘争過程を記録した「キム・ジウンです」に詳しく出てくる。 「私は多いときは週140時間働き、通常週130時間ほど働いた。 基本勤務時間(平日9時〜18時)外の超過勤務が月80時間を越え、 100時間をはるかに越える時もあった。」

[5] 「退勤後にも呼べばいつでも駆けつけなければならなかった。 公的業務の他に私的に指示される受ける業務も多いので、 ある瞬間公と私が区別できない状況になった。(...) 知事の家族に関する業務も、休日も問わずいつもあった。 休暇の時や名節に息子とヨットに乗りに行ったり、 家族どうしで遊びに行く日程の宿舎、食堂、体験活動などを調べて予約しなければならず、 知事の友人家族や知人が泊まる場所も調べなければならなかった。 夫人や知事が友人の集まりで酒を飲んで運転できなければ、 真夜中に呼ばれて代理運転をした。 ビール、タバコのような個人の嗜好品も随行秘書が代わりに買って、 宿舎や執務室に持っていかなければならなかった。」、 キム・ジウン、「キム・ジウンです」、ポマリム、2020。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-07-28 09:19:57 / Last modified on 2020-07-28 09:19:59 Copyright: Default

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