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高空籠城2か月、8回の正規職判決にもかかわらず解雇された人々

[ワーカーズ ルポ]46人が復職闘争をしている韓国GM群山・富平非正規職労働者

ヨンジョン(ルポ作家) 2019.11.06 11:01

韓国GMの非正規職解雇労働者、イ・ヨンス氏が10月25日、 鉄塔高空籠城61日目に座り込みを解除しました。 46人の解雇者復職を要求して闘争してきた韓国GM非正規職労働者たちは、 これからはカハー・カゼム社長拘束要求闘争に拡大するという立場を明らかにしました。

8回の「正規職判決」にもかかわらず、 61日間の高空籠城を続けてきたイ・ヨンス氏の話をのせます。 ―編集者

▲10月16日コンテナボックスで堅く防いだ韓国GM西門[出処:ヨンジョン]

空間が狭く、ほとんど何もできません

10月16日午後。 仁川広域市富平区の富平大路にある韓国GM富平工場正門前。 「非正規職撤廃! 非正規職解雇者復職! 韓国GM資本糾弾! 民主労総決意大会」 の準備の真っ最中だ。 鉄塔高空籠城52日目になる韓国GM富平工場解雇労働者の イ・ヨンス氏(金属労組韓国GM富平非正規職支会所属)の姿が見える。 集会の準備場面をぼんやりとながめているヨンス氏に手を振った。

「お久しぶりです。」

「苦労していませんか?」

8月25日未明、ヨンス氏は自分が積んだ鉄塔に上がって 自分を高空という監獄に閉じ込める闘争を始めた。 もうこれ以上上がる所もなく、鉄塔を作って上がらなければならなかった。

「からだは心配する程ではありません。 朝晩の温度差が激しくて、風邪を引かないように気を付けています。」

できるだけしっかり食べようとしているが、 空間が狭くて動きが少ないので、消化が悪いという。 それでも最近では簡単に料理をして食べる余裕もできたという。 一日の日常を尋ねた。

「朝と午後の宣伝戦2〜3時間、文化祭1〜1時間半、こうして外で4時間程過ごします。 食事して体を洗って整理して、トイレに行くのは普段と違うので、 多少時間がかかります。 残りの時間は運動もして、携帯電話で世の中の変化も見て、発言の準備もします。 また、個人的に勉強もして、本も読みます。 暑い時は昼に何をするにも意欲が出ない時もありました。」

狭い空間に荷物がかなり多く、片付けとともに「座込場計画」をすることも 重要な一日の日程の一つだ。 高空籠城場全体の大きさは1.4m×1.7mで、 このうち生活空間にするためのテントが1.2m×1.7m程度だという。 幸い、背が高い方ではないので足は伸ばして眠れるとヨンス氏が笑う。 色々なことを考えるが、空間が狭いのでできることはあまりないといった。

秋夕の時、ヨンス氏は高空籠城のために家族と会うことができなかった。 ヨンス氏の両親は彼が何をしているのか、おおまかなことだけは知っているという。

「父がインターネット検索をするのであるいは知っているかもしれません。 家族も私がこんな事をしているのを分かってはいますが、 怪我をするなと署名でもして手伝うといいます。 私が署名はいいから、あまり心配するなと話しました(笑)」。

6年ぶりの復職、非正規職も労組が必要なことを知りました

ヨンス氏は解雇は初めてではない。 2006年5月に韓国GM富平工場に非正規職として入社したヨンス氏は、 エンジン工場でエンジン組み立て業務に従事して1年後に 労働組合を作ったという理由で解雇された。

最初の復職闘争4年間に韓国GM非正規職解雇労働者たちは、 富平区庁駅CCTV鉄塔高空籠城、ソウル漢江大橋アーチ高空籠城、 富平駅CCTV鉄塔高空籠城、韓国GM正門アーチ上の高空籠城、 ハンスト45日など、言葉は言えないほどの闘争をした。 その上、ある労働者は麻浦大橋バルコニーにロープで縛ったかごに入って水上デモをして、 消防署員が降りてきたので漢江に飛び込んで救助され命拾いしたこともあった。 最後の高空籠城が終わると、使用者側は正門のアーチをなくした。

ヨンス氏は4年の闘争の末に復職に合意したが、2年近く待って2013年に復職した。 復職後もエンジン工場でエンジンヘッドの精密加工業務に従事した。 今は生産終了になったシボレー・アベオがヨンス氏が作った車両だ。 そうして3年働いて該当の工程が閉鎖されると、車体工場で溶接の仕事をした。

「工場の仕事は最初は大変です。 肉がげっそりなくなります。 ダイエットのために工場に入るという話があるほどですからね。 復職した当初はとても大変でしたが、2〜3か月経つと少しずつ慣れました。 慣れても、それだけからだが壊れていくということでもあります。」

6年ぶりにもらった最初の月給で、家族に素朴なプレゼントをして、 同僚と笑いながら暖かい一食のご飯を食べたヨンス氏の姿を想像してみる。 解雇者として暮らしながら、あえて夢見ることができなかった未来の計画をたてて、 同じ工場で働く非正規職労働者の人生を変えることも考えたのだろう。

復職後、工場の中の非正規職労働者の賃金など労働条件は、 初めて労働組合作った時と較べてあまり良くなっていないといった。

「2010年になる前はGM非正規職が工団の非正規職一部製造業者より賃金が少し高かったのに、今はほとんど差がありません。 2・3次下請企業はほとんど最低賃金だ。 むしろ大きく変わったのは工場の中の非正規職労働者の態度でした。 初めて労組を作った時は、組合員と話さないようにしました。 組合員とつきあって自分がクビになるかもしれないから…。 しかし6年後に復職すると、そんな雰囲気は変わりました。 非正規職労働者たちももう労組が必要だと知ったのです。 労組を作って組合員が抗議するので、ぞんざいな言葉を言ったり いい加減に対することができません。 非人間的な待遇はちょっと改善されました。」

それでも相変らず組合員がいない1次や2・3次の下請企業では、 年齢が低いという理由で、または年上でも職責が低いという理由で、 非正規職労働者に放言をすることが多いという。

正規職は転換配置、非正規職は優先解雇

変わらないもう一つは、 非正規職労働者に対する日常的な解雇であった。

「GMは物量が減ったり構造調整をすれば、真っ先に非正規職を解雇します。 2017年と2018年にも物量が減って、非正規職を大量に解雇したのです。 私が2006年に初めて入社した時、 富平工場には1次社内下請労働者が1500人いたのですが、今は500人もいません。」

韓国GMは経営危機と韓国撤退論をあげて、非正規職労働者を解雇し続けた。 富平工場だけでも2017年にエンジン工場と車体工場インソーシング過程で13人、 2018年に2交代が1交代に転換する過程で13人、 仁川KDセンター(輸出包装)閉鎖で11人、 2019年に仁川部品物流センターの閉鎖で1人が解雇された。 これは労働組合に加入した解雇労働者の数だけだ。 ヨンス氏は解雇された全非正規職労働者の正確な数字は確認することもできないといった。

「インソーシング」は、既に外注化した工程でまた正規職が働くことだが、 その言葉だけを聞くと非正規職がしていた業務を正規職化するという 肯定的な意味に解釈されるかもしれない。 だが、韓国GM工場での「インソーシング」は、 その場で働いていた非正規職を正規職に転換し、 ずっと働かせることではなかった。 本来働いていた非正規職を解雇して、工程の閉鎖などで行く所がなくなった正規職が 非正規職がしていた仕事をするのだ。 こうした「インソーシング」は「非正規職優先解雇」の別名になってしまった。 とてもつらい工程なので正規職がくることを敬遠して、 まだ「運良く」解雇されていないと言う非正規職労働者もいる。

「正規職は転換配置で席を保全されるが、 非正規職は業者を廃業する方式で解雇します。 私は昨年末に2交代から1交代に転換され、無給休職を強要したのでできないといいました。 同じ状況で正規職は休業手当てを払い、 非正規職は無給休職しろというのはおかしいでしょう。 私は業者がなくなって自動的に解雇されました。」

ヨンス氏はこうした形の無給休職に同意すれば、 会社が少し難しくても、いつも非正規職だけに同じ方式の犠牲を強要するだろうと話す。 また、労働者の立場として無給休職は解雇よりひどいという。 解雇されれば受け取る失業給付も、無給休職状態では受け取れないからだ。 無給休職は、我慢できなければ辞表を書けということと違わず、 実際に無給休職中の多くの非正規職労働者が我慢できずに辞表を出して辞めた。

「韓国GM富平工場で2017年末以後、38人の解雇者が生まれ、 群山工場にも4年間復職闘争をしている8人の解雇者がいます。 もうすぐ富平第2工場がまた2交代に転換されるのですが、 私たち46人が現場に戻る可能性があると判断しました。 高空籠城もして、ハンストもして、今回解決しようと決意しました。 非正規職組合員が多くて工場の中で団体行動で使用者側を圧迫できれば良いのですが、 人数が多くなく使用者側が対話もしないので、 やむを得ずこうした選択をすることになったのです。」

ヨンス氏は2交代転換に必要な労働者数は700人だが、 現在、転換配置を待っている正規職労働者は630人で、 非正規職労働者46人を十分に雇用する余力があると話した。

正規職転換仮処分申請があればうれしい

今年の下半期、富平・群山の非正規職解雇労働者たちは、 問題解決のために高空籠城と25人の集団ハンストみをした。 解雇労働者3人による26日間のハンスト以後、 民主労総仁川地域本部のイ・イナ本部長が無期限ハンストに入り、 10月16日現在、16日目になる。 2017年末の解雇以後に始まったテント座り込みは624日になる。 だがまだ問題解決の糸口は見えない。

▲10月16日鉄塔高空籠城52日目の韓国GM非正規職解雇労働者イ・ヨンス氏[出処:ヨンジョン]

正規職労働組合の団体交渉は中断された状態で、 10月10日に雇用労働部仁川北部支庁仲裁による議論の場に 非正規職支会は参加することもできないまま、意見だけやりとりして終わった。 そうした中で、仁川地方裁判所民事21部は10月15日に 韓国GMが出した撤去など仮処分申請を一部承認し、 高空籠城中の鉄塔が土地と歩道の効用を阻害するとし、 非正規職支会に鉄塔撤去を命じた。 また、決定を送達受けた日から7日以内に履行しない場合、 組合員14人が各々1日50万ウォン(1日700万ウォン)を韓国GMに支払えといった。

「私たちが勤労者地位確認訴訟や、不法派遣訴訟で勝ったことが多いのですが。 正規職転換仮処分申請があって、私たちもひとまず正規職転換仮処分をしてくれたらいいですね。 このように一方的に使用者側だけを聞き入れる裁判所の態度が情けありません。」

ヨンス氏が初めて入社した時も、また復職した時、 すべての業務計画と指示は元請の韓国GMがした。 2015年にヨンス氏と韓国GM富平工場非正規職労働者たちは、 韓国GMが実際の雇用当事者であることを確認する勤労者地位確認訴訟を提起して、 昨年勝訴して来月2審の宣告を控えている。 昨年、非正規職支会は「派遣勤労者保護などに関する法律」違反で韓国GMを告訴し、 仁川北部雇用労働支庁が該当事件を起訴意見で検察送検したが、 検察の補強調査の指示で処理が遅れている。

韓国GM群山・富平・昌原工場の社内下請労働者たちは、 彼らの使用者が韓国GMだという大法院(最高裁)判決を含む裁判所の判決を8回も受けたが、 正規職になるどころか路上に追いやられた。 韓国GM昌原工場に800人ほどを不法派遣した容疑で 韓国GMのニック・ライリー前社長が宣告された罰金は700万ウォンだった。 裁判所は韓国GM事業主に宣告した700万ウォンと同じ金額をくやしく解雇され、 復職を要求して高空籠城をしている労働者には毎日払えといった。

この日、非正規職労働者たちは民主労総決意大会の後、 韓国GM使用者側に復職要求を伝えるために本館がある韓国GM西門に行進した。 しかし使用者側はコンテナで入口を封鎖して彼らの進入を防いだ。 結局、解雇労働者たちはタマゴを投げて抗議して戻らなければならなかった。 昨年、韓国から8100億ウォンの資金支援を受けて チョンナ研究所の敷地無償賃貸などの恩恵を受けている韓国GMによる 非正規職労働者たちへの態度だった。

非正規職労働者たちの復職に関して韓国GM側の立場を聞くために連絡をしたが、 電話はつながらなかった。 カスタマーセンターが案内するメールアドレスに数回メールを送ったが、 返事も受け取れなかった。

イ・ヨンス氏は韓国GMのカハー・カゼム社長を含み、 韓国GMが表面では労使共生を話しているかもしれないが、 実際の労働者たちの要求、特に非正規職労働者の声には全く関心がないといった。 それでもヨンス氏は絶対に諦めないと話す。

「必ず工場に戻ります。 天気がさらに寒くなる前に解決できれば望むことはありません。 自動車産業経済が難しくなるからクビにすることが当然視されています。 物量がない時、整理解雇することが合法化されています。 雇用労働部に不当解雇陳情もしましたが、労働者の言い分は聞いてくれませんでした。 工場の中では物量が減って、会社が難しい、自動化する、費用を下げるという理由で 『またクビにするらしい』という言葉が絶えず出回ります。 本当にとてもストレスを受けます。 解雇を当然だと思う現実を変えたい。」 [ワーカーズ60号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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