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誰が生産性の向上を妨害するのか?

[ワーカーズ]最低賃金なのか、財閥なのか

ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2019.07.30 12:02

「最低賃金を過度に上げると生産性が下がる」。 財閥とオウム言論が最低賃金引き上げに反対して言った話だ。 この言葉を逆にみれば、 最低賃金は生産性の増加に比例して上げなければならないということだ。 何かもっともらしく見えるが、労働生産性の増加率が韓国を含み 世界的に鈍化している点を念頭に置けば、 結局、最低賃金は上げられないという論理だ。

1986年に最低賃金法が制定され、1988年の1月1日から最低賃金が施行されたが、 その翌年の1989年の最低賃金引き上げ率は29.7%に達した。 1992年まで4年間、最低賃金は100%(1群基準)上がった。 このように最低賃金が上がっても、生産性が下がったり自営業が破産したという話はなかった。 もちろん当時は物価上昇率が4%を越えていたし、 経済成長率が8%以上を維持していた状況を考慮しても、 最低賃金が100%上がっても物価に悪影響を与えたり経済成長率が悪化することはなかった。 むしろ経済はさらに成長した。 それでもこの3年間、せいぜい30%程度の値上げで、 まるで最低賃金引き上げのために経済が破綻するかのように話している。

ところで、果たして最低賃金引き上げが生産性の向上を遮るのか? 結論から言えば、最低賃金引き上げは生産性鈍化とは関連がなく、 むしろ最低賃金引き上げが生産性向上の役に立つことの方が多い。 生産性向上を遮るのは最低賃金ではなく、 財閥大企業中心に下層系列化された現在の経済構造であり、 労働者の賃金を上げられないようにサービス物価を低く維持し続けた産業賃金構造のためだ。

サービス業と中小企業の生産性を上げろ

労働生産性は総付加価値(GDP)を総労働時間(または総労働者数)で割った値段、 または労働時間当たりに産出される生産量の価値を意味する。 労働生産性増加率は、資本主義世界経済で全体的に鈍化し続けており、 2000年代の6%から最近は2%台に落ちた。 韓国の場合、労働生産性増加傾向は似た傾向を見せているが、生産性自体が低い。 2016年基準で韓国労働者の時間当りの労働生産性は33ドル(実質購買力基準)で、 米国の52%、ドイツの55%、日本の79%程度でしかなく、OECD35か国のうち27位だ。

韓国の労働生産性が低いのは、 何よりもサービス業と中小企業の生産性が低調なためだ。 OECDは5月の経済展望報告書(OECD Economic Outlook)で 「これまで低生産性を長時間労働で補完してきたが、 週52時間導入、生産可能人口減少などを考慮すると、生産性向上が必須」とし 「特に製造業の半分程度のサービス業の生産性、 中小企業の生産性向上が重要だ」と明らかにした。

2015年基準でサービス業労働生産性は時間当り約24ドル、OECD中最下位で、 製造業労働生産性の51%程度に過ぎない。 2006〜2015年のサービス業就業者の年平均増加率(2.1%)が 製造業(1.2%)を上回り、 サービス業の低い生産性とかともに全体の労働生産性成長の勢いが鈍化した。[1] 特にサービス業のうち卸小売・飲食宿泊・運輸などの生産性が伝統的に低いサービス業就業者の割合が高く(36%)、 製造業に対するサービス業就業者が大幅に増加して労働生産性の増加率がさらに低下している。 また、製造業では中小・中堅企業の労働者数が全製造業労働者の大多数を占有しているが、 2016年の大企業に対する中小企業の労働生産性は32%に過ぎない。 大企業はすでに生産工程を相当部分自動化し、生産性は世界的にも高い水準だ。 製造業1万人当たりのロボットの割合は圧倒的な1位を占めており、 ほとんどが大企業に集中している。 しかしサービス業と中小企業の生産性は、なぜこれほど低いのか? ここに韓国資本主義の秘密が隠されている。

中小企業の労働生産性

OECDによれば、大企業の労働者の生産性を100%とすると、 中小企業の労働者の生産性は32.5%でしかない。 これはOECD会員国のうち4番目に低い。 先進国の場合、中小企業労働者の生産性は大企業の50〜60%程度だが、 韓国は1/3にも達しない。 こうした生産性の格差は政府の大企業中心の製造業輸出主導成長にある。 政府が財閥大企業を中心に支援して二極化と不平等を深め、 中小企業が成長する機会を剥奪したのは周知の事実だ。

こうした生産性の格差は企業間の賃金格差を加速化し、 大企業がアウトソーシングしたり下請企業に低単価で製品を納品させは、下請企業、中小企業は その企業の労働者に低い賃金を強制するようになった。 大企業は収益を極大化するために下請企業に単価引き下げを直接的、 あるいは迂回的な方法で強制し、 不公正な取り引きを続けて問題になった。 その結果、中小企業の役割は小さくならざるをえず、 付加価値配分における中小企業の人件費の割合は65.6%で、大企業の42.6%より大きい。 大企業と中小企業間の付加価値に対する人件費の割合の格差はOECD国家で最高の水準だ。

韓国銀行はこうした大企業の人件費の割合が低いことの理由として、 まず大企業が持つ機械装置や装備、建物など類型固定資産の比重が高いうえ、 第二に、賃金が低い中小企業の人員を多く活用する点、 第三に、海外直接投資を増やして韓国の中小企業との納品単価交渉力が強い点を上げた。 結局、現在の生産力の格差と賃金の格差も、大企業の独占力により発生した。 [2]

サービス業の労働生産性

製造業の自動化率は、サービス業より相対的に高い。 特に「組み立て産業」に属する携帯電話・電子・自動車などは、 機械が生産を主導するスマートファクトリーに近いほどだ。 韓国の自動車産業の自動化率は世界最高で、80%を越える。 だが鉄鋼・化学・セメント・製紙などの工程産業は老朽設備の交換が容易ではなく、 多くの人員が必要だ。 今後、製造業はスマートファクトリーの部分に集中する展望だ。 同じように、サービス業も金融、保険、医療、教育、流通で、 大型化、自動化などにより人員を削減して生産性を高める領域がある。 実際にこの領域では生産性は着実に増加している。

しかしサービス業種のうち主に人間の労働を必要とする販売、建設、運輸、美容業などは、 単純な人員削減による生産性の向上とは違う基準で評価される。 一番雇用をする卸小売業も同じだ。 サービス価格が最終価格なので、これがそのまま生産量になる。 ここは時間当りの賃金がサービス価格を決め、 サービス価格の値上げが生産性の増加に直結する。 たとえば、ヨーロッパ、特に福祉国家と呼ばれる所ほど、 サービス料金は想像を超えるほどに高い。 人件費、すなわち労働力価値が高く、サービス価格が高いため、生産力もまた高い。 だが韓国では製造業に対するサービス業の生産性は50%程度でしかない。 人件費が低く、サービス価格も低く、生産性も低いからだ。 最長の労働時間で、労働生産性もほとんど最下位に属する。

賃金が上がればサービス価格も上がり、北欧のように物価も上がる。 賃金が上がっても同時に物価が上がれば朝三暮四だ。 実質購買力には違いがない。 また、該当業種の付加価値創出能力にも限界があるので、 サービス価格の値上げにも一定の限界がある。 ところが労働力価値が高まるため、賃金も、価格も、物価も上げ、 生産性も上げなければならない。 先に労働生産性が購買力基準でOECD 35か国中27位だと述べたが、 平均的にすべての労働者の賃金を今より二倍近く上げなければならない (購買力基準で労働生産性が先んじようとするなら、 物価が固定されるか物価上昇の速度よりも賃上げの速度が二倍以上にならなければならない)。

最低賃金と労働生産性

ここに最低賃金引き上げの問題がある。 実際に労働生産性を向上させるには、 サービス業の労働時間を減らすか、付加価値生産を増やさなければならない。 サービス業における付加価値は、主にサービス価格なので、 労働費用の引き上げはサービス料金の引上げに反映され、 サービス業の生産性が向上する。 ところで、サービス業は労働者の生活と関連があり、 サービス料金の上昇は生活物価上昇をもたらす。 この話は、全体労働者の賃金が上がらなければならないということを意味する。 賃金は労働力再生産の費用であり、 生活物価上昇は再生産費用の上昇をもたらし、 賃金がそれ以上上がらなければ実質賃金が下落したのと同じ状況になる。

▲外国為替危機以後の製造業とサービス業間の賃金格差推移と原因分析(クォン・ドッキ、チョン・セウン、民主社会政策研究所通巻31号. 2016)から再引用.

そのため労働者の賃上げを抑制するために、 生活物価と関連するサービス料金の引上げを抑制しなければならず、 それによりサービス業(生活物価と関連が多い卸小売個人)労働者の賃金が 製造業賃金よりはるかに下に維持された(上のグラフ参照)。

このように、最低賃金の引き上げは最低賃金対象の労働者の賃上げで直接的な効果が現れるが、 サービス料金が上がれば生活物価が上がり、全体労働者の賃金上昇要因が発生する。 資本はそのために大げさに騒いで最低賃金を抑制しようとするのだ。 また、全体労働者の賃金が抑制されることも労働生産性の増加を抑圧する要因として作用する。

したがって、サービス業と中小企業の生産性向上を抑圧するのは最低賃金ではなく財閥大企業であり、 財閥支配体制の韓国の経済構造だ。 財閥の私的独占こそが生産性向上を遮る原因であり、 正規職、非正規職または大企業と中小企業、 あるいは製造業とサービス業のような産業間の賃金格差と生産性格差を発生させる原因だ。

だが元下請不公正慣行を根絶して独占を適切に規制すれば、 産業間、企業間、労働者間の均衡と公正性を担保できるのか? 現実的には、こうした独占規制は、せいぜい先進国と同じように 大企業の50%程度 [3] で分けあうことになる。 中小企業労働者の賃金が大企業労働者の1/3であるよりも1/2のほうが良いのではないかという反問が可能だが、 行く道ははるかに遠い。 独占の弊害は、日本、ヨーロッパ、米国などの独占規制が韓国よりも活性化している先進資本主義国家と大きく違わない。

財閥が特に悪辣で、質が悪い資本だからというような話ではなく、 独占の論理と様式がこうした格差を量産し、 それによりさらに多くの独占利益を得る構造に発展した。 サムスンを解体すればどこかの中小企業がサムスンの代わりに半導体で電子機器を生産するのだろうか? 私的独占は、国家的、社会的な独占によってのみ問題を解決することができ、 社会的独占の下で労働者間、企業間、産業間の均衡発展と民主主義を達成することができる。 財閥を社会化して独占利益を社会化しなければならない理由もこれと同じだ。

[1] 「労働生産性増加傾向鈍化原因と対応方案」、Weekly KDB Report、2018.4

[2] 最近の企業規模別付加価値配分現況および示唆点、韓国銀行京畿本部、2018.1

[3] 上述の通り韓国中小企業の生産性は大企業の30%程度でしかなくドイツ、日本などは50%台だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-26 16:43:28 / Last modified on 2019-08-02 18:03:24 Copyright: Default

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