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米中対立の中で強要される韓国の選択は?

[朝鮮半島]周辺国家との国際的連帯を追求しなければならない

ペ・ソンイン(聖公会大) 2020.10.07 08:00

[出処:ウィキペディア]

米中競争と対立をめぐるいわゆる「トゥキディデスの罠(Thucydides Trap)」にはまり、 望まない戦争に駆け上がっているという分析がある。 トゥキディデスの罠は、ギリシャの歴史がトゥキディデスが記述したペロポネソス戦争(紀元前431〜404)に由来する。 新しく浮上する勢力が支配勢力の地位を奪うために威嚇してくる時、 深刻な構造的な緊張が発生する現象をいう。 米中間にも相互の衝突が避けられず、戦争の可能性が高いということだ。 こうした観点は中国威嚇論に土台をおく米国の主流的な観点を代表し、 韓国でも強い関心を引いている。 だがその関心が憂慮になるのか取越苦労に終わるのかは誰にも分からない。

ところで30年ほど前から提起されてきた中国威嚇論は目新しいものではないが、 ますます増幅されており、強い憂慮が生まれている。 なぜなら、トランプ米行政府が周辺国家に、 そして韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政府にも、 中国と米国のうちどちらにつくのかという選択を強要しているためだ。 これにより文在寅政府は 選択のジレンマに陥ってしまった。 先ごろのTHAAD配置の経験を通じ、どちら側の肩を持っても危険だということを知ったためだ。 いわゆる関与の危険性に置かれることになったのだ。

米中戦略競争が文在寅政府に直接の影響を与える事案は大きく3種類だ。 最初に経済分野では米中経済圏のデカップリング(decoupling)と 経済繁栄ネットワーク(EPN)構想が招く経済的波紋だ。 二番目は、軍事安保的衝突の危険性だ。 三番目は、米国行政府の権力が共和党から民主党に変わればどうなるかという点だ。

激しい米中対立と米国の圧迫

中国威嚇論の核心は単純だ。 米国が世界2位の経済大国に浮上した中国が、 米国の覇権を威嚇しないように事前に遮断するということだ。 中国は改革・開放以後、資本主義制度と方式を導入して多くの恩恵を享受した。 米国はその恩恵の相当部分が自国のためだったのに、 中国の内部は「中国特色」という便利な定規を打ち出して自分が望む方向に変化しなかったと判断している。 それで米国は中国威嚇論を解消するために強弱を調節しながら中国を威嚇している。

現在の米中対立は新しい冷戦と呼ばれるほど鋭い。 政治的には軍事安保を含む国力の対決だ。 経済的には米国式資本主義と中国式資本主義の対決だ。 社会的には価値観の対決であり、イデオロギーの対決だ。 技術的には科学技術覇権の対決だ。 つまり全部門を包括する全方位的な対決だ。

9月15日から米国の「ファーウェイ禁止措置」が発効した。 これで中国の代表的な情報技術企業であるファーウェイが 米国政府の制裁で半導体部品を新しく買えなくなった。 ファーウェイを対象にした米国政府の制裁は2019年5月に始まった後、 ずっと水位が高まってきた。 このようなファーウェイ制裁は、 世界の通信装備とスマートフォン市場に大きな変化を招くものと見られる。

米国の実際の目的は、 ファーウェイが米国とその同盟国で展開される通信基地事業、 特に5Gでの覇権掌握を阻止することだ。 そして中国政府が進めている「中国製造2025」の実行を中止させることだ。 これは米中対立が単なる貿易戦争ではないということを語る。

5Gはファーウェイにとって諸刃の剣だ。 次世代移動通信インフラの覇権を狙う機会でもあるが、 これを牽制する勢力から強烈な反発を招くためだ。 2014年、米国の政府機関はファーウェイ製品の使用を禁止する措置を断行した。 2018年にはFBI、CIAなどの米国秘密情報局幹部が ファーウェイ製品やサービスの利用を遠慮すべきだという発言を相次いで出した。 そして今回、禁止措置が発効したのだ。

5月にホワイトハウスでとても重要な対中国戦略報告書が出された。 ホワイトハウスが 「中国に対する米国の戦略的接近(United States Strategic Approach to the People』s Republic of China)」 という報告書を議会に提出した。 この報告書でトランプは米国に対する中国の挑戦1順位に経済をあげた。

この報告書は特に習近平主席が「一帯一路」戦略で開発途上国を圧迫し、 米国の利益を阻害して中国共産党理念を前面に出し、 友好国間の共同体意識を解除しようとしていると非難した。 またファーウェイとZTEなどの5G情報通信関連会社をあげて 米国内のサイバー保安法を制定して不公正な方式で 次世代情報通信ネットワークを掌握しようとしていると強調し、 これを世界安保脅威とした。

そして打ち出した代案が経済繁栄ネットワーク(EPN)構想だ。 EPNの内容と原理は事実上、米中のデカップリングによる「信頼できるパートナー」との反中経済同盟と理解できる。 EPNの一次的な対象は英国、オーストラリア、インド、カナダ、日本、ニュージーランド、イスラエル、台湾、韓国、ベトナムが議論される。 要するに、EPNは米国の企業に脱中国を要求する一方、 米国への回帰が現実的に難しい場合、その人員と生産施設をもっと米国に友好的な EPN参加国に移転するように誘導するということだ。 しかし米国はまだ具体的な実行方案を提示できずにいる。

9月16日にはマーク・エスパー米国防長官が インド・太平洋地域で米国が結んでいる二国間協力が多国間化されるほど良いとして 北大西洋条約機構(NATO)を「立派な基準」と打ち出した。 中国の威嚇に対応するために「インド・太平洋版NATO」構想を拠論したのだ。

トランプ行政府が打ち出したインド・太平洋安保ネットワークの核心に 「米国・日本・オーストラリア・インドの4国協力(以下、クアッド(日米豪印戦略対話))」がある。 しかし米国はクアッド(日米豪印戦略対話)を拡大して 韓国、ベトナム、ニュージーランドの3か国を含む 新しい大衆連合体を構想している。 いわゆる「クアッドプラス」だ。

現在、米国はインド・太平洋地域にNATO型の大衆封鎖戦略構想に韓国の参加を強要して圧力をかけている。 これに対して文在寅(ムン・ジェイン)政府は クアッドプラスが7か国の会談であり、 韓国が参加する多様な防疫関連の小さな多者会議体の一つでしかないと話す。 だがこうした立場がいつどう変わるのか分からない。 政策的変化が深刻な政権だからだ。

中国のジレンマ

米国の強力な措置と態度により、中国はジレンマに陥った。 中国の改革開放自体は米国を中心とするドル体制に便乗している。 そのため中国は急速な経済成長と同時に対米脆弱性も高まるジレンマに処することになったのだ。 米国から稼いだドルでまた米国の債権を購入し、 米国経済と同調することにより「ドルの罠」にはまり、対米脆弱性も高まった。 また、中国は安く代替可能な消費財を米国に輸出し、代替不可能な知識商品を米国から輸入する。 中国のファーウェイに対する米国の制裁が中国企業、 さらに中国にとって大きな打撃になるのはそのためだ。 米国に対する中国の経済的脆弱性、つまり技術と知識、商品への依存、いわゆる「ドル中毒」、 高い貿易依存度から抜け出すために、 中国は「一帯一路、人民元の国際化、技術振興」を推進したわけだ。

中国が現在の対米輸出指向型経済構造を変えられない限り、脆弱性は続くほかはない。 特に現中国社会の核心エリート階層といえる都市地域官僚と共産党資本家が こうした対米経済構造の核心受恵者だという点でもそうだ。

したがって、米中対立が極端に行く可能性は小さいかもしれない。 最近、米国の金融企業も長期的な展望を持って中国に進出している。 国際金融の中心地がアジアに移転していることに対する判断が作用したのだ。

これと共に、中国の内部規制措置も緩和されている。 最近、中国は経常黒字が低下傾向で赤字につながっており、 外国資本の必要性が高まっている。 これを反証するかのように、中国内の規制が解除されている。 米国の金融企業の危険負担が思ったより小さいかもしれないのだ。 逆説的だが、米中対立が中国には国際金融の中心地に跳躍する機会になるかもしれない。

では韓国の選択は?

最近、興味深い世論調査結果が発表された。 米国の世論調査機関ピューリサーチセンターが9月15日、 米国の13の同盟国の成人1万3273人に電話で調査した結果、 韓国と日本だけが米国を世界経済のリーダーと感じているということだ。 韓国・日本を除く11同盟国(ドイツ、英国、フランス、スペイン、イタリア、カナダ、オーストラリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン、ベルギー)は、 中国が世界経済のリーダーだと答えた。 こうした結果は多者貿易を守るという中国と、 保護貿易を中心として新しい貿易秩序を作ろうとする米国の対外経済政策の差が反映された結果と見られる。 その上、トランプ米大統領は6人の指導者の中で最低の信頼度を記録した。

もちろん、こうした調査結果が次期米大統領選挙に影響することはないだろう。 明らかなことは、日本だけは明らかにトランプの再選を望んでいるということだ。 あとの国家はトランプの再選を望んでいないようだ。 いまや米国の地位が過去とは違うので、 国際社会における米大統領の影響力も以前と同じではない。 また、力で屈服させようとしたり、交渉を強要する時代は終わった。

トランプの再選が文在寅(ムン・ジェイン)政府の選択や朝鮮半島問題に役に立つという保障はほとんど消えた。 合理的で常識的な面で、トランプの今後の動向は予測しにくいからだ。 この4年間のトランプの態度はほとんど賭博に近かった。

民主党候補のバイデンは原則に忠実な政治家と言われている。 したがって、民主党の政治綱領政策が同盟国重視の回復を予告しているので、 駐韓米軍の一方的な撤収や削減の議論、 過度な防衛費分担金増額の要求などはこれ以上続かないだろう。 しかし多者貿易体制を復元して米国商品輸出(Buy American)を拡大すると公約しているので、 同盟国との以前のような貿易摩擦が再燃する可能性も考えられる。 また、トランプ行政府が脱退した協約や機構に復帰することにより、 世界的な指導力を回復しようとするだろう。 バイデンの原則は、徹底した米国中心の覇権主義だ。 彼の当選が朝鮮半島問題に役に立つとすれば、 政策の原則と基調に変化がなければならない。

結論的に、誰が当選しても世界戦略や朝鮮半島問題の基調には大きな変化はないだろう。 ただし、朝鮮半島の平和の方向性はすでに決まっているので、 誰もこれを傷つけるのは難しいだろう。

ではジレンマに陥った文在寅政府にはどんな選択が必要だろうか。 これまで文在寅政府は 米中対立状況の中で「戦略的曖昧性」を外交戦略として駆使した。 米国と中国の間でどちらか一方に近付くことに負担を感じたためだ。

文在寅政府は 米中対立が極端に行く可能性は低いので、 米国の圧迫に即刻応答をする必要はない。 今、米中対立にかかわっている国家は数十か国に達する。 これらの国と相互に連帯して対応する必要がある。 今こそ国際主義を発現させる時だ。

[参照]
田中道昭、チョン・スンウク翻訳、『米中プラットフォーム戦争 GAFA vs BATH - AI時代メガテック企業、最後勝者は?』(世宗書籍、2019).
パク・ホンソ、『米中カルテル』(2020、フマニタス).
https://www.pewresearch.org/global/2020/09/15/us-image-plummets-internationally-as-most-say-country-has-handled-coronavirus-badly/

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-10-16 22:17:14 / Last modified on 2020-10-16 22:17:16 Copyright: Default

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