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ストライキと交渉を支配する使用者側の武器、「必須維持業務」

労働委員会と使用者側の必須維持業務乱用...公共部門労働三権を妨害

ユン・ジヨン記者 2019.10.10 15:42

政府機関と企業、雇用労働部が必須維持業務制度を乱用し、 公共部門労働者の団体行動権を制約しているという批判が上がっている。 使用者側が過度な必須業務率を要求し、 ストライキを誘導したり、労働委員会でむやみに高い必須維持運営水準を決定し、 ストライキを無力化する形だ。

必須維持業務とは、業務が停止すると公衆の生命や健康、 身体の安全や公衆の日常生活を顕著に危険になる業務をいう。 現行の労組法によれば、鉄道および都市鉄道、航空運輸、水道、電気、ガス、石油、 医療、韓国銀行、通信事業などが必須維持業務にあたる。 必須維持事業場の労使は、争議行為期間中にも最低限の業務を維持するための必須維持協定を締結しなければならない。 労使間合意が行われなければ、労働委員会がこれを決める。

[出処:チャムセサン資料写真]

使用者の武器になった必須維持業務制度

最近、地下鉄、鉄道労働者のストライキで、 使用者側が必須維持運営水準の決定をめぐり労組を圧迫する事例が続いている。 龍仁軽電鉄の場合、労使交渉が始まるとすぐ使用者側が必須維持協定を要求した。 その上、使用者側は一部の業務に対して100%必須維持率を提示して交渉が難航すると、 すばやく労働委員会に必須維持業務維持水準決定を申請した。 このように、使用者側が必須維持率決定に積極的な理由は、 必須維持率が高く決定されれば労組の団体行動権が遮られ、 事実上、労組の無力化までが可能になるためだ。

公共運輸労組龍仁軽電鉄支部のイ・ソクチュ支部長は 「団体協約交渉と共に必須維持協定も議論することにしたが、 使用者側は団体協約議論よりも必須維持協定交渉の回数を上げることに集中をした」とし 「顧客支援チームの場合、労組法上の必須維持業務に含まれないが、高い水準で要求した」と明らかにした。

続いて「管制チームは普段は5人、休暇期間には4人が3後退で働いているが、 会社は管制チームの必須維持水準を5人、つまり100%と提示した」とし 「必須維持業務制度とは、公衆の生命と安全を顕著に威嚇しないように、 最小維持率を定めることだが、 そうすると会社が休暇期間には公衆の生命と安全を顕著に威嚇しているということではないか」と声を高めた。

10月15日に全面ストを準備している西海線支部も、 必須維持率をめぐって会社と対立している。 会社が必須維持率を決めずにストライキをすれば、 不法ストライキになって損害賠償請求が可能だと言って労組を圧迫している。 西海線の労使はこれまで必須維持協定のための交渉を進めたが合意に至らず、 労働委員会に必須維持決定を申請している状態だ。

公共運輸労組西海線支部のチョン・ムンソン支部長は 「会社は全体で60〜70%ほどの必須維持率を提示し、 状況室と運転取扱職種は100%の維持率を提示した」と説明した。 会社の社長は10月7日に書簡を発表して 「現在、わが事業場は労使間の必須維持業務協定が未締結な状態で、 専門家の意見によれば労使間で必須維持業務協定を締結する前の 労働組合による争議行為は不法行為にあたる可能性があるという意見」とし 「もし今回の争議行為が不法行為に当たれば、 無労働、無賃金原則は基本として、 ストライキの関連者に対する民事・刑事上の責任、 および人事上の不利益などの処分は避けられない」と明らかにした。

龍仁軽電鉄支部と西海線支部はどちらも今年のはじめに 労働組合に加入した新生労組だ。 二つの事業場は10月11日、京畿地方労働委員会の必須維持決定事件調停会議を控えている。

通信業界でも必須維持業務水準をめぐる労使の対立が続いている。 LG U+も労組に83%という過度な必須維持率を提示し、必須維持協定交渉が決裂した。 その上、該当事業場の団体協約には必須維持業務協定に準じる条項が残っており、 会社が労組を無力化するために意図的に必須維持率を上げようとしているのではないかという批判も出てきている。

希望連帯労組ハンマウム支部のイ・ジョンサム支部長は 「20年前の全面ストライキの時、 団体協約に管制業務の20%を必須維持業務で残すという条項を作り、現在も有効だ。 それでも会社は83%の必須維持率を提示して必須維持協定を要求している」と説明した。 現在、該当事業場の必須業務率の決定は、ソウル地労委に渡った状態だ。 通信業界では必須維持業務に関する初の決定なので、労使ともに神経を尖らせている。

10月11日にストライキを控えている全国鉄道労組と16日にストライキに突入する予定のソウル交通公社労組は、 会社と必須維持協約を締結した事業場だ。 公共運輸労組のパク・チヨン公共機関事業局長は 「普通は60〜70%台で必須維持協定を締結するが、 ストライキ参加人員の50%を代替人員として投入でき、 事実上、ストライキに入っても正常に運行される」と説明した。 ただでさえ必須維持率が高いうえに、代替人員まで投入されると、 争議行為は完全に無力化されるという指摘だ。 続いてパク・チヨン局長は 「何より深刻なのは、会社が施行令に明示された必須維持業務の他に、 必須維持業務にあたらない業務にも必須維持率の決定を要求していること」と説明した。

「ストライキ」の意味も知らない労働委員会...必須維持率は無条件に高く

労使間の必須維持協定が不発になると、 労働委員会が必須維持運営水準を決めることになる。 だが労働委員会も具体的な根拠なく必須維持率を高く決めているため、 団体行動権の無力化の一助になっているという批判が出てきている。

[出処:公共運輸労組]

現在、労働委員会で必須維持運営水準が決定された事業場は、 ソウル9号線運営(株)(9号線1段階)と釜山交通公社だ。 ソウル9号線運営(株)の平均必須維持率は62.5%、 釜山交通公社1〜3号線は64.5%に決定されたが、 釜山交通公社4号線は何と76.1%に決定された。 労働界では専門性を持たない労働委員会委員が特別な根拠なく 「正常運行」に合わせて高い必須維持率を決めていると批判している。

実際に、2011年に釜山地方労働委員会が釜山交通公社4号線の 必須維持業務維持運営水準を決めた決定文によれば、 管制業務は100%、車両点検および整備業務は78%、 線路点検および保守業務は75%と、必須維持率を決定した。 管制業務に関しては 「常に一定の業務水準が維持」されなければならなず、 「ストライキをはじめとする非常時には正常な列車の流れを阻害する要因の発生が増加すると予想される点」等を根拠に上げた。

車両点検および整備業務は 「整備業務が管制業務に劣らず重要性が高い」という理由で、 線路点検保守業務は特別な説明なく 「争議行為期間だとしても作業時の安全確保のために普段と同様に運営することが妥当」 だという理由などで高い維持率を決定した。 そのため、労働委員会が業務の正常運営を阻害する「争議行為」と、 最低の維持運営水準だけを残す「必須維持業務」の意味も知らないのではないかという皮肉も出てきている。

使用者側としては、労働委員会の高い必須維持率決定を歓迎せざるをえない。 龍仁軽電鉄などの事例で見るように、 会社が直接労働委員会の判定を求めたりもする。 今まで労働委員会は、管制業務などに対して100%の必須維持率を決定してきたし、 現在は必須維持業務協約締結を前にした事業場の会社は、 これと同等の水準の維持率を労組側に要求する傾向になっている。

このような事情にもかかわらず、 労働委員会が必須維持率を決定すれば元に戻す方法は多くない。 8月に国会で開かれた 「必須維持業務制度解決方案摸索のための討論会」で、 民主労総法律院のクォン・ドゥソプ弁護士は 「(必須維持率決定に対する)不服方法も違法、越権に限定されていて実効性がない」とし 「実際に2008年以後、労働委員会が一方的に決定した必須維持業務の決定は(特に維持率の過多)、 その後の司法的統制の過程で是正された件は一つもなかった」と明らかにした。

適当にかければかかる「必須維持事業場」…労働三権を無力化

現在、団体行動権に制約がある事業場が実際に「必須維持事業場」かどうかにも かなりの意見の差がある。 労働委員会で高い必須維持率を決定した釜山交通公社4号線や 龍仁軽電鉄、西海線などは、既存の鉄道とは異なる輸送システムだ。 軽便な電気鉄道である軽電鉄は、 地下鉄とバスの中間程度の輸送能力を備えた大衆交通手段に分類される。 その上、バスより運送の負担率が低いが、バスは労組法上、必須共益事業場にあたらない。

[出処:鉄道労組]

実際に、龍仁軽電鉄の交通分担率は7.1%で、 バス(25.8%)、乗用車(60.1%)より著しく低い。 その上、龍仁軽電鉄は列車1両で、京畿地域の2階バスより座席数も少ない。 龍仁軽電鉄支部のイ・ソクチュ支部長は 「今年1月に龍仁軽電鉄は一日2万8千人、 京畿地域の66番バスは3万2千人が利用していた」とし 「必須維持業務の実質的要素が 『公衆の生命と安全を顕著に威嚇』するということだが、 運送負担率がバスより低い軽電鉄での争議行為が 公衆の生命と安全を顕著に威嚇するということは納得できない」と説明した。 西海線の場合も運送負担率が4%に過ぎない。

LG U+のような通信事業分野も、必須維持業務かどうかは不透明なのは同じだ。 ハンマウム支部のイ・ジョンサム支部長は 「(必須維持事業場に)含まれる理由がない。 不便があるだけで、国民の生命と安全、生活の低下をもたらしたり、 通信のブラックアウトが起きることはない」とし 「現在、システムが構築されていて、システム中で障害が発生しないように二重化されている。 ただし、使用者側は電話が切れる状況のような不便のために顧客が離脱することを心配しているだけ」と説明した。 続いて彼は「必須維持業務は国民の生命と生活に顕著な影響を与える業務だが、 顧客が離脱することを恐れて必須維持業務だと主張するのは不当だ」と強調した。

このような必須維持業務の過度な適用は、 公共部門の労働者によるストライキの影響力を弱めるばかりか、 団体交渉権などの労働三権を無力化する役割を果たす。 パク・チヨン局長は 「必須維持率が高いだけでなく、代替労働も投入できるので、 労組がストライキをしても使用者側が交渉で前向きな提案を出さない」とし 「そのために交渉段階から対話で解決せず、 むしろ会社はストライキをしろとあおったりもする。 団体行動権だけでなく、団体交渉権も制約を受け、 事実上憲法に明示された労働三権が無力化される」と強調した。

その上、必須維持制度によって労使対立が解決できずにストライキが長期化することもある。 公共運輸労組によれば、釜山地下鉄労組の場合、 必須維持制度が導入された2008年以後にストライキ日数が大幅に増加した。 制度の導入前は平均3日だったストライキ日数は、 2009年に7日、2016年には21日に増えた。 鉄道労組も制度導入後の2013年に23日、2016年には73日間のストライキを行った。

一方、国際労働機構(ILO)は2017年に、韓国政府に対して 鉄道および地下鉄分野を必須維持制度適用から除外しろと勧告した。 ILOは「必須サービス」を市民の生命と身体的安全、健康を危険するものと定義しており、 医療と電力および水道、消防サービス、警察や軍隊などを提示している。 これと共に現在、公共運輸労組は都市鉄道分野の一時的な運行停止は、 公衆の生命、健康または身体の安全や日常生活を顕著に危険する場合ではないので、 業務維持率は0%にしなければならないと要求している。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-10-13 02:07:47 / Last modified on 2019-10-13 02:07:48 Copyright: Default

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