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市民社会界、ヘイトを突破して包括的差別禁止法制定のためにまた始動

差別禁止法制定連帯、「2018差別禁止法案」を公開

キム・ヘミ ビーマイナー記者 2018.08.30 19:46

▲8月29日、差別禁止法制定連帯と国家人権委員会主催で差別禁止法制定のための討論会「差別禁止法、軌道に上げる」が国家人権委員会で開かれた。[出処:ビーマイナー]

保守プロテスタント界の反発により、これまで11年間座礁してきた 包括的差別禁止法の制定に向けた市民社会界の動きがまた本格的に始まった。

8月29日、差別禁止法制定連帯と国家人権委員会(以下、人権委)の主催で、 差別禁止法制定のため「差別禁止法、軌道に上げる」最初の討論会が人権委10階で開かれた。 この日、差別禁止法制定連帯は法曹界および市民社会が共に作った差別禁止法案の核心内容を共有し 「差別禁止法制定の正当性を越え、実際の制定が必要な時期」と強調した。

来年3月、韓国政府は国連社会権委員会の差別禁止法制定勧告履行状況を報告しなければならないが、相変らず微動もしていない。 現在、韓国には包括的な差別禁止法がなく、 「障害者差別禁止および権利救済などに関する法律(以下、障害者差別禁止法)」などの 個別の差別禁止法しかない。

差別禁止法制定をめぐる歴史は11年前に遡る。 人権委による差別禁止法制定勧告に対し2007年10月、法務部は差別禁止法案を立法予告する。 そしてその年末、政府は差別禁止法案を国会に発議するが、当初立法予告された法案と違い 「性的指向、学歴、家族形態および家族状況、兵歴、出身国家、言語、犯罪および保護処分の前歴」という7つの差別禁止事由が削除された。 「性的指向」などを問題にした保守プロテスタント界の圧力で、政府が一歩後退したのだ。 当時17代国会で発議されたこの差別禁止法案は、結局「つぎはぎ」という汚名を被って国会の期間満了で自動廃棄される。

これについて人権運動サランバンのミリュ常任活動家は 「削除した7つの分野に対して、国家は差別を許容してもいいというメッセージを投げたようなもの」とし、 この時から市民社会が本格的に差別禁止法に注目することになったと明らかにした。 その後、市民団体はまともな差別禁止法制定を要求して政府を圧迫したが、 保守プロテスタント勢力などによっていつも挫折した。

李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権(2008〜2017)を経て 「ヘイト」は露骨な社会の一断面としてあらわれた。 イルベを中心とするヘイトの嵐、保守プロテスタント中心の同性愛嫌悪、 2016年の江南駅女性嫌悪事件などが代表的だ。 現在でもヘイトは続いている。 朴槿恵弾劾後の大統領選挙では、 洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補が文在寅(ムン・ジェイン)候補に 「同性愛に反対するか」と聞き、同性愛を賛否の問題に推し進め、 文在寅の当選以後に憲法裁判所長と大法院長人事聴聞会も 同性愛関連のヘイトスピーチがあふれた。 その上、今年の5月、済州道に入国した78人のイエメン難民に対する難民ヘイト発言が爆発した。 そうしてヘイトの色彩が強まるほど、差別禁止法制定を要求する声も高まった。

▲この日討論会には椅子が足りず立って聞く人まで出るほど多くの人々が出席した。[出処:ビーマイナー]

法に違反すれば、刑事処罰より是正措置などの柔軟な対応の方が効果的

この日、差別禁止法制定連帯のチョ・ヘイン共同委員長は、 立法準備中の差別禁止法案を公開し、「差別」の概念を次のように定義した。 現行の人権委法に規定された19項目の差別禁止事由の他に、 国籍、性別アイデンティティ、出身、雇用形態、経済的状況、遺伝型質などを追加して、 差別禁止領域には雇用、教育、財貨・用役・施設などの供給や利用、 行政サービスなどの提供や利用を含めた。 差別の類型は、直接差別、間接差別、いじめ、セクハラ、差別表示助長広告、差別指示などに拡張した。 差別の例外として真正職業資格(特定の職務や事業遂行の性質上避けられない場合)、 暫定的優待措置(現存する差別を解消するために特定の個人や集団を暫定的に優待する行為とこれを内容とする法令の制定・改定など)も置いた。

それと共に彼は「包括的差別禁止法は、現行の個別的差別禁止法と違い、 刑事処罰や行政制裁を差別の救済手段として使わない」と話した。 差別行為は個人の悪意よりも社会の偏見、固定観念、構造的差別に起因することが多いためだ。 つまり一人一人の行為者を刑事処罰するのではなく、 具体的な事例ごとに差別中止および是正措置、再発防止措置、教育と訓練などの多様な措置を柔軟に使う方が 根本的な差別是正のために効果的だと明らかにした。

続いてチョ委員長は人権委法よって差別禁止法がさらに多くの差別の領域を包括すると話した。 現行の人権委法は、差別に対する判断基準を第2条第3号の 「平等権侵害の差別行為」で判断するだけだが、 差別禁止法は各領域の関連者が差別予防のためにどのような措置を取るべきかを詳細に規定して、 差別の概念を拡張して具体化するためだ。

また、現行人権委法によれば、「業務に関連して」、 つまり雇用人と被雇用の関係の時に発生したセクハラだけを差別行為と明示し、 間接差別・いじめは人権委の法律上の差別ではない。 しかし差別禁止法には業務と関連しないセクハラ、間接差別、いじめなども差別事由とする。 現代社会で差別の性格が直接的で意図的な差別から、非可視的で間接的な差別に変化しているためだ。 いじめの場合、すべての構成員が同等に参加するべき雇用、教育、財貨用役などの領域で、 特定の個人や集団を孤立させたり排除して差別する効果を生むため、 これも差別の領域に含めた。

ところで差別されている人が問題提起しようとする領域が特定の差別行為ではなく、 差別的な目的/効果がある法令、政策、制度などの場合はどうか。 チョ委員長は「差別禁止法案は、差別的な目的や効果を持つ法令、政策、制度などに対しても陳情することができる根拠条項をおかなければならない」と話した。 差別的な目的や効果を持つ法令、制度などは、個々の差別行為よって社会に対してさらに大きな影響を与えると彼は説明する。 また、陳情が可能になれば、人権委も陳情内容に対して必ず実体的な調査を行い、 答える義務を持つことになる。

水原市人権センターのイ・チュンウン市民人権保護官も 「障害者差別禁止法など個別的な差別禁止法は、差別を領域別に分けた時、 具体的に対応できるという長所があるが、 差別が複合的に現れる場合は個別の法では対応が難しく、 結局包括的な差別禁止法が必要だ」と話した。 それと共に彼は、制度による差別を事前に防ぐために、 法令、政策などが施行される前に人権弱者に及ぶ否定的な影響を防ぐ人権影響評価制度の導入も考慮すべきだと話した。

人権委のチョ・ヒョンソク差別是正総括課長は 「障害者差別禁止法に力がある理由は、障害者差別に関して特殊な条項が詳しく規定されているため」とし、 「差別禁止法も強い効果を発揮するためには、障害者差別禁止法のように特別で詳細な規定を入れることで、差別を是正することができる」と話した。 それと共に「障害者差別禁止法には、障害者政策に関する計画を国家と地方自治体がたてるように規定しているが、 差別禁止法も『差別是正計画5か年』等をたてられるように明示する方案を考慮しなければならない」と明らかにした。

韓国性暴力相談所のノ・ソニ活動家は 「差別禁止法制定の意味は、法案の内容を細かく編み出して、 差別を予防して差別の被害者をきちんと救済できるようにすることにあるが、 いくら細かく法を構成しても、これを審議・判断する人が人権と平等への感受性が低ければ、 その意味は簡単に薄れる」と憂慮し、法執行者の人権感受性も差別禁止法がきちんと作用する要素の一つだと強調した。

性少数者差別反対ムジゲ(虹)行動のイ・ジョンゴル共同執行委員長は 「差別禁止内容には性的指向が入ったという理由で、 差別禁止法制定の試みがいつも失敗した」とし 「だが性少数者陣営は継続的に包括的差別禁止法制定を話してきた。 2018年に文在寅政府の中でこの差別禁止法が軌道に上がり、 ぜひ制定されるようにしたい」と切実な願いを伝えた。

今後、差別禁止法制定連帯はこの日準備した法案を基礎に、 立法推進、討論会、キャンペーン、平等のデモ行進など、 多様な方式で差別禁止法制定運動を続けていくと明らかにした。

一方、質疑応答および討論の時間には 「同性愛は転換治療できる」、「HIV/AIDS感染率が同性間で一番高い」と話す人々が、 司会者と討論者や傍聴者により制止されることもあった。[記事提携=ビーマイナー]

原文(ビーマイナー/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-09-24 00:17:05 / Last modified on 2018-09-24 00:17:06 Copyright: Default

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