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世界の労働者運動、衰退の中での跳躍

[翻訳] 2017メーデー、世界の労働者運動は

マルセル・バン・デル・リンデン(Marcel van der Linden) 2017.05.01 07:52

世界の労働組合運動は弱まっている。 しかし新しい信号が見られる。 世界の労働運動とデモは最近増えている。

「国際労働者の日(メーデー)」として宣言された1889年5月1日、 アルゼンチンからフィンランドまで、米国からロシアまで、ストライキとデモが起きた。 これは、新しい社会権力の出現を知らせる信号であった。 フリードリヒ・エンゲルスが「戦闘的な労働者階級の初の国際的行為」と記述した。 どこでも楽観主義が支配していた。 人々は「最後の決戦まで」、「インターナショナル」に明示された通りに武装した。 労働組合はまだ相対的に弱かった。 しかも産業化した国でも労組加入率は賃金労働者の4分の1にもならなかった。 英国では1914年にやっと23%になり、ドイツも17%に過ぎなかった。

しかしその後、労働運動は一時的な敗北と後退はあっても数十年間、前進した。 社会民主主義や共産主義労働者政党の影響だけでなく、 労働組合運動が世界へ拡散し、増加する労働人口を組織した。 この傾向は第二回世界大戦が終わった後の10年間が最も強烈だった。 しかし数十年間、この流れは正反対の道を辿った。

[出処:http://links.org.au]

低い組織率

世界的に組合員の割合は微かだ。 とても低い賃金労働者だけが独立労組に加入していて、彼らの多くは相対的に裕福な北大西洋地域に住んでいる。 ITUC(国際労働組合総連合)(IGB)が重要な上部組織として2006年に建設された。 これは世俗主義の改革的国際自由労働組合連合(ICFTU)とキリスト教主義世界労働連合(WCL)の合併により作られた。 2014年、ITUC(国際労働組合総連合)は世界的に約2億の労働者(中国を除く)が労組に加入していると推測され、 そのうち1億7600万人がITUC(国際労働組合総連合)所属だと明らかにした。 また、世界労働者の総数が29億人で、このうち12億人がいわゆる非公式部門で働いていると見た。 そのため組合員は世界的には7%にもならない。

労組の劣勢にはさまざまな要因がある。 まず、労働者階級の構成が変化し、変わり続けている。 労組はサービスと金融分野の労働者たちを組織するのには困難がある。 急激に成長する「非公式」経済はこの問題を深化した。 労働者たちは非正規職で何とかさまざまな雇用を転々としながら、不安定な条件で賃金を稼ぐ。 その上、中国やインド、ロシアの労働力が世界経済に吸収された1990年代初めからは、いわゆる「供給の衝撃」が生じた。 これで国際市場で生産する人の数はこの20年間でほぼ2倍に増え、同時に交渉力は弱まった。

二番目、甚大な経済的変化が起きた。 先進経済国と新興国で国外の直接投資が急激に増加し、 ヨーロッパ連合(EU)や北米自由協定(NAFTA)のような貿易ブロック化が強まり、 超国籍企業が増加した一方、 アウトソーシングと生産の再配置が普遍化した。 ブラジルやインド、特に中国は競技の規則を変える重要な新しい行為者になった。 1995年に設立された世界貿易機構(WTO)のような超国籍貿易機構も共に出現した。

三番目、多くの国で「旧式」の労組が新自由主義の攻撃を受けた。 一般的な団体交渉の慣行は地方分権と広範囲な個別契約により弱まった。 特に米国と英国のように新自由主義の「レジーム・チェンジ(政権交代)」が起きた国では労組を直接攻撃した。 こうした方式で弱まった労組は変化した労働関係にさらによく適応した代案的組織と深化した競争の中で危機に処した。 ブラジルや南アフリカ、フィリピンと韓国では戦闘的な労働者運動が起きた。 そして1970年代から既存の経路の外で基層労組の労組主義形式が登場した。 彼らは国際的に直接接触しながら、各国の労組関係者が官僚政治と緊密だと思えばこれを完全に迂回する。 よく知られた事例が超国籍情報交換ネットワーク(TIE)だ。 ここで多くの研究グループと活動家は超国籍企業に対する情報を交換する。

労組は世界的に弱まったが、これからも引続き力を失うものと見られる。 労働者政党の形態の連合勢力を失ったためだ。 一方では共産主義者が消え、他方では社民主義者が新自由主義の代理人になった。 その上、NGOが例えば児童労働禁止運動のように、労組運動の伝統的な役割を部分的に遂行している。

労働運動の機会

では労働者運動はどんな機会を持っているのだろうか? 現在の労働者運動は荒涼に見えるが、そうでもない。 まず、階級闘争は弱まらないだろうし、労働者たちも強力な組織を結成して多様な形態の闘争を遂行しなければならないという不可避性を引続き認識するだろう。 この主張は社会に不在の階級闘争に立ち向かう民族主義と宗教運動の事例が間接的に裏付ける。 彼らは支持者たちに社会保障と信頼、自己尊重感と明らかな生活の展望を約束する。 多くの貧民は多様な領域でそのような運動に魅了される。 ラテンアメリカとソサハラの福音主義教団や、 北アフリカと中東、中央アジアでのサラフィズムなどがそうだ。 他の事例ではヒンドゥ・ファシストのシブセナ運動がある。(中略)

二番目、グローバル労働市場はいつよりも大きくなった。 国際労働機構(ILO)の最近の研究によれば、中東と北アフリカの労働力人口は1980年から2005年の間に149%成長した。 西サハラ、アフリカ、ラテンアメリカとカリブ海では約2倍になり、南アジアでは73%、東南アジアでは60%増えた。 同時に個別の地域内でも相当な変化が現れた。 離農と移住が歴史的な規模で急速に現れている。 2000年、中国統計庁は移住労働者を1億1300万人と推算した。 10年後、この数字は2億4000万人と2倍以上に増えた。 インドで国内移住は1990年以来、爆発している。

このような変化は三番目に、社会的闘争を深化させるだろう。 インドネシアでは2012年10月3日、10月31日と2013年11月11日、インドネシア労総が最低賃金50%値上げのために全国ストライキを起こした。 これはゼネストではなかったが、数十万人の労働者が参加し、特に首都ジャカルタの労働者の参加が大きかった。 インドでは同一労働・同一賃金の導入と生計保障のために、インフレと賃金上昇率を連係させる制度を導入させようと1億人以上がストライキした。 中国では2004年から始まった労働力不足現象がデモにつながっている。 中国社会科学院は2006年に6万件以上の大衆騒乱(賃金労働者と農民および宗教団体が行った大衆デモ)が発生したと発表した。 2007年には8万件だ(さらに正確な数値は発表されていない)。 その後には公式発表はないものの、専門家たちはこの数はもっと増えたと見ている。 経済危機が始まった後のギリシャでは30件以上の全国的なストライキが起き、 スペインとポルトガルでも数回のゼネストが行われた。 2011年、エジプトのムバラク独裁の転覆は、労働者運動の強力な支持がなければ考えにくいことだった。 そして南アフリカでは譲歩のない、たびたび直接的な暴力を伴ったストライキが続いた。 労働者組織の力は一致しないが、闘争性は強まった。

四番目、社会的抵抗は世界のすべての部分で成長した。 さまざまな研究報告書では、1980年代下半期と1990年代初めに大規模デモは4倍に増加し、 1990年代と2000年代前半期には顕著に減って2000年代下半期にまた増え、 最近、最高点に至っているという点を指摘する。 この時のスローガンは地域により、デモの形態ほどに多様だ。 デモは食糧と燃料補助金、賃金削減反対、基礎食料品とサービスに対する付加価値税値上げ、 年金と保健制度の民営化、労働柔軟化反対、 しかし同時に環境汚染と戦争、性暴力と企業の影響に対抗して起きた。 「本当の民主主義」は持続的な主題であった。

だが五番目に(労働者運動の)革新を語る明確な兆候もある。 病院やケア分野の未組織労働者組織運動が最近非常に増えている。 2009年以来、国際家事労働者連合(IDWF)の持続的な成功は、多くの人々の模範になった。 彼らの運動が「家事労働者のための良質の雇用に関する勧告案」であるILO協約189条を引き出した。 また最近、米国の収監者のデモの波は、長期拘禁、不十分な医療、暴力と奴隷労働に対抗し、 新しい層の労働者階級が行動に出たことを示す。 多くの国の労働組合は「非公式」、そして「不法な」労働者の組織に努めている。 この時、非常に感動的なことは、2006年に創立したインドの新しい労働組合イニシアチブ(NTUI)だ。 これは女性たちの無給労働と有給労働の意味を知らせ、 「公式」部門の組織だけでなく、不安定労働者と臨時職、家事労働者、自営業者と農業労働者が相応する団体交渉ができるように組織した。

過渡期

労働運動の革新を難しくする根本的な障害がある。 この30-40年の間、民族国家は主要な主権事項を失ったが、流失した権力は超国籍機関によって補充されることはなかった。 多くの問題がもはや一国次元で扱われない過渡期に存在する。 イタリアの社会学者アルベルト・マルティネリは 「今日の世界では、地球的次元で市場を規制したりこの問題を直す目的で、労働や環境法を公布したり、財政と福祉政策を改正したり、均衡的な反独占法を公式化する国民国家に相応する等価物は存在しない。 不法な関係を統制したり制裁する独立した国際機構も、民主的な国家機関もない」と記録した。 これは、肯定的な代案を示すことができずに「反対」して、語るだけしかできない、多くの社会運動の「否定的」な態度を理解するのに助けを与える。 それでも国家に焦点をあてる超国家的な実践は、この不利な状況でも可能なこともある。 国家が国境を越えて協力するように圧迫したり、手本になる地域活動家が世界の他の部分で運動できるように支援することができる。

この時、新しい労働者運動は国境を越える連帯を建設する国際主義的運動にならなければならない。 これは部分的には顕著に変化しなければならないが、旧労働者運動から始められる。 新しい国際主義労働組合運動の輪郭は相変らず微弱だが、それを形成するための最低限の条件は明確に存在する。

  • 対象グループが再定義される必要がある。 19世紀の労働者階級に対する定義はきわめて狭く、ヨーロッパ中心的な観点に従った。 これを修正して拡張しなければならない。 いわゆる周辺部と反周辺部の労働組合の相当数は、今このような古い規定を批判してきたし、 搾取される労働者すべてを組合員に組織すべきと明らかにした。
  • 新しい対象グループは、北大西洋地域の男性白人労働者ではなく、 女性と多人種の民衆または不安定な、そして負債の罠にかかった労働者が主導しなければならない。 これらの労働組合は彼ら「新しい」労働者たちが自分の利益を追求できるように、 効果的に支援するために、活動方式を大々的に変えなければならない。 これは団体交渉に集中する慣行も変えなければならないということを意味する。
  • 国際労働組合運動の二重構造は ―ITUCでの国家単位の上級団体間協力と国際産別労組連盟ら(Global Union Federations)での産別による協力― 過去の遺産として改革されなければならない。 恐らく一番良い選択は、グローバルな労働組合の中で「新しい」対象グループの統合を簡単にする新しい統一的な構造であろう。
  • 現在までの国際労働組合運動の中で支配的だった官僚主義方式は、 一般会員にさらに多くの発言権をあたえる民主的な方式に代替されなければならない。
  • 今日までの国際労働組合運動の主な活動は、地域と多国籍組織に対するロビー活動だったし(1980年代の反アパルトヘイト運動は注目すべき例外だったが)、 また国家には訴える程度だったが、 本当に効果的な措置を取るためにははるかに多くの努力が必要だ。 ボイコット、ストライキなどの措置がそれであり、 そのためにはもう一度、内部構造を実質的に強化しなければならない。

既存の労組運動がこの課題を遂行するのかという質問は残っている。 恐らく新しい運動は難しい過程になるだろう。 100年以上かけて形成された組織構造と関係モデルは変えるのが難しいだろう。 さらに上からの改革による新しい構造とモデルは貫徹される蓋然性が薄い。 歴史で学ぶことがあるとすれば、それは、労働組合構造はほとんどが摩擦なしでは発展しないということだ。 これは一般的に対立と危険な実験の結果だ。 下からの圧力(闘争するネットワークと代案的な行動方式など)にこの結果がかかっている。

[筆者]オランダの歴史家。アムステルダム大学国際社会社研究所の所長として働いている。 著書には韓国で翻訳された〈西欧マルクス主義、ソ連を探求する〉(黄ドンハ訳、西海文集)等がある。

[原文] https://www.jungewelt.de/artikel/309842.aufstieg-im-niedergang.html

[翻訳]チョン・ウニ記者

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-05-05 07:26:09 / Last modified on 2017-05-05 07:26:10 Copyright: Default

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