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「ゲイだから解雇だなんて...撤回して改心しろ」

性少数者の労働現場...不当解雇で雇用不安、同性愛嫌悪発言や暴力も

ユン・ジヨン記者 2015.05.15 20:04

正当な理由なく解雇された。 口にできないような暴言にも苦しんだ。 道の真中で石を投げられた。 彼を不当解雇した社長、そして繁華街で彼に暴力を行使した市民。 被害者と加害者が明らかな事件だった。 だが加害者は堂々と消えた。 「君は社会の悪」という言葉と共に。 被害者は戦いを始めたが、容易ではなかった。 彼が姿を表わすと、あらゆる社会の歪んだ視線が集まる場所であった。 「死にたかったが死ぬことはできませんでした。 本当にくやしくて、死にたくはありませんでした」。 なぜ被害者は崖っぷちに追いやられたのだろうか。 加害者たちの返事は簡単だった。「君がゲイだから」

[出処:ニュースミン]

「ゲイ」という理由で不当解雇、賃金不払い…各種の暴力に苦しむ

ある地方大都市で暮らすイ某(23)氏。 彼は昨年10月、アルバイトをしていた食堂を解雇された。 会食の場で、ある同僚が彼の性同一性を暴露したのが発端になった。 同僚はイ氏が昨年「クィアー文化フェスティバル」に参加したという事実と、 彼が「ゲイ」だということを強制的に知らせた(カミングアウト)。 同僚の話を聞いた社長は会食を中断し、不意にイ氏に解雇を通知した。 「明日から出てくるな。ゲイとは仕事はできない」。 食堂の社長夫婦は特定の宗教を持つ教会の信者だった。 「すべての人を愛せ」という神の言葉が心苦しくなる程、 社長夫婦は露骨な嫌悪を表わした。

社長はイ氏に5か月間払われていなかった賃金も払わないといった。 未払い賃金と性的指向に何の関係があるのか分からないが、社長は頑強だった。 「その時からずっと食堂に行きました。 自分と違うという理由で人をみだりに解雇することができるかと抗議し、 謝罪と未払い賃金解決などを要求しました。 だが社長はだめだという。 謝罪も何も、すべてです」。 イ氏の性的指向を強制カミングアウトした同僚は、イ氏についての流言飛語をまき散らし始めた。 同僚は食堂にある男性を連れてきて「イ氏との不適切な関係でエイズにかかった人」だと紹介した。 その男性はイ氏が全く知らない人だった。

「全く根拠がない話で、虚偽事実流布でした。 その男は全く知らない人なんです。 しかしその後で私への社長の嫌悪はさらに深刻になりました」。 イ氏に対する社長の言語暴力は、日が経つにつれて深刻になった。 「社長は『変態性欲を楽しむのなら自分一人だけで楽しめ。なぜ他人に被害を与えるのか』、 『面接の時に同性愛者だと話していれば、雇うこともなかった』、 『この出来事は君が招いたことだ』などの言語暴力を吐きました」。 社長は得意客にまでイ氏がゲイだという事実を話した。 うわさはうわさを呼んだ。結局紛争が起きた。

ある日、イ氏は市内の真中で食堂の得意客と出会った。 その客は突然、イ氏に石を投げた。 飲み残しのミネラルウォーターをばらまき、ボトルを投げた。 混雑した市内で、彼はイ氏に大声をあげた。 「なぜそんな醜悪な行動でエイズにかかるか」と。 当時を回想しながら言葉を続けていったイ氏の声がかすかに震えた。 「とても泣きました。私が何で生きているのか、という気もしましたし。 もちろんひとりひとりみんな告訴して、名誉毀損で処罰を受けさせたいです。 しかしそれだけ時間と費用がかかるので、概して対応をしなかったり無視をしてきました。 だが今はこれ以上そっとしておけないという気がします」

イ氏は昨年12月、ある集会で自分の話を打ち明けた。 団体を通じて紹介された労務士が、彼の未払い賃金問題解決に出た。 該当地域の人権団体らの助けも受けた。 その時初めてイ氏は社長夫婦から未払い賃金一部の200万ウォンを受け取ることができた。 「200万ウォンを払いながら、社長夫婦は携帯電話番号も変えました。 しかし先週の金曜日頃、知らない番号から電話が来ました。 社長でした。突然、6月に開くクィアー文化フェスティバルに言及して 『まだ正常な感覚にならず社会に悪をおよぼしているのか』とか 『醜態なことをして世の中の人々に被害を与えている』といった暴力的な話をしました」

イ氏は社長から不当解雇と言語暴力などについて、謝罪を受けるまで戦いを続ける予定だと言う。 地域の労働組合とイ氏が加入したアルバイト労組、地域人権団体なども、連帯と支援を約束した。 だが性少数者に対する社会的安全網が何もない条件で、彼らが自分の存在を表わして戦うのは容易ではない。 「記者会見もしようとしましたが、どうしても自分を表に出すことが心配だったんです。 多くの人々の視線を受けるのがまだ恐ろしい。 何よりも両親はまだ私が性少数者だという事実を知らずにいます。 そして私も労働者で、働けなくなれば暮らせないでしょう。 しかしトラウマのために働けなくなっています。 この地域から出ていかなければならないのかとも考えます」

職場の同僚が「ホモフォビア」…雇用不安と言語暴力が恐ろしい

性少数者(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、LGBT)も、労働をする労働者だ。 労働の現場には女性労働者もいて、男性労働者もいて、ゲイ労働者もいて、バイセクシュアル労働者もいる。 だが男性/女性という伝統的ジェンダー規範に捕われた労働現場は、性少数者も労働者だという事実を消す。 その上、性少数者という事実が知らされると、あらゆる差別と蔑視、解雇、暴力などが容赦なく加えられる。 性少数者に対する社会安全網は全くない。 そのため被害者ができることは隠れることだけだ。 性少数者らは「LGBT労働者差別撤廃」というシュプレヒコールをあげるだけでも大きな勇気を出さなければならない。

[出処:チャムセサン資料写真]

バイセクシュアル労働者のユンス(24)氏は、映画館でアルバイトをしている。 現在、6か月程度働いているが、途中で一回退社した経験がある。 ホモフォビア(同性愛嫌悪)指向の同僚と一緒に働くのが苦しかったためだ。 二か月間、無職状態でアルバイト雇用を探したが、結局当然な雇用がなくて再入社した。 事実、性少数者は雇用を選ぶ時、とても悩まなければならない。 ユンス氏もそうだった。 「雇用を選ぶ時、最優先は一人で働く所で、その次は男性が少ないところです。 どうしても男性が多ければホモフォビアも多いのではないかという気がしますから。 サービス職は相対的に女性の方が多いでしょう。 一人で働く職業を探すのは難しいので、女性が多いサービス職の仕事を探すようになります」

だがこうした期待はいつも打ち砕かれるのが常だ。 入社直後の新入生教育の時間に職員はユンス氏に 「男性アルバイト生のうち容貌TOP3」を選べといった。 「いつもしてきた伝統だと言って、男性アルバイトの容貌順位をつけろいうのです。 無条件に他人を異性愛者と決め付け、容貌で順位を付けるということ自体が気まずくて、やらないといったところ、1か月、ずっと追いかけられました。 男性アルバイト生の中に本当に好きな人がいるからではないかといいながら」。 一緒に働く同僚が吐きだす同性愛嫌悪的な発言に傷ついたりもする。 「私達の中でお客さんについて話す時があるでしょう。 そんな時、同僚が『ゲイのような人がきて気味が悪い。 なぜ外を出歩くのかわからない』とか『レズビアンは女を誘惑してそちら側に誘導するやつら』だといった発言をします。 退社をしたのも、そんなフォビア的発言のためでした」

ユンス氏は同僚にホモフォビア的発言の問題を指摘したりする。 周辺にゲイ、レズビアンの友人が多いという点と、そんな発言を聞くたびに不愉快だという心境を伝えたりもする。 だがそのたびにユンス氏を見る同僚らの視線はきれいではない。 私たちとは違う特別な人だというレッテルを付けるだけのようだ。 ユンス氏は、ますます自分をカミングアウトすることに対する恐れを感じる。 「フォビア的な発言が一番ひどいお兄さんがいるのですが、どうも(私がバイセクシュアルということを)感づいたようです。 彼がカミングアウトをするのではないかという不安があります。 その兄さんは私の前で交際した女性たちとした行為を詳しく描写したり、 『女は棒鱈を叩くように殴らなければならない』といった話をしたりもします。 わざわざそうしているのか、あるいは最初からそんな人だったのかよくわかりません」

大学休学中のユンス氏は、公務員試験の準備も考慮している。 一般会社でカミングアウトされると解雇の危険も存在するためだ。 生計を維持しながら、比較的雇用が安定している職場を探すと、公務員が最善だという気がした。 労働組合の有無も重要な考慮の対象だ。 「雇用の安定が一番重要だという気がします。 経験してみると、サービス職も安全なところではなかったんです。 事実、私は性少数者だというものが誇らしく、カミングアウトもするつもりでした。 しかし職場で働きながら、カミングアウトへの恐れができました。 退社して、アルバイトが見つからなければ『ただ異性愛者のように辛抱して生きれば良かったのに。 アイデンティティの何が重要なのか』という気がしました。 とても衝撃的でした。 それで労働組合への期待がとても高いです。(労組があれば)加入したいです。 労組が私の問題について共に戦ってくれるのではないだろうかという期待があるためでしょう」

「性少数者」と「労働運動」、差別された人々が作る共感

労働の現場で差別される性少数者らは、労働組合の闘争の重要性を実感している。 外国系企業の外注業者に勤務している非正規職ゲイ労働者のヒョンテ(33)氏は<誰よりも労組の闘争現場に緊密に連帯している。 2011年の韓進重工業希望バスを始め、双竜車、ユソン企業、才能、保健福祉情報開発院などの闘争現場に行った。 労働界の中でも性少数者に対する認識の水準は千差万別だが、差別を味わった労働者たちとの連帯は、明らかに共感と慰労になる。 「もちろん、一般の組合員たちも皆同じ考えであるはずはありません。 しかし不当に解雇されたり差別され、闘争する労働者たちは『差別』がどのようなものなのかを明確に感じています。 より良い世の中のために一緒に暮らしていく存在として互いを認識しているんです」

▲レインボー・フラッグを掲げて集会に参加したヒョンテ(33)氏[出処:ヒョンテ]

ヒョンテ氏は、カスタマーセンターで働くサービス職労働者だ。 以前の職場では、総務チーム所属の事務職労働者として働いた。 だが軍隊のような男性中心の職場文化に耐えられなかった。 職場の同僚は彼に「男性性」を強調した。 「スーツとネクタイを着用しなければならず、頻繁な会食で雰囲気を合わせなければなりませんでした。 私の口調について、男のように話せといったりもして、なぜ行動がこんなに女のようなのかと指摘したりもしました。 カップを持つ時、小指が上がるのですが、それが冷やかしの種になるのでいつも気を遣わなければなりませんでした」。 以前は正規職として雇用され、会社で副チーム長にもなった。 長く会社に通いたくて、勇気を出してチーム員にカミングアウトをしたこともある。 同僚らは「君がまともな女に会ったことがないからだ」、「気味が悪い」、「そんなことを私に話すな」といった反応を吐き出した。 ヒョンテ氏はカミングアウトの後、同僚と微妙な距離感を感じたという。 彼らと自分の間に見えない壁ができたような気持ちだった。

「その会社をやめた後、カミングアウトする前にもっと私には準備が必要だ、 もっと私が自分を保護しなければならないなという気がしました」。 今通っている外国系企業を選んだのも、不当な差別を最小にする方便だった。 会社の内規に差別禁止条項があり、不当なことがあれば対応できると期待した側面があった。 だが性少数者に対する差別と暴力は職場だけでなく、日常のあちこちに存在する。 そうしたことも、性少数者が差別、攻撃されない社会的基盤と環境が必要だと声を高める。 「事実、大層なことよりも同僚から『先週末は何をしていたか』と聞かれた時、 『性少数者嫌悪反対の日なので文化祭に行ってきた』と自然に話せる雰囲気が作られるべきではないでしょうか」

性少数者らは、労働現場のあちこちでやっと踏みとどまっている。 彼らへの社会安全網が何もないため、彼らは自分を隠すことしか対応する方法がない。 解雇されても自分の性同一性を表して戦うのはとても大きな勇気が必要だ。 何よりも使用者側が解雇理由を「勤務態度」などと巧妙に迂回すると、対応は容易ではない。 イ氏のように性同一性を理由として解雇される例がしばしば発生するが、多くの被害者は「放棄」を選ぶ。 韓国のゲイ人権運動団体チングサイの関係者は 「昨年、ある男性キャディーも性的指向が知らされて、カントリークラブから退社を推奨された。 不当解雇なので問題提起をしようとしたが、結局契約が切られた」と説明した。

性的指向を理由として加えられる労働現場での差別も頻繁だ。 だが法的、制度的装置がなく、被害者の積極的な対応も容易ではない。 民主労総のクァク・イギョン対協部長は 「アンケート調査によれば、性少数者が一番恐れる空間として職場をあげる。 だが積極的に権利保障を要求するのは容易ではない」とし 「性的指向による差別に関しては、国家人権委員会法が唯一だが、拘束力がない。 雇用上の差別問題を提起できる差別禁止法は、2007年、2012年を経て、今も漂流している」と指摘した。

そのため一部では、労働組合次元で就業規則や団体協約に性少数者差別禁止条項を含む法案を検討している。 クァク・イギョン部長は「民主労総をはじめとする労働界がすぐできることは、 性少数者差別禁止条項を含む模範妥協案を作り、提案すること」とし 「英米などの国家では、労組がLGBT代議員を配分し、委員会を作って政策を生産する構造がある。 これをすぐ施行する訳には行かないが、まず性少数者の組合員たちが各事業場労組でカミングアウトできる雰囲気と教育などがあれば、 具体的な変化も始まるだろう」と見通した。

国際反ホモフォビアの日の5月17日、ソウル駅では「嫌悪を止めろ、広場を開け」共同行動が開かれる。 多くの性少数者は嫌悪との戦いを超え、「LGBT労働者差別撤廃」を叫ぶことができるだろうか。 「多くの人たちがみんなそうだ言う時に、私だけは違うということについての悩みをFaceBookに書いたことがありました。 その時、起亜車社内下請労働者のユン・ジュヒョン烈士が文を残してくださいました。 多くの人々がみんなそうだと言っても、すべてが正解ではないと。 小さな声をあげることが時にはさらに価値あるということを忘れないでほしいって」。 非正規職ゲイ労働者のヒョンテ氏がインタビューの最後に伝えた言葉だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-05-17 01:17:56 / Last modified on 2015-05-17 01:17:58 Copyright: Default

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