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用役暴力根絶、どこから始まるか

[寄稿]作業場での用役暴力根絶のための試論

オム・ジンニョン(全国不安定労働撤廃連帯) 2012.01.04 16:39

企画された労組破壊の流れ

労働現場に用役暴力が登場したのは、最近の事ではない。それでも2010年以後、 労働現場での用役暴力をよく見るべき理由は『労働組合無力化』という意図に より、非常に攻撃的で暴力的な形態であらわれているためだ。作業場での用役 暴力は一時的や一回的なものでなく、持続的な労働者統制の一環として活用さ れ、労使関係を非正常的な状態に固着化させる。

労使関係が安定的というのは、労働者と使用者間紛争がない状態だけを意味す るのではない。労働者と使用者が雇用形態、労働条件など、現場の問題を交渉 と争議で解決する自律的かつ対等な関係が形成された時に、始めて労使関係が 安定したと評価できる。労使関係の安定化の条件は、使用者と対等な交渉力、 対抗力を持つ労働組合がある時に可能だ。なぜなら作業場で労働者が自由に集 まり、団結して表現する時、資本の専横を防げるためだ。

[出処:資料写真]

しかし、強い労働組合を基盤とする安定的な労使関係は、2008年から続く不安 定な経済状態で、総資本の立場としては障害の要素になった。そうして総資本 は労働組合を弱めるか完全に無力化する方式を積極的に考慮し始めた。2010年 1月1日にかっぱらい通過した改悪労組法『専従者給与支給禁止とタイムオフ制 の導入』、『事業場単位複数労組の許容と交渉窓口の単一化』は、労使関係の 地形変化を予告するものだった。こうした地形の変化で労組活動に対する統制 と複数労組状態を利用した資本の労組介入戦略が、積極的に駆使された。徐々 に労働組合を無力化するシナリオが動き、2011年の新聞社会面を飾ったヴァレ オ、KEC、ユソン企業などでの労働組合破壊戦略は、こうした脈絡で進められた。

労働組合無力化流れ図

労働組合の闘争に 備えた事前作業および必要な人事措置など-〉賃金団体交渉および2010年法改正 後要求される労働組合の特別団体交渉などに対する交渉拒否および懈怠により 労働組合の闘争を誘導-〉用役投入による先制的、攻撃的職場閉鎖-〉以後生産 再開および個別復帰懐柔、複数労組設立-〉強力な現場統制、大量懲戒および損 害賠償

これまでの労使関係で発生した紛争と違い、資本ははるかに攻撃的態度と程度 を越えた不法防御戦略により労働組合の闘争を刺激し、個別復帰を勧めて労働 組合の闘争を無力化した。ストライキが終わって現場に復帰しても、労働組合 は力を持てなくなった。この過程で資本は警備用役業者と契約を結び、彼らの 暴力により作業場を占拠し、労働組合が完全に屈するまで職場閉鎖を維持した。 一方、資本は複数労組の設立により、既存の組合員との間で懲戒や損害賠償な どで差別することで、労働者の掌握力を続けてた。

用役警備の投入と攻撃的職場閉鎖

これまで、労働者がストライキを始めれば、作業場はストライキを続ける空間 だった。したがって資本は、ストライキの対抗として職場閉鎖をしても事業場 を労組に占拠されると、労働組合との関係で主導権の掌握が難しかった。した がって、生産に支障をきたしても労働組合を事業場から追い出すことが重要で、 資本は大規模に用役警備を動員し始めた。資本は交渉を遅らせて、労働組合に 闘争の強度をますます高めさせた。続いて資本は、労働組合の闘争が本格的な 強度に達する前に数百人の用役警備を動員し、労働者を現場から追い出した。

ヴァレオマンドでは、たった数日間の怠業に対し、使用者側は職場閉鎖を断行 して、用役警備400人を投入し現場を統制した。KECでも労働組合が全面ストに 入って一週間ほど後に、労働者が眠っている寄宿舎に用役警備650人を投入して、 労働者を引き出して職場閉鎖した。ユソン企業では用役警備による車両事故に より、労働者が重傷を負い、これに抗議する労働者が工場を占拠すると、公権 力を動員して労働者を追い出した後、工場を用役警備で防いだ。その過程で、 想像もできないような暴力が乱舞した。

このようにして職場閉鎖がされた後、用役警備が現場に入ることを阻止した。 資本は労働組合が完全に無力化したと判断するまで、職場閉鎖を解かなかった。 KECの場合、労組が何度もストライキ撤回宣言をしたが、職場閉鎖は1年近く続 き、労働部が勧告を続けて2011年6月13日に職場閉鎖を撤回した。ヴァレオマン ドも99日間職場閉鎖が続き、法院の職場閉鎖効力停止決定から6日後に職場閉鎖 が撤回された。ユソン企業も労働組合が作業場を復帰することを決めた後も、 職場閉鎖は続き、8月31日に法院の調整で労働者が業務に復帰した。

業務復帰もなかなか厳しかった。資本は労働組合の闘争が弱まったても組織力 を維持したままで集団で復帰することを徹底的に防いだ。持続的な個別復帰の 懐柔と代替人材を活用して工場を稼動させ、ストライキを無力化する一方で、 ストライキから復帰した労働者が闘争する労働者と会えないように用役警備に 作業場を監視させ、統制した。このように、現場は使用者と用役警備により 完全に掌握され、労働者の職場は人権の死角地帯に転落した。

資本によって、掌握された労働現場、巨大な人権の死角地帯

労使関係の一軸が崩れ、資本の手中に落ちた作業場は、労働者にとって、もう 健康な職場ではなくなった。生産力を上げるために労働強度は強化された。復 帰した労働者は工場の外で闘争を続ける労働者と接触できず、生産量のために 出退勤もなく強制的に合宿労働をしなければならなかった。

使用者は職場閉鎖を撤回した後すぐ労働組合員の多くを懲戒し、ストライキ中 に復帰した労働者も軽重の差異はあっても懲戒は避けられなかった。特に労働 組合の幹部には、解雇、停職など重懲戒を行い、作業場に入れないようにした。 だが御用労組に移った労働者には比較的軽い懲戒で、労組破壊戦略を続けた。

またストライキに参加した労働者をすぐ現場に勤務させず、教育の名目で事実 上の懲戒措置をした。KECは7週間の集団教育で労働者をストライキ参加程度に より四等級に分類し、色が違う服を着せ、銘記宝鑑を読ませ、黙言遂行をさせ た。その過程で組合員に退職を強要し、教育に耐えられず会社を止める労働者 も出た。ユソン企業では、ストライキ参加の程度が高い労働者を現場に復帰さ せず、完全に分離して教育したり、待機状態に置き、すぐ懲戒手続きを取って 重懲戒をした。ヴァレオマンドでは3日間の花郎台教育、30キロ行軍、歩く大会、 2日間の奉仕活動等で労働者を飼い慣らした。現場勤務の他に二段階の等級を作り、 仕事をさせずに草むしりや塗装、機械清掃、ボックス磨きなどの雑用をさせた。

どの事業場でも作業場のあちこちに監視カメラが設置され、労働者を監視し、 その上、トイレに行く労働者に用役警備がついていった。工場内でさえ、用役 警備の監視の下で移動しなければならない。20年以上一緒に働いた労働者が、 資本の懲戒威嚇と用役監視で互いに会うことも避ける状況だ。

『工場』という空間で、労働者と使用者の対等な関係は、すでに消えた。用役 警備で維持される使用者の暴力がその場を守っている。それでも警察は事前の 申告もない用役警備の配置と、彼らの無慈悲な暴力に目を塞いで幇助した。労 働部は労組のストライキを不法と断定することに汲々とした。職場閉鎖とその 後に用役警備と警察力が投入されることで発生する暴力に対して労働部や検察 は、労働組合の不法争議行為に対する正当な抵抗だと主張した。労働者の権利 より資本の利益が先んじ、労働者に行われる使用者の不法行為は使用者の防御 権として正当化された。労働者は傷つき、労働組合は崩れていった。

用役暴力根絶の方案、労働者権利の認定から

労働者への暴力自体も深刻だが、『暴力』という現象への対処だけでは問題は 解決しない。いくつかの用役業者を罰し、現場で捕まった用役警備数人を罰す ることでは解決しない。本当の問題は、暴力が強行される過程が、労使関係の バランスを資本に傾ける決定的な契機になっているという点と、公権力の保護 の中で行われている点だ。そのため労働の現場での用役暴力を根絶するために は、大きな原則として使用者による労働者暴力の禁止を再確認しなければなら ない。勤労基準法は、使用者による暴力は理由を問わず禁止しているが、現実 には使用者が莫大な金をかけた用役警備による暴力が乱舞し、それにより労働 者の権利が踏みにじられている。だから用役警備であれ、管理者であれ、労使 関係で労働者に向けられる暴力は、使用者による暴力と規定して禁じなければ ならない。

また警備業法規定の整備と改正を行い、労働現場への用役警備の投入を摘発し、 警察がこれを幇助できないようにして、使用者の対抗行為の職場閉鎖が申告と いう簡単な手続きだけで容認されないようにする制度的な変化も必要だ。

最後に何よりも重要なことは、労働者の権利に対する社会的な認識だ。憲法が 労働三権を保障しているが、現実には使用者が振り回す私的な暴力により破壊 されている。資本は労働者の団結権そのものを否定し、労組破壊のために暴力 を振り回す。労働者の権利争奪のための闘争が当然の権利と認められることが 問題解決の開始であり、その中で資本の対抗行為が防御的な水準で統制されな ければならない。権利は法文の中だけにあるのではなく、社会的に当然のこと として認識される時、『権利』として承認される。(出処=人権オルム)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-01-05 00:33:26 / Last modified on 2012-01-05 00:33:28 Copyright: Default

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