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スタグフレーションに陥る韓国経済

物価暴騰、為替レート戦争、量的緩和が描き出す2011年

ホン・ソンマン記者 2011.01.14 13:40

物価が上がっている。政府は連日物価対策を発表し、公正取引委員会は庶民の 物価を抑えると言って頼まれもしない物価安定の役割まで買って出て、問題に なっている。政府も関税の引き下げによる原価負担軽減、税制のインセンティブ 強化、公共料金凍結など、物価を安定させるための総合対策を出した。さらに 韓国銀行金融通貨委員会も13日、基準金利を2.50%から2.75%に0.25%上げた。

だが物価が上昇しているのは韓国だけではない。主に中国、ブラジル、インド、 ロシアなどの新興市場国やBRICs国家のすべてに共通して現れている現象だ。

新興国、物価値上げで苦しむ

ウォールストリートジャーナル(WSJ)は1月8日、「この数年間のグローバル成長 のエンジンになり、世界経済活動の5分の1を担当する主要開発途上国すべて がインフレの拡大で悩んでいる」と報道した。

インドでは、玉ネギなどの野菜から始まった食品価格の上昇が次第に深刻になっ ており、他の消費財価格も上昇傾向にあり、インド準備銀行(RBI)は利上げを考 慮していると現地のマスコミが報道した。インドの食品物価上昇率は12月25日 には18.32%も急騰した。このような物価の急騰はこの一年間に何と82.47%も値 上がりした玉ネギと、平均58.85%上がった他の野菜の価格が主犯だった。

ブラジル中央銀行も物価上昇を抑制し、レアルを下げるために都市銀行の支払 準備率を上げることにした。この措置は4月4日から実施され、支払準備高は各 都市銀行の資産と外国為替取り引きの規模により差別適用される予定だ。

ブラジルはほとんどの西洋国家が導入している超低金利政策の影響で、資金が 大量に流入している新興国の1つだ。投機資金の流入によるレアルの上昇で、ブ ラジルの輸出が阻害され、競争力が弱まるという憂慮が続いている。

レアル高に関連して、ブラジルのマンテガ財務長官は1月4日「ホセプ新政府は 外国為替市場介入でなく、減税と貿易保護で解決する」という立場を発表した。

ロシアも昨年夏の旱魃で小麦の価格が暴騰し、政府の物価上昇抑制目標の6〜 7%を上回り、この一年間で8.7%の物価上昇率を記録した。これに伴いロシア 中央銀行も数カ月以内に金利を上げる方針だと知らされた。

中国中央銀行の人民銀行は、今年のマクロ政策の最優先課題として物価安定を 設定したと新華社通信が報道した。インフレ抑制のために昨年、銀行の支払準 備高を6回上げた人民銀行は、昨年10月、2年ぶりに金利を上げたのに続き、 クリスマスには電撃的に貸し出しおよび預金金利を0.25%上げた。

また、中国銀行国際金融研究所が最近発表した「2011年中国マクロ経済分析と 展望」によれば、今後中国銀行は比較的頻繁な利上げ政策を取り、2011年には 3回以上の利上げを断行すると予測される。

物価はなぜ揺れるのか? それも新興市場国だけで

最近の物価の上昇は、石油、穀物などの国際原料価格上昇が物価の上昇につな がっている。国家別指標を見ると、昨年12月に大幅に上昇したのは石油などの エネルギー価格の影響が大きいことが明らかになった。食品価格上昇と間接税、 統制価額上昇も影響した。

それで、ここで質問が可能だ。石油と穀物価格はなぜ上がり、これがどうして 新興国の物価だけ上げるのかという点だ。米国、ヨーロッパ、日本などの先進 諸国は冬も油を使わず、あまり食べないというのか?

米国はもちろん、ヨーロッパと日本などの先進諸国、いわゆるG7国家はあまり 物価の心配をしていない。むしろ米国はインフレでなくデフレーションを心配 しているほどだ。ユーロゾーンの消費者物価が多少上がっているが2.2%程度で 大きく憂慮するほどの水準ではない。

おかしくないだろうか。これらの国はいわゆる量的緩和で市中に通貨供給を拡 大してきた。米国は貿易赤字を財政で埋めるのに景気浮揚策を取り、ユーロゾー ン国家はほとんどが財政危機のために緊縮政策を取ったという差はあるが、市 中通貨を着実に拡大した。これは日本も同じだ。(財政政策の差はあるが、通貨 政策はすべて同じだ。)

たくさん金を解いたので物価は上がるはずだ。だが通貨発行を増やした国家は 物価が上がりもせず、新興国だけで物価が大幅に上がっている。この話は先進 諸国が発行した金がすべて新興国に集まっているということで、これは経済危 機の負担を通貨発行により新興市場国に転嫁しているという事実を示す。

なぜ、このようなメカニズムが可能なのか? まさに『金利』のためだ。G7国家 の金利はゼロに近い。米国、日本は事実上ゼロ金利で、ヨーロッパは1.00%を維 持し、超低金利で金利を固定している。これらの国で金利を上げる兆しや信号 は見られない。

そのため先進諸国の量的緩和の爆弾はすべて新興市場国に流れて行った。外国 為替が集まるので、新興国で市中通貨の量は増える。そして、先進諸国の通貨 発行でドルやユーロなどの安値が続き、為替レートが下がり、為替レート防御 のために外国為替市場に介入して外貨準備高を増やさなければならなかった。 そのために市中通貨の量はまた膨張するほかはなかった。結局、これらの国は 物価が上がらざるを得ず、通貨を吸収するためにやむを得ず利上げをした。だ が、上がった金利を見てさらに外国為替が押し寄せ、それで通貨量の増加と物 価上昇という悪循環が繰返している。つまり、新興国では外国為替増加→通貨 増加→物価上昇→利上げ→外国為替増加という悪循環が続いている。

スタグフレーションの岐路に立った韓国経済

昨年の韓国経済は、輸出企業が政府の補助と違わない高為替レート政策で輸出 を続け、米国発の量的緩和のドルの洪水が株式市場にあふれ、世界経済危機の 余波の中でそれなりに耐えた。昨年の韓国経済は数値だけを見れば注目すべき だ。成長率暫定分が6.1%で世界3位を記録し、輸出は世界7位、経済規模も世界 13位にのぼった。

しかし輸出拡大、高為替レート、量的緩和を背負った金融市場の復興などは今、 ブーメランになって戻っている。

経済危機の中で、輸出拡大政策は為替レートと国際原料価格の依存度を一層高 めた。その上、昨年の為替レート戦争を率いた米国と中国に続き、アジアと中 南米の国家を中心に、第二次為替レート戦争が勃発する兆しも見える。2次為替 レート戦争は、為替レートの戦いで終わらず、貿易戦争に燃え移る可能性が高 く、輸出主導型国家が受ける打撃は非常に大きいだろう。

また、ウォール街の銀行は、今年の石油価格はバレル当たり100ドルを越えると 展望している。石油価格の暴騰と銅などの原料価格の上昇が消費者物価に与え る影響も大きいが、輸出にも相当な影響を与え、いずれ韓国経済の嵐が来るだ ろう。

一方、何よりも通貨量の増加と外資流入が引き起こす物価上昇は、政策を臨界 状況に追い込んでいる。本源通貨は金融危機以前には50兆ウォンを下回ってい たが、2010年末基準で70兆ウォンまで増加した。本源通貨量が40%以上増加し たのだ。ここで米国が量的緩和を本格化すれば、それだけ多くのホットマネー が集まるが、天井を知らずの株式市場の魔力で、これに対する何の対策もない。

こうしている間にも物価は上がり続けている。ヨーロッパ各国が公共部門縮小、 福祉削減などの大々的な緊縮政策で疲弊しているとすれば、韓国と新興国では 他ならぬ通貨量の膨張による物価値上げで労働者庶民の財布が空になっている。

結局2011年の韓国経済は、『不況中の物価値上げ』というスタグフレーション に向かっている。つまり労働者と庶民が一番苦しい状況になるということだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-01-15 19:16:35 / Last modified on 2011-01-15 19:16:41 Copyright: Default

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