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三本指を立てたミャンマーのZ世代

[イシュー(2)]ミャンマー青年労働界層と国際連帯

チョン・ウニ記者 2021.03.31 08:22

目次

(1) 韓国に響くミャンマー青年の声

(2) 三本指を立てるミャンマーのZ世代

(3) ミャンマー女性が作る民主主義、軍部の居場所はない

(4) 全斗煥からミャンマー軍部まで、独裁と手を握った企業

(5) 「ミャンマーが光州と似ているから」で終わらせず

▲ミャンマー繊維労働者連合会(FGWM)労働者が現地ILO事務所の前で海外企業がミャンマー民主主義のために参加しろと要求している。[出処:FGWM]

数十年間続いたミャンマー民主化運動は、主に裕福で外国で教育を受けた階層が主導した。 だが今度は違う。 催涙弾と銃弾と正面から闘っている彼らは、 ミャンマーの二大主要都市であるヤンゴンとマンダレー出身の学生と工場・鉱山労働者だ。 闘争の最前線にはこの10年の民主化過程で育ったZ世代 [1] の労働者がいる。 彼らは軍部に対抗しているが、西欧やアウンサン・スーチーの民族民主連盟(NLD)に同じ幻滅を感じている。 外信らもしミャンマーに民主主義が復元されれば、それはスー・チーでもNLDでなく、 この新しい闘争を通して行われると報道した。 「ワーカーズ」は外信が注目したZ世代の闘争と人生を追いかけた。

#コ・ワイ・イェントゥン(Ko Wai Yan Tun)氏/ 16歳/日雇 [2]

2月20日にマンダレーでデモ隊の2人が銃で撃たれた。 そのうちの1人が16歳の少年コ・ワイ・イェントゥンだ。 ヤントゥンは頭に銃弾を受けて即死した。 市場からカートを引っ張ってきて盾にしたが、 頭を狙って飛んできた弾丸を避けられなかった。 この日のデモは、マンダレー内需運送部(IWTD)労働者ストライキに連帯する 近隣ヤダナボン造船所の労働者数百人のデモから始まった。 ヤントゥンが働く市場の近くでデモが強まり、彼はデモ行列に飛び込んだ。

ミャンマーはこの数十年間、成長を繰り返した。 中国とタイ、シンガポールと日本、韓国などの企業は 衣類と農業、鉱業と石油に大規模に投資した。 産業開発に農地を奪われた人々は暮らしの拠点を失い、 青年たちはより良い暮らしを探して都市へ、海外へ向かった。 都市は彼らを低賃金、非公式、不安定な雇用に吸収した。 現在ミャンマーの労働力の83%が非公式部門に従事している [3]。 ヤントゥンもそのうちの1人だった。

露天商は彼を「子供」と呼んだ。 田舎から仕事を探して上がってきたヤントゥンは、使い走りをしながら食事をした。 ニューヨークタイムズによれば、デモに出る前、 ヤントゥンは彼の友人のコ・ミオ・ザウ(Ko Myo Zaw)に 「(これは)ぼくの未来のための義務」だと話した。 ザウ氏は「ヤントゥンはいつも携帯電話とバイクさえあれば 自分の人生が完璧になると話していました」とし 「彼は良い人でした」と話した。 現在まで軍部の暴力で死亡した犠牲者の半分以上が25歳以下だという。

#マ・ティン・ティン・ウェイ(Ma Tin Tin Wei)氏/ 26歳/縫製労働者 [4]

マ・ティン・ティン・ウェイはヤンゴンのラインタヤにあるイタリアブランド、 OVSの縫製工場で男性ジャケットを作っていた。 NLDが就任する前には誰もがそうだったように、 労働法や労働権が何か知らなかった。 文句を言って解雇されることが多かった。 劣悪な労働条件で5年間、ミシンと取り組んだ彼は、 結局会社との戦いを始めた。 労組に同調する労働者が雪だるまのように増えた。 しかしそれもしばらく、 会社はコロナ・パンデミックを口実に労組を解散させ、労働者を弾圧し始めた。

数万人の縫製工場労働者が市民不服従を始めた理由も、 軍部が労働者の権利を後退させるのが明らかだったためだ。 ウェイ氏は軍部がクーデターを敢行した2月1日から 労働組合の活動家と秘密会議を始めた。 5日からは現場宣伝戦と街頭デモ行進に出た。 労働者たちはNLDを象徴する赤いリボンを付けた。 赤い布が足りず、工場に頼んで切断機を利用して切った。 30分の昼休みを利用して10分で食事を押し込んで、20分間宣伝戦をした。 学生も彼らと共同闘争に出た。 6日には学生たちと産業公団道路で座り込みをしたし、 ミャンマー中央銀行と国際労働機構(ILO)現地事務所にデモ行進して、海外ブランドに圧力をかけた。 縫製産業が密集するヤンゴンのラインタヤにある約300の工場のすべてが闘争に参加した。 工場に労組があればストライキを組織し、 労組がない工場では労働者が個別に休暇を取ってデモに参加した。 群衆は膨大だった。

ウェイ氏は2月の1か月間で働いたのはせいぜい6日だった。 大部分の時間を大使館に手紙を書き、ソーシャルメディア・キャンペーンをしてストライキを準備するために過ごした。 今はストライキを組織した労組活動家すべてが警察の捜索を避けてホステルで潜伏している。 2月27日、ミャンマー軍部はすべての労働団体を公式に禁止した。 そして翌日、前例がない恐ろしい弾圧を加えた。 28日の夜、最低18人が命を失った。 その後、「私の頭は血だらけだが屈しない」というスローガンが登場した。 3月3日にはまた38人が死亡した。 死傷者は毎日出てきたし、犠牲者数はいつのまにか200人を越えた。

ミャンマーの衣類労働者は約70万人で、女性が90%を占有する。 彼女らのほとんどは田舎や小さい村から仕事を探してヤンゴンに来た人々だ。 女性たちは他の衣類業者労働者と共に寄宿舎で生活しながら月給の一部を故郷に送る。 衣類労働者の大多数は相変らず組織されていないが、 労働組合は彼らの労働条件を改善するために重要な役割を果たした。 大規模ストライキが相次ぎ、2015年には最低賃金制度が導入された。 2018年、ヨーロッパ商工会議所によれば、 ミャンマーの輸出で衣類が占める比重は31%に達する。 ノースフェイス、H&Mなどの西欧ファッション企業が 韓国や中国、日本などの業者と2、3次請負契約を結び、 ミャンマーの労働者を間接雇用する。 韓国企業が運営する縫製工場は約130か所で、ここの労働者はたいてい時間当り最低賃金 480チャット(約480ウォン、2018年基準)で働く。

#ドゥ・ウン(Du Wun)氏/ 26歳/性少数者/元教師 [5]

ミャンマーのある田舎の村で育ったドゥ・ウン(Du Wun)氏は、 女性用伝統衣装や装身具が嫌いだった。 そんな理由で10代の時からいじめを受け、両親も彼女と絶縁した。 やっと教師になったが、トランスジェンダー労働者の人生は受け入れられなかった。 彼はさらに広い都市を探してヤンゴンに向かった。 しかし自分の性自認を隠して暮らさなければならないのは大差なかった。

人々は彼が2月1日、他の性少数者の人々と共に街に出てきた時に、 彼の性自認を受け入れ始めた。 ヤンゴンでは「LGBTQ 4民主主義」という横断幕の下で 性少数者数百人がデモをした。 全国で二番目に大きいマンダレーでも似たようなデモが起きた。 ミャンマーでは民間政府が執権した後、 昨年初めてカミングアウトした同性愛者候補が地域議員に立候補する程、状況が良くなった。 しかし性少数者はまた軍事政権になれば、自分たちの権利を保護する方法はないと見る。

#ソー(Soe)氏/ 28歳/医師 [6]

28歳の保健労働者ソー氏は軍事クーデターに対抗して2月3日にストライキした約100人の保健労働者の一人だ。 ストライキデモが始まるとすぐ、軍部は参加者を隅々まで捕えた。 ソーも軍部の摘発を避けられなかった。 2月15日の午後、彼が家に一人でいた時に警察が押しかけた。 彼はいちはやくトイレに隠れた。 警察30人が彼の部屋にどっと入った。 心臓の拍動が高まった。約10分後に警察は彼の家を出た。

ソーが働くマンダレーに近いタウンジーにあるサン・サン・トゥン病院では医院長を除き、全員がストライキに参加した。 ミャンマーの保健労働者たちはこの1年間、新型コロナで最も苦しい闘いをして、クーデターの直前にワクチンをうち始めた。 それでも保健労働者たちは軍部クーデターに最も速く対応した。 2月には病院の80%が門を閉める程、ストライキの参加率が高かった。 軍部は保健労働者たちが患者を捨ててストライキをしたとし、「非倫理的」だと非難した。 だが保健労働者たちはこのような非難は偽善的だと考えた。 民衆に銃口を向ける軍部に労働者を非難する資格はなかった。

▲ミャンマーヤンゴンで医者たちが軍部退陣を要求しながら、ストライキ デモ行進を繰り広げている。[出処:Myanmar Now]

今、ミャンマーの多くの医師と看護師は病院の代わりに道路で応急治療を担当する。 マンダレーだけで最低6つの医療チームが活動している。 約30人で構成された医療チームは、移動型、静止型に区分される。 医療スタッフは止血制と消毒剤などの医療用品が入ったリュックサックを持ってデモ隊の間を飛び回る。 彼らは助けが必要な人には誰にでも無償で治療と薬を提供する。 しかし手術などの重い患者を治療できるチームはひとつしかない。 医療スタッフは都市全域に連絡先とパンフレットを配り、 患者が彼らのところに行けるように広報している。 軍部が市民を虐殺し始め、状況は戦場そのものだ。 医療スタッフは赤十字マークなどを付けているが、軍部の銃口はこれを区別しない。 最低でも医科大生の1人が殺害され、多くの医療スタッフが殴打や鎮圧の犠牲になっている。

ミャンマー市民不服従運動(CDM)のウェブサイト [7] によれば、 全国でストライキに参加した公共部門労働者2万2597人の半分以上が保健分野出身だ。 ミャンマーではストライキで生計問題に直面する看護師、税関、国会職員、警察官などの公務員を支援するための新しいグループも組織された。 「われわれは英雄を支持する(We Support Heroes)」と 「固い手助け(2/21 Sturdy Hands)」などの団体が彼らに食事やシェルターを提供する。

民主主義のために海外資本を圧迫するミャンマーZ世代

ミャンマーのZ世代の労働者は民主化の中で成長した。 彼らはこの数十年間、成長してきたミャンマーの産業社会に進出したばかりの労働者たちでもある。 彼らが民主主義のために敢行している主要戦術の一つは海外資本を圧迫することだ。
ミャンマーは日本と韓国、そして中国が次々と産業資本主義に再編された後、 80年代のベトナム、カンボジアに続いて超国籍企業のグローバル価値の鎖にからまり始めた。 日本や韓国、中国などのアジア先発国家の資本はさらに安い原資材と労働力を求めて東南アジアで最も賃金が低いミャンマーに来た。 中国は特にミャンマーの最大貿易国で「一帯一路プロジェクト」を通じてミャンマーに最大の力を入れた。 中国政府が現在、ミャンマー事態を傍観しているなかで、 中国系の工場数十か所で放火事件が起きている。 これまでミャンマーの軍部は主要産業を掌握する一方、 極度に不安定な労働市場を維持して利益を得てきた。 アウンサン・スーチー政権の執権で労組が合法化されたが、 相変らず軍部と海外資本の利害が優先している。
新型コロナは特に海外資本に隷属するミャンマー産業の矛盾をそのまま表わした。 投資と注文物量は急減し、職場閉鎖と解雇、賃金削減、労組弾圧がさらに頻繁になった。 それと共に、労働界層の貧困が急速に深まり、 これは青年階層にとってさらに苛酷だった。 昨年11月に米国のワシントンにある国際食糧政策研究所(IFPRI)が発表した調査によれば、 ミャンマーで1日に1.90ドル(2、147ウォン)以下で生計を立てる人の数は 2020年1月の16%から9月には63%と約3倍に急増した。[8] 青年失業率は2018年の3.81%から2020年には4.34%へと増加した。
一方、ミャンマーはコロナ パンデミックの中でも労働争議が最も激しい所の一つだった。 この数十年間の産業発展の中で、新しい労働運動の軸を磨いてきた労働運動のためだ。 ミャンマーでは2011年に労組が合法化されたが、 ILOによれば質問に答えた43%が事業場に労組など労働者の権利を代弁する団体があると答えた。[9]
この労働者運動が最近の軍事クーデターに対抗する蜂起の出口を開き、 今では数百万民衆蜂起の最も強力な組織運動になっている。 ミャンマーの労働者は2月2日の保健部門を始め、 軍部に対抗する「不服従運動」という名のストライキ デモを行い、 2月8日、22日、28日に続いて3月8日まで数百万規模の全面ストライキを展開している。 こうしたミャンマーの労働階級は、民主主義のために海外資本を圧迫する行動を主要戦術に採択している。 彼らと共に世界的にもミャンマーの軍部と超国籍資本を圧迫する闘争が進められている。 そのうち最も激しく闘争しているのはミャンマー出身の青年移住労働者だ。 韓国をはじめ、タイ、日本、台湾などでミャンマーの移住労働者が3、400人規模でクーデター反対デモを組織した。 ミャンマーの移住労働者は約400万人で、 ミャンマー労働力の約5分の1を占める。 彼らが最も多く進出している国はタイで、 ここでは約300万人 [10] のミャンマー労働者たちが働いている。 タイで昨年、君主制改革を要求して起きたデモの象徴も「三本指敬礼」だった。

〈脚注〉

[1] 1990年代中後半から2010年代初中盤までに生まれた世代

[2] https://www.myanmar-now.org/en/news/authorities-blame-death-of-protester-shot-in-mandalay-on-covid-19

[3] https://redflag.org.au/article/myanmars-spring-revolution

[4] https://www.jacobinmag.com/2021/03/myanmar-burma-general-strike-coup https://www.nytimes.com/2021/03/12/business/myanmar-garment-workers-protests.html

[5] https://www.reuters.com/article/myanmar-politics-lgbt-rights-idUSL8N2KT0AV

[6] https://www.myanmar-now.org/en/news/frontline-workers-in-myanmars-health-crisis-vow-to-keep-up-pressure-on-the-regime

[7] cdm2021.com

[8] http://ebrary.ifpri.org/utils/getfile/collection/p15738coll2/id/134144/filename/134353.pdf

[9] ILOがヤンゴンとモン州にある食品、木材、縫製など198の企業を対象に行い、2017年3月に発表. https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/---ilo-yangon/documents/publication/wcms546641.pdf

[10] https://www.myanmar-now.org/en/news/i-guess-were-just-supposed-to-starve-laid-off-myanmar-migrants-denied-wages-and-trapped-by

〈参考〉

https://www.labornotes.org/2021/02/myanmar-workers-and-unions-front-lines-fight-against-coup

https://www.leftvoice.org/from-india-to-myanmar-class-struggle-flares-up-in-south-and-southeast-asia

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2021-04-07 01:11:30 / Last modified on 2021-04-07 01:20:22 Copyright: Default

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