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労働尊重で隠された労働政策

[ヤン・ギュホン コラム] 「労働尊重は労働者階級が争奪するもの」

ヤン・ギュホン(労働者歴史ハンネ代表) 2018.08.17 11:43

歴史的なキャンドルデモの成果として新しい政府が発足した。 スタート以前から提示された文在寅(ムン・ジェイン)政府の労働公約の基調は、 労働尊重社会だった。 しかしでわずか2年も経たないうちに、労働政策への猜疑心が大きくなっている。 最近の非正規、最低賃金、労働時間などを処理する政府と執権与党の態度は、 労働尊重社会の概念を疑わせる。 労働尊重において労働とは何かを再確認すべき理由は、 労働と労働者の区分が曖昧になって、 人と行為が入り乱れているということだ。 人は誰でも物資を必要として、その物資を購入するために精神的、肉体的努力をするが、 その行為を労働という。 言い換えれば労働という概念は、その対象が全体を網羅するが、 労働者は資本主義社会において賃金労働者を指すもので、 労働者は労働力を売ってその代価により暮らす人なので、労働尊重は労働者尊重だ。

[出処:青瓦台]

言葉の遊びに過ぎない非正規労働者の正規職転換

現政権の1号労働政策は、公共部門非正規政策だった。 文在寅大統領は発足以後、 仁川国際空港公社を訪問し、華麗なスポットライトをあびて政府の非正規職解決の意志を象徴的に見せた。 この日、大統領が直接発表した「公共部門非正規職ゼロ宣言」に労働者たちは拍手して歓呼した。 しかしこうした雰囲気はさほど経たず、むなしいイベントにすぎないという結果を生んでいる。 非正規職を正規職に転換するということが労働尊重の意味だとすれば、 まず法そのものに手を入れるべきで、何よりも雇用安定と格差解消がなされなければならない。 しかし非正規職を直接雇用するのではなく、子会社を作って採用する方式を好んだ。 どこかでよく見てきた過去の政権の労働政策の踏襲だ。 そればかりか、格差解消次元で雇用形態を転換した労働者に、 正規職にふさわしい賃上げが従わないという深刻な問題を抱いている。 だから文在寅政府の1号労働政策である「公共部門非正規職転換」は、真情性が疑がわれるのだ。

算出の根拠のない、どんぶり勘定式の最低賃金

最低賃金も例外ではない。 最低賃金であれ、最低生計費であれ、標準生計費であれ、それぞれの算出方式があるが、 最低賃金も算出方式は失踪して「速度調節論」が登場した。 速度調節論のどこにも最低賃金の基本概念は見つからない。 調節論の背景には、公約を破棄するための弁解と弱い政治的判断があるだけだ。 さらに最低賃金引き上げが経済発展に良くないと主張する根拠も理解し難い。 文在寅政府の最低賃金1万ウォンの必要性は、 最低賃金を上げれば内需景気が活性化して、経済が内実をもって成長できるということであった。 ところがその公約の根拠はさほど経過せず、経済に悪影響をおよぼすという奇怪な論理で登場し、 労働関連公約と政策は、後退の果てが分からない状況に至っている。

国策労働研究所(労働研究院)さえ最低賃金引き上げが経済に及ぼす悪い影響は殆どないという。 しかし、労働運動をしたと自慢する執権与党の院内代表が、 労働者階級に露骨な反感を示しつつ毒素条項だらけの最低賃金法案を通過させた過程は、 誰が見てもおかしかった。 政府の統計を適用しても、最低賃金法は低賃金労働者21万6千人の期待収益を減らした。 また最低賃金が上がりすぎたと大げさに騒いでも、 実際の手取りは変わらない人が増えたので、低賃金労働者はさらに暗鬱な状況に置かれている。

最低賃金値上げは法案の審査過程で最低賃金の定義を確認しなければならず、 最低賃金算出の根拠を明確に提示するべきであった。 しかしいわゆる官僚集団がデータではなく政治的論理と感覚を押し出して、 最低賃金速度調節論で大騒ぎをしたので、 算出の根拠も基準もない最低賃金になってしまった。 最低賃金を抑制する工作にしては、基準さえ曖昧な、稚拙で情けない格好だ。

労働時間を減らせば生産性が上がる

労働時間も例外ではない。 韓国の労働者の労働時間は、OECD国家中メキシコの次に高い労働時間を記録している。 2004年以後、韓国の法定勤労時間は週40時間だ。 さらに労使が合意すれば、12時間の延長勤労が可能になる。 こうすれば52時間が最大値になるが、 問題は週単位を平日5日とだけ解釈し、平日の延長勤労と週末の休日勤労を別に判断することだ。

それでも7月1日から適用された週52時間勤務制も、 労働者はもちろん中小企業と路地商圏の事業主が反発するという理由で、 目標とは逆方向に流れている。 労働時間を減らし、労働者には生活の質を保障し、企業や店は不足する労働力を新規雇用で補充することにより雇用を増やすという意志を現わしたが、 結果として資本の責任を留保する側に方向を旋回した。 暇さえあれば労働生産性を比較して、韓国の労働者が働いていないというニュアンスを漂よわせているが、 労働生産性は労働時間を分母として算出されるので、 労働時間が減らない以上、労働生産性も上がらない構造だ。

文在寅政府が公約した労働尊重社会は、労働無視社会になっている

最近、経済を生かすという金東ヨン(キム・ドンヨン)副総理の動きは、 文在寅政府の労働政策基調を端的に示している。 新世界、SK、現代、LGグループ総帥と会って、国政壟断に関与して裁判を受けているサムスングループの李在鎔(イ・ジェヨン)にまで会った。 現政権自ら起訴した犯罪人と、大統領から副総理までが会うというとんでもないディールは、ほとんどコメディの水準だ。 経済副総理と会った財閥総師は、約束でもしたかのように数兆ウォンを投資して雇用を増やすとし、 まるで経済が今すぐ生き返りそうな青写真を繰り広げている。 財閥が投資をするのは財閥の利益を増やす目標を設定して進める計画でしかない。 しかし財閥と会うためにやきもきをする文在寅政府は、 財閥の大層な投資計画と雇用に対して茶番劇を演出している。 副総理という人間が財閥に対して「投資すれば光化門で踊る」と騒ぎ立ててまわるのは、 通うことは朴槿恵政府のおんぶショーとオーバーラップするほどだ。 しかし残念なことに、これまでの政権で財閥が約束した投資と雇用創出がそのまま執行されたのは、一度も見たことがない。

労働尊重を強調して登場した文在寅政府が財閥と会ってはいけないという話ではない。 ただ、財閥にもの乞いするように見えないようにするのなら、 バランスがなければならず、 少なくともバランスを維持しようとすれば中小零細商人に苦痛分担を要求し、 財閥のカプチル(パワハラ)と不当な慣行にはなぜ目をとじているのかを説明しなければならない。 そして財閥と会って賛辞と激励を惜しまないのに、 暑さの中で血の汗を流す労働者と道路で座り込む非正規労働者たちを徹底的に無視しているという事実に注目しなければならない。 現政権のこうした態度は、労働尊重ではなく労働無視という哲学があるからで、 今やその本質があらわれている。

この2年間、文在寅政府の労働政策はイベントのハリボテで、労働者階級の視野を遮っていたのかもしれない。 しかし今、一つずつその本質があらわれる状況になって、 労働者たちの人生を、不安定労働者たちの生存を威嚇している。 最低賃金・非正規職・労働時間などに対する労働政策の共通点は、 賃上げ抑制政策だ。 文在寅政府はこれに終わらず、 遠からず所得主導成長の失敗の責任も労働者のせいにすることが予想される。 自由主義政治勢力の中に労働運動をしたことがある人が含まれているとしても、 彼らが労働者階級の人生を考えないという事実は、 これまでの短い歴史で何回も確認された。 こうした状況で、持続的な信頼と期待を抱いて労政交渉、労使政交渉に未練を持たず、 現政権の労働政策に対する労働者階級の立場と態度を明確に設定して、 それによる戦略戦術を模索していくのが賢明ではないだろうか。 労働尊重は彼らが施す恩恵授与ではなく、労働者階級が争奪するものだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-08-26 19:35:17 / Last modified on 2018-08-26 19:35:18 Copyright: Default

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