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「暗黒区間」、死の線路を走る都市鉄道機関士

[監視統制、崖っぷちの感情労働者](6) 1人乗務、恐怖と戦う地下鉄乗務員

ユン・ジヨン記者 2013.11.20 03:01

10月18日、地下鉄7号線の機関士だったチョン某氏が自殺した。1月に、地下鉄 6号線の機関士として働いたファン某氏が自ら命を絶ってから10か月後だった。 これで、今年だけですでに二人の都市鉄道機関士が自殺し、この10年間で8人の 機関士が命を絶った。奇異なことは、自殺した機関士がすべてソウル都市鉄道 に所属する機関士だった点だ。

なぜ地下鉄5、6、7、8号線を運行する都市鉄道の機関士だけが、連続して死ぬ ことになったのだろうか。疑問は疑惑になり、いくらもたたず、死んだ機関士 たちが皆「極度のストレス」と恐慌障害などに苦しんでいたという事実が知ら された。労組と市民社会は反発した。機関士を極度のストレスと死亡に追い込 んだのは、他でもなく会社の統制と暴圧的な組織文化だ主張した。

だがすでに固まってしまった公社の組織文化は変化を受け入れられなかった。 機関士は毎年線路に身を投げ、今も毎日暗い死のレールを走っている。ソウル 市庁前で、22日間続いている労組の徹夜座込場には「人が希望だ。これ以上 殺すな」という横断幕がものさびしくはためいている。

孤独と心理的圧迫に苦しみ「暗黒区間」を走る機関士

「一人ずつ死ぬたびに、環境はとても少し変わります。ところでそんな変化は とても小さいので、現場では『このままでは、また誰かが死ぬ」という自暴自棄 の声もあがります。とても少ししか変わらないからです。まるで機関士の死を 呼んでいるようです」。

ソウル都市鉄道公社の機関士A氏は、同僚機関士の死を見守らなければならない 現場労働者たちの複雑で息苦しい心境を伝えた。今年、すでに二人目だった。 機関士らは近い同僚らの死を見ながら、自分たちの死に鈍感になった。もう、 これ以上都市鉄道機関士にとって、死はなじみがうすい単語ではなかった。死 を選択するしかなかった同僚の内心もわからないことではなかった。

A氏は「私がすべての機関士を代弁することはできないが、多分、ここから脱け 出したいという気持ちが大きかったのでしょう。そうでなければ永遠にここか ら抜け出せないという不安感もあったでしょう」と死んだ同僚機関士らの心情 を慎重に推測した。

A氏も最近になってぐんぐん無気力を感じていた。一生懸命努力して入ってきた 職場だが、現場は思ったより楽ではなかった。機関士として就職する前に各種 の非正規職アルバイトから土方まで飛びまわった。だが機関士の仕事はどんな 業務よりつらく劣悪だった。現場全般に漂う無気力症も彼の心を蝕んでいる。

「考えていたよりずいぶん大変です。本当に出来るだけ良心的に話して、公社 の現場での重機業務より大変です。疲労もたくさん積もって無気力になります。 都市鉄道の機関士らは毎日暗いトンネルを走りますね。トンネルはただ真っ暗 なのではありません。とても気分が悪い灰色の光の闇なのです。毎日その中に いるのです。陽光は出勤する前に見るだけです」。

ソウル都市鉄道機関士らの業務環境は、すでに悪いという噂が立っていた。 都市鉄道の機関士らが運行する区間は、一筋の陽光も入らない「暗黒区間」だ。 ソウル・メトロと違い、1人乗務制で運営され、業務量も、孤独も二倍だ。

ソウル・メトロで働く機関士のB氏は「自殺する機関士らはみんな5、6、7、8号 線を運行する都市鉄道所属の機関士」とし「メトロは2人1組で働いているが、 都市鉄道は1人乗務だ。全てを一人でしなければならず、心理的圧迫感が激しい と聞いた。特に地上区間がなく、骨減少症や鬱病にもずいぶん苦しんでいると いう」と伝えた。

「地上区間があって、太陽の光を受けらるのと、そうではないのとは、本当に 違います。私が知人の同期とメトロに行ったことがあったが、そこは地上区間 もあって窓も開きます。しかし私たちの場合にはほとんどが地下区間で、窓も 開かず、空気も苦しいです。

単独乗務の負担感も強いです。例えば2時間半運転して、約15分程度回送時間が ありますね。その時が唯一休める時間なんです。しかしその時間に休んでいると、 乗客はなぜ扉を開かないのかと抗議します。2人乗務なら、互いに見ていれば 良いので休息できます。余裕もありますし。しかし私たちは一人なので、休む 余裕がありません。運行している時は言うまでもありません」。

各種の苦情で圧迫、奉仕活動競争など「暴圧的な組織文化」

都市鉄道では、乗務職群はそれこそ「忌避職群」の烙印を押されている。劣悪 な業務環境も問題だが、何よりも各種の苦情などの圧迫と、暴圧的な組織文化 が濃厚だからだ。

「メトロでは乗務職群に行きたがる人は多いです。しかしここでは転職申請書 を提出する機関士が多い。われわれは(他の職群に)行きたい、送ってくれと言 います。ある事業所では198人のうち90人程度が転職申請書を出しました。

ある先輩機関士は転職後に「私が機関士になって、失われた歳月を暮らした。 10年間、私の人生を奪われた」と話したりもします。しかしすべての転職申請 が受け入れられるわけではありません。都市鉄道には機関士のメリットがなく、 特殊性が認められないので、ここに来たがる人がいないのですから」

[出処:公共輸送労組連盟]

公社は乗客が提起した各種の苦情で機関士を圧迫する。機関士の統制範囲外の 苦情もすぐ「実績」に反映される。都市鉄道で機関士として働いて解雇された C氏は、会社が乗客の苦情を機関士の統制手段に利用していると声を高めた。

「乗客から寒い、暑いという冷暖房の苦情がたくさんあります。しかし政府の エネルギー節約政策により客室内で設定されている温度があります。機関士が 勝手に温度を調節できるのではありません。それでも冷暖房の苦情がさくさん 入ってきたとし、それで実績管理をします。運行中にいくつか苦情が入ってき たとし、機関士に責任を問うのです。機関士に権限のないことへの苦情で実績 を管理するなどおかしいでしょう。会社としては機関士が他の集団勤務をする 人より統制の手段が少ないので、これらで機関士を統制するのです」

機関士に業務以外の奉仕活動を強要する慣行も深刻だ。個人別に、各事業所別 に競争させ、業務以外の時間をそのまま外部奉仕活動に使わなければならない ことも多かった。会社の圧迫と同僚間の競争は、心的なストレスをあおった。 労組の反発で、前より激しくはないが、組織次元の隠密な圧迫は相変らずだ。

「本来は1人当り1年に12時間の奉仕活動をします。もっとやっても加点された りはしません。しかし個人別に、事業所別に過度な競争をさせます。私たちの 事務所では、奉仕活動一等になった人は1年間に9百時間ほどの奉仕活動をしま した。ある事務所は『うちの事務所が一番低調だ』とし、退勤した人たちを 組織的に連れて行って、奉仕活動をさせたこともありました」

ソウル都市鉄道労組のイ・ジェムン委員長は「労組が問題提起するまでは社内 コンピュータ・ネットワークに奉仕活動一等からビリまで順位を公開していた」 とし「まだ内部では等数をつけたデータを作って進級に反映している可能性も ある」と説明した。A氏の場合「機関士の自殺が続き、少し文化が変わることは あった」とし「だが昨年のような場合でも、雰囲気を追い込んで、それとなく 圧迫することもあった」と説明した。

またイ・ジェムン委員長は「今年のはじめに死んだファン・ソヌン機関士は、 スクリーンドアに挟む事故の後、組織的にイジメをした」とし「ある乗務駅で 機関士が運行中にミスしたとし、管理者が横っ面を殴った事例もあった」と伝 えた。

複数労組設立以後、悪質な労務管理が深化
「予算」を理由に機関士の死亡対策の受け入れを拒否

暴圧的な組織文化は、複数労組設立と共にその程度が悪化した。2011年ソウル 都市鉄道に複数労組が設立され、民主労総組合員に対する全方位的な労組脱退 の圧迫が進められたためだ。現場の労働者たちは分かれ、現場の雰囲気は不通 になった。

「ファン・ソヌン機関士が死んだ後、あちらの労組にいた1人の同期がまた民主 労総に加入しました。自分の同期が死ぬのを見て、こんな労組活動をしてはい けないといいながらです。ところでいくらも経たないうちに、管理者を通じて フィードバックが来ました。またあちらの労組に行ったそうです。あえて話を しなくても、侮辱的な状況にあったということが分かります。

新入職員に対する会社と御用労組の工作も少なくありません。以前には新規者 が任用状を受けるとすぐ事務所に行きました。しかし、今は本社で自家用車で 新規者を連れて行って食事をしながら、労組加入について話します。それから 所長室に座らせて御用支部長を呼んで加入願書を出します。事務所全体で労組 脱退の圧迫が激しいです。人の話をきくと、電話して、懐柔して、脅迫して、 泣いて訴え、ひどかったそうです」

A氏も「うちの事業所では、講義室のようなところに人々を詰め込んで教育時間 という名分で企業労組の支部長がきて『私を信じて行こう』と労組加入を強要 した」と説明した。特に最近、労組が暴露した文書によれば、会社は職員1266 人を労組の指向によりA/B/C等級に区分して管理してきたことが明らかになった。 また、労組の選挙の時に労働者の投票権の有無と執行部の経歴、指向などを分析 した文書が相次いで暴露され、会社が労組選挙にまで介入したのではないかと いう議論も起こった。

こうした労働者統制、管理および労組弾圧などは、機関士に心的外傷を残して いる。労組をはじめ専門家たちは都市鉄道公社の組織文化が機関士の自殺の主 な原因だと説明する。

イ・ジェムン委員長は「昨年3月にイ・ジェミン機関士が死んだ後、7月に最適 勤務委員会が発足した」とし「当時、委員会の専門家たちは他地方の地下鉄も 1人乗務制で、地下路線の環境も同じなのに、なぜ都市鉄道だけに機関士の自殺 が発生するのかを調査した。結局、悪質な組織文化による心的な圧迫、ストレス が主な原因だったことがわかった」と説明した。

そうした状況にも公社とソウル市は、機関士の処遇改善の基本的な合意も履行 していない。労組と都市鉄道公社は今年2月、機関士処遇改善と都市鉄道労働者 健康権のための最適勤務委員会等について労使が合意した。

だが公社側が処遇改善に関する主要事項の多数を履行せず、論議がおきた。そ の上、公社は予算負担を理由に最適勤務委員会が発表した「ソウル地下鉄従事者 最適勤務のための勧告案」も受け入れずにいる。

イ・ジェムン委員長は「最適勤務委員会では2人乗務制を全面的に施行すると、 予算の問題があるので、特定のラッシュアワー時間にモデル実施する方案を出 したが、公社はこれさえ拒否している」とし「労組は最適委勧告案受け入れ、 機関士処遇改善未合意事項の履行、責任者処罰などの要求が受け入れられなければ 闘争の水位を高める計画」と明らかにした。

この企画はニュースミン、ニュースセル、メディア忠清、蔚山ジャーナル、チャムセサン、チャムソリの共同企画です。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-11-20 22:19:56 / Last modified on 2013-11-20 22:23:49 Copyright: Default

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