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〔週刊 本の発見〕『戦争童話集』(野坂昭如) | ||||||
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子供を餓死させる大人に救いはない『戦争童話集』(野坂昭如 著、中公文庫、2025年)評者:大場ひろみ
そんな彼が「十代前半だった自分の眼」にうつった戦争を、全て「昭和二十年、八月十五日」で始まる童話として形にしたのが本書である。 現在、残念ながら私たちは平和を維持することが出来ず、というよりも高度成長の結果として、彼の予感を現実にするような事態に立ち到っている。 彼が少年の自分の眼を大事にしたのは、大人になってしまったら、誰しもが時代の中の利害に囚われて、自由な眼でものが見えなくなってしまうのを、自らを通して知っていたからだ。勿論子供だからって、本当に自由なはずはないが、少なくとも大人に翻弄される側であることは確かだ。 しかし、その童話は無力な側にいることで、常に残酷さにさらされ続ける。決して甘さや救いはない。まったくない。例えば、「凧になったお母さん」という話では、母は焼夷弾による炎に囲まれて、小さな子供を水分で助けようと、乳も、汗も、涙も、血液さえも絞り出して子供に与え、ひからびて凧になって飛んで行ってしまう。子供も追いかけるように凧になって飛んで行く。また、「干からびた象と象使いの話」は象使いが動物園の象を助けようと山の中へ逃げ、共に餓死するし、「年老いた雌狼と女の子の話」では、立場が逆転して、雌狼が、満洲で引揚者に捨てられた少女を守りつつやはり共に餓死する。餓死する話が本当に多い。また、兵士が死んでいく過程で、様々な夢想に浸るのだが、そこでは長々とおいしい食べ物が羅列される(「ソルジャーズ・ファミリー」)。特攻に向った少年兵は夢想に浸るうち、仲間の機とはぐれて不時着するが、「この食糧欠乏の日本にいて、毎日、卵やトマトや汁粉を食べさせてもらってるのだから、死ななきゃいけないんだと、自分自身を納得」させる(「赤とんぼと、あぶら虫」)。*写真=野坂昭如
戦争に反対だと思っても、屁理屈がないと対抗できないと踏ん張り、逆に屁理屈にとらわれていないかと、大人の自分は振り返る。小説家である野坂は、飢えた少年が大事にとっておいたバウムクーヘンのかけらを種にして、「お菓子の木」を生やすことが出来る。大人の生み出す残酷さに囲まれながら、想像力という実りと救いをわずかに残しておいてくれる。しかし、その実りを享受することが出来るのは、子供だけだ。大人は、何故か気づかないのだった(「焼跡の、お菓子の木」)。 Created by staff01. Last modified on 2025-05-21 19:49:30 Copyright: Default |