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〔週刊 本の発見〕『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』 | ||||||
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無視された警告〜そして事故は起きた『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』(島崎邦彦 著、青志社、本体1,400円、2023年3月)評者:黒鉄好
島崎さんは福島第1原発事故後、原発政策立案と規制の分離を目的として発足した原子力規制委員会の委員長代理を務めた人物として知られる。一方、1995年から2012年まで17年もの長きにわたり、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)長期評価部会長の任にあったことはあまり知られていないかもしれない。実際には、島崎さんの功績はこの地震本部時代のほうが大きい。東京電力以外の電力会社は、島崎さんの下で2002年7月に公表された三陸沖地震に関する長期評価を津波対策に取り入れるよう求めた旧原子力安全・保安院の行政指導を受け入れ、津波対策を実施した結果、事故を免れたからである。 「長期評価」は、津波地震の影響範囲を極めて広く設定したこともあり、公表に当たって政府筋から様々な圧力を受けたと島崎さんは明かす。首相が議長を務める中央防災会議からの圧力によって、長期評価に限界があるかのような奇妙な前文が島崎さんたちに相談もなく付け加えられた。政府機関であるはずの地震本部が公表した長期評価の価値、影響力を低め、貶めるような策動がこの間、政権中枢によって絶え間なく続けられた。 本書では、長期評価の過小評価の一方で、土木学会が取りまとめ公表した「津波評価技術」なる著書が過大評価されていく過程を描き出す。土木学会という名称からアカデミックなイメージを描く人が多いかもしれないが、現実には電力会社やJR各社など大規模インフラ事業を担う企業の関係者がメンバーの多くを占める。資金もこれら業界から提供されており「日本土木業協会」とでも呼ぶほうがふさわしい。インフラ事業者が費用対効果の範囲内で安全対策をそこそこやろうね、という枠組みに過ぎない業界団体のマニュアルが政府機関の報告より上位に置かれる。司法もそれを追認し、東電経営陣に1、2審とも無罪の判決を出す。本書を通じて見えてくるのは日本の厳しく悲しい現実だ。 2018年5月9日、東電刑事裁判第11回公判に証人出廷した島崎さんは「長期評価に従って防災を進めておけば、原発事故も起きなかった」と重大な証言をしている。長期評価の「生みの親」として、貶められた「我が子」の名誉を命あるうちに回復したい――今年79歳となる島崎さんの決意を私は本書の中に見た。私もその決意に応え、東電経営陣を告発した被害者の1人として、最高裁で逆転有罪を勝ち取らなければならない。 司法が原発事故被害者の切り捨てをこれ以上続けるなら私にも覚悟がある。さしあたり、先の大戦で誰ひとり責任を取った者がいないのが裁判所と医学界だということははっきりさせておきたい。法衣の下に東電のユニフォームを隠し着て原発事故の責任を免罪し続ける裁判官たちと、通常の1000倍も甲状腺がんが過剰発生しているのに原発事故と無関係だと言い張り続ける医者たち。戦後80年の今年、この2つと徹底的に闘争し、戦争責任からきちんと取らせる――本書を読んで改めて固めた2025年の私の大目標である。 Created by staff01. Last modified on 2025-03-06 09:38:50 Copyright: Default |