
●渡部通信(6/18) : 明けない夜はない(316)<若者を再び戦場に送るな!(66)ネ
タニヤフとトランプついて>
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世界は今、イスラエルのネタニヤフとアメリカのトランプによってかき回されつつある。
先ずネタニヤフであるが、1月のガザ停戦合意を3月には破棄し、
5月には「ガザ全域の制圧をめざす」と述べた。
6月4日の国連安保理でガザ地区での「無条件かつ恒久的な」即時停戦を
もとめる決議案の採決があったが、15か国中、
トランプのアメリカだけが拒否権を使い否決した。
そしてネタニヤフは、6月13日未明にイランに対する全面的な攻撃を開始した。
核関連施設や軍事施設、石油関連施設や国営イラン放送など、
イランのあらゆる重要な施設やそれに関連する人物たちを標的にしている。
最高指導者ハメネイ氏の殺害計画についても否定していない。
これは公然たる国際法違反の無法行為であり、国家テロである。
ネタニヤフはその一線を越えた。
トランプはこの攻撃を事前に知っており、米人たちに避難を呼びかけていた。
また、「もし我々がイランからいかなる形であれ攻撃を受けた場合、
米軍の全力がイランに降りかかるだろう」とも述べている。
ネタニヤフとトランプは、ガザだけではなく、
イランにおいても「全域の制圧をめざす」と述べているのに等しい。
そのトランプは翌6月14日、ワシントンで34年ぶりの軍事パレードを、
自分の誕生日に合わせて行った。
彼はそこで「この国の兵士たちは決して諦めない。決して降伏せず、決して諦めない。
戦って、戦って、戦う。そして彼らは勝利し、勝利し、勝利する」と述べた。
まさにイスラエルのイラン攻撃はその合図であったとさえ思われる。
ただ、この軍事パレードに対し、
全米の約2000か所で「ノー・キングス」(王様はいらない)のデモが起きた。
まずイスラエルのネタニヤフに関してである。
彼が信じる旧約聖書には、
彼らは「神に選ばれた民」であり、
パレスチナは「神が約束した地」と書いてあり、
イスラエルではその事を小学生の時から暗記させられる。
軍隊仕様の旧約聖書には、
「戦争をしたとしても、その最終目的は世界平和である」
というラビ(宗教指導者)のメッセージが収録されている。
しかし、ユダヤ民族は、第一次ユダヤ戦争(66〜70)、第二次ユダヤ戦争(132〜135)
を経てローマ帝国に支配され、ユダヤ民族は流浪の民となった。
旧約聖書は90年頃に正典が決定されたという。
(新約聖書は1世紀から2世紀にかけてキリスト教徒により書かれたといわれている)
そのユダヤ民族について、以前にも一度紹介したことがあるが、
イブン=ハルドゥーン(1332〜1406)の『歴史序説』という本に次のように述べられてい
る。
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貴族はまず連帯意識や身分を通じて最初の高貴さを獲得し、
ついで・・・都会生活の結果として連帯意識が消失すると、
この貴族は最初の高貴さをも失ってしまい、
一般大衆と変わらなくなる。ただ昔の名門への錯覚が彼らの心に残り、
貴族のうちでも、もっとも高貴な者であると思い込んでいるにすぎない。
・・・アラブ系にしろ、非アラブ系にしろ、・・・このような錯覚をいだいている。
もっとも深くこのような錯覚にとらわれているのは、イスラエルの子孫である。
昔彼らは世界のうちで、もっとも偉大な貴族性を有していた。
それは第一に、アブラハムから、イスラエルの宗団と律法の創始者である
モーゼに至るまで、祖先のなかに多くの預言者や神の使徒を輩出したことと、
第二に、連帯意識とこの意識を通じて神が彼らに約束し与えた王権が存在したからであっ
た。
ついで彼らはこのすべてを失い、屈辱と貧困にあえいだ。
流亡の民としてこの地上に生きることを運命づけられ、
何千年ものあいだ、不信仰の奴隷たることに終始した。
それにもかかわらず、昔の栄光への錯覚が去らない。
「彼はアロン系だ」とか、「彼はヨシュアの子孫である」とか、「カレブの後裔の一人だ
」、
「ユダの氏族出身だ」とか彼らが言っているのを耳にするであろう。
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ネタニヤフはその延長線上にある。
ただ、彼は実に約2000年後に復活した金持ち国イスラエルの首相であり
旧約聖書での神の約束を実現しようとしているのである。
しかし、これは極めて独善的な信仰であり、
ナチスのパン=ゲルマン主義のように、
周りの諸民族に大きな厄災をもたらしているのである。
次にトランプである。
彼はこの間、「アメリカ第一」を掲げ、関税で世界中をかき回し、
さらに、イスラエルを批判する大学や学者たちを弾圧し、
強硬な移民排除策を行い、
最近では1日3000人の不法移民摘発をノルマとして課すようにもなった。
こうした独裁的な動きに対し、
今回の軍事パレードに対し、米国全土で「ノー・キングス」の運動が起きてきた。
イブン=ハルドゥーンの『歴史序説』の
「過酷な支配は王権にとって有害であり、往々にして王権の崩壊を導く」
という項目に次のような記述がある。
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良き支配とは、温厚さに由来する。もしも支配者が圧制的でつねに厳罰を科し、
人々の欠点を暴露したりその罪を数え上げたりすることに熱心であれば、
人民は支配者を畏れ、卑屈になり、支配者に対して偽りと策略と欺瞞によって
身を守ろうとする。ついにはこれが人民の特性となり、彼らの良識と性格は堕落してしま
う。
その結果、しばしば戦場で支配者を見棄て、国土防衛に加わらない。
人民の意欲の低下は、防衛力の衰退を引き起こすのである。
人民は、ときには支配者を殺そうとさえする。
そうなれば、その王朝は衰退し、防壁が崩れる。・・・
他方支配者が温和で人民の悪い面をも多めに見るならば、
人民は支配者を信頼し、支配者に保護を求め、心から支配者を愛し、
支配者のためには敵との戦いに喜んで死ぬであろう。
このようなときには、万事がうまく行くものである。
・・・
油断のない明敏な人が、習性として温厚さを持つことはごくまれである。
温厚はつねに無頓着なのんきな人に見出される。
・・・統治者が過度に明敏なのは好ましくない・・というのは、
このような性質は専制主義的悪政をもたらし、本質的に実行不可能なことを
人々に強制する傾向を伴うからである。・・
以上の結論として、あまりにも利口で明敏なことは、
政治的指導者にとって一つの欠点であることになる。
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これらの指摘はまさにトランプに当てはまるのではないだろうか。
特に最後に述べてあることは、『甲陽軍鑑』で紹介した
「利根過ぎたる大将」と同じことである。
情勢は日々激動し、今後どのような経過をとるかはわからない。
だが、いずれにせよ人間がやることである。
私たちは、歴史的に人類が明らかにしたことを参考にしながら、
現代における「道理」を明らかにしながら、前進していくことが重要だろう。
「天下は一人の天下にあらず、すなわち天下は天下の天下なり」である。
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