1748729751880sa...
連日の「米騒動」報道に辟易している。
米の高値は確かに重大な問題だ。低所得者の打撃はとりわけ大きい。私自身、少しでも安い米を求めてスーパーをはしごしている。
しかし、これが連日新聞やテレビのトップニュースになるほどの問題だろうか。
たとえば国内政治では、「日本の学術の終わりの始まり」（梶田隆章・前学術会議会長）、「日本の科学の死」（山極壽一・元学術会議会長）といわれる学術会議改悪法が重大な局面を迎えているが、すっかり「コメ」の陰に隠れている。
さらに重大なのは、ガザの事態だ。イスラエルのジェノサイドとそれを支援するアメリカ、黙認する欧州諸国によって、何万と言う人が亡くなり、いま、子どもたちはじめ多くの市民が餓死の危機に直面している。
こうした事態に対し、日本のメディアはどれほどの危機感を持って報道・論評しているのか。
「米騒動」の報道自体もきわめて問題だ。
第1に、米の値段、「5��2000円」に報道が集中している。今日の米価の高騰を招いた自民党政権の農政批判はほとんど聞かれない。まして日本の米作・農業破壊の根底にある対米従属問題にはまったく触れていない。
第2に、逆に小泉進次郎をまるで救世主であるかのように持ち上げている。
彼はこれまで自民党農政部会の責任者であり、いわば米価高騰の加害者だ。お門違いも甚だしい。これで「5��2000円」の米が店頭に並べば、メディアはさらに小泉を賛美する。それは石破内閣の支持率上昇につながり、その流れで参院選を迎える―そんな悲喜劇が目に浮かぶ。
「米騒動」といえば107年前、1918年の米騒動が連想される。ロシア革命に干渉するシベリア出兵によるコメ不足が主因とされる。その政府の愚策に対して富山の女性たちが立ち上がり抗議の声をあげ、全国に広がった。
政府の無策・愚策、その根底に軍拡・軍事同盟がある点で、今回の「米騒動」と類似点がある。しかし、今回の「米騒動」で反政府行動は起こっていない（報道されていない）。代わりに報道されているのは「2000円の米」を求めて前夜から並んでいる長蛇の列だ。
70年代に「生活保守主義」という言葉がはやった。その後の生活苦とコミュニティーの崩壊によって、今やそれは「生活利己主義」にまで至っているのではないだろうか。
米の高値に頭を抱えるとき、飢餓で生死の境に置かれているガザ・紛争地の人々にも思いを馳せたい。医療・教育含めあらゆる値上げで生活が苦しい今、その怒りを政治・政権に向けたい。生活破壊の一方で聖域化されて膨張を続けている軍事費へ目を向け削減の声を上げたい。
日本のメディアが生まれ変わることができるとすれば、それは市民が覚醒した時以外にない。