


朝日新聞の世論調査で、「政党や政治家が消費減税を訴える際、代わりの財源を示すべきか尋ねたところ、「示すべきだ」が72%で「示す必要はない」の21%を大きく上回った」(18日付朝日新聞デジタル)といいます。当然でしょう。
問題は、その「減税財源」として「軍事費(防衛費)削減」を主張している政党が1つもないことです。
日米軍事同盟・軍拡を積極的に擁護する自民・公明、立憲民主、維新、国民民主の各党が軍事費削減を口にしないのはいわば当然の帰結ですが、不可解(問題)なのは、日本共産党です。
共産党は来年度予算が成立した翌日のしんぶん赤旗の「主張」(社説)で、「軍事費は前年度比9・4%増の8・7兆円と突出」と批判し、「暮らし優先の予算にするためには、「日米軍事同盟絶対」「財界・大企業中心」の二つのゆがみにメスを入れることが必要です」と主張していました。
ところが今月15日、国会内で記者会見した田村智子委員長はこう述べました。
「田村氏は、自民党が「財源がない」ことを唯一の理由に消費税減税を拒否している中、しっかりした財源を確保することと一体に減税を提案してこそ自民党との論戦に対峙できると指摘。「大企業と富裕層への減税・優遇を見直すことで恒久的財源を確保する。公正な税制への改革と一体となった日本共産党の提案が消費税減税への確かな道だ」と述べました」(16日付しんぶん赤旗電子版=写真右)
ここには「軍事費」の「ぐ」の字もありません。「大企業と富裕層への減税・優遇を見直す」ことが「財界・大企業中心」の「ゆがみ」に「メスを入れること」だとしても、もう1つの「ゆがみ」である「軍事費突出」「日米軍事同盟絶対」の方への「メス」はどうしてしまったのでしょうか。
言行不一致は近年の日本共産党には珍しいことではありませんが、自民党政権を「軍事費突出」と批判しておいて、肝心の減税財源では軍事費には手を付けない。これは言行不一致の中でも最悪の部類と言わねばなりません。
日米軍事同盟(安保条約)の深化で自衛隊と米軍の一体化が急速に進み、沖縄のミサイル基地化・戦場化の危機がかつてなく強まっているとき、そして突出した軍事費が市民生活のあらゆる分野を圧迫しているとき、「軍事費削減」を主張する政党が1つもない。
この現実は、戦争国家化へ向かって日本政治の大政翼賛化がかつてなく進行していること、まさに“いつか来た道”であることを示しています。
軍事費を聖域にしているメディアも大政翼賛の一翼です。
朝日新聞は「減税の財源」についての世論調査を行うなら、「何を財源にすべきか」という質問項目を加えるべきです。そして選択肢の中に、「軍事費(防衛費)削減」を加えるべきです。はじめから軍事費膨張を不問にしている「世論調査」は有害でしかありません。