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米国労働運動 : 組合員オルガナイザーで組織拡大する新聞労組 | ||||||
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【解説】アメリカの新聞業界を組織する新聞労組 NewsGuild が急拡大している。その要因が組合員自らが組織化する草の根の組織化戦略である。従来からの産別大労組の専従スタッフによる上からの組織化ではなく、職場で働く労働者主導の組織化である。50年以上に亘って記者を務めた一組合員の報告がレイバーノーツ誌9月号に掲載されているので、翻訳した。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。 組合員オルガナイザーで組織拡大する新聞労組2025年8月18日 ランディー・ファースト*
過去20年間で新聞業界は激変した。新聞の紙媒体読者数は急減し、デジタル読者数は緩やかに増加している。地方紙は投資ファンドが支配する巨大チェーンへと統合が進んだ。デジタル専業メディアサイトも急増している。 このように変化する新聞業界に、メディア王たちが強いている劣悪な労働条件と低賃金に憤る新たなジャーナリストたちが流入している。このような何千人ものメディア労働者が、新聞労組 NewsGuild に居場所を見出している。 新聞労組は近年、一般組合員の闘争意識の高まりと革新的な組織化戦術により変貌を遂げた。2020年以降、新聞労組は米国内の主要メディア組織を含む210の職場で組織化を実現。これにはニューヨーク・タイムズ紙のIT部門従業員600人(国内最大の組織化されたIT部門)、ポリティコ社の従業員226人、アトランティック誌の従業員180人、さらにアンカレッジ・デイリー・ニューズ紙の従業員20人といった小規模事業の組織化も含まれる。 新聞労組は全米通信労働組合(CWA)の一部門であり、CWAは通信、航空、公共部門、製造業の労働者も代表している。2020年以降、新聞労組はCWAの他の部門よりも急速に成長し、8,500人以上の労働者を組織化した。現在、新聞労組は米国とプエルトリコの519の職場で25,800人の労働者を代表している。カナダにも6,000人の組合員を擁する。 過去5年間で新聞労組は95回のストライキを実施。その多くは短期でほぼ全て成功した(ただしピッツバーグ・ポスト・ガゼット紙での困難なストライキは7月に1,000日を超えた)。これらのストライキの多くは最初の労働協約を獲得する闘争の一環であった。2024年1月以降だけでも、新聞労組は62件の労働協約を初めて交渉成立させている。また非営利団体や労働組合のスタッフも組織化しており、増加中である。 組合員自身による組織化新聞労組の組織化戦略が成功している理由は、組合員主導による組織化活動にある。新聞労組は自らの職場で組織化に成功した一般組合員を動員し、他職場の労働者組織化を支援させている。これらの労働者の一部はボランティアであり、他の一部は新聞労組から週に数時間の報酬を得ている。この戦略は部分的には、必要に迫られて発展したもので、全国で急増する組織化の件数が、組合の少数の常勤スタッフの人員規模を上回ったためである。 組合員同士の組織化により、組合結成を目指す労働者は「自身の組合認証選挙で勝利したばかりの一般組合員から学ぶ機会を得られる。これは非常に強力な経験だ。そしてそれが繰り返され、再び勝利を収める——そうしてさらに多くの組合員オルガナイザーが生まれる」と、新聞労組のジョン・シュルース会長は語る。 シュルースは2015年にロサンゼルス・タイムズ紙の編集局で組合結成運動を主導した後、デジタルニュース記者として新聞労組に加入した。2019年にはわずか32歳で新聞労組の会長に選出された。その指導下で組合員による組織化戦略は大きく発展した。 組合員による組織化活動を統括するスタッフのステファニー・バジルは、基本理念を「組織化活動の民主化と脱職人芸化」と説明する。「この二つは広く教え、共有できるものだと確信している」 組織化の研修では、組合員のオルガナイザーは組織化キャンペーンの次のステップを一緒に模索する。「『学び、実践し、教える』という理念のもと、他の組合員が任務を引き継ぎ、仕事を分担できるよう育成しています」とバジルは説明する。 『オルガナイザーのためのグループセラピー』報道の現場では、新聞労組の組合員オルガナイザーがこの草の根手法の力を実感している。「組織化は困難で、時に消耗する」と語るのは、ポートランド・プレス・ヘラルド紙の芸術文化記者であり、メイン州新聞労組会長を務めるメーガン・グレイだ。メイン州の組合員オルガナイザーの月例会議は「オルガナイザー向けのグループセラピーのようになっている」と彼女は説明する。 経験を共有することで、オルガナイザーは問題解決の新たな方法を考え出し、連帯を築くための実践的な助言を学ぶことができる。メイン州新聞労組の組織化文化は、バンゴー・デイリー・ニュースのジャーナリストたちが組合に連絡を取り、組合員のオルガナイザーの支援を得て組合代表権を獲得した2022年に根付き始めた。 組合員主導の組織化は、一般組合員主導の団体交渉のやり方も生み出してきた。新聞労組の団体交渉ディレクター、ダニエル・ニューサムは、指導部が「自身の職場と他の職場の双方の団体交渉を支援するため、より多くの組合員を育成する必要がある」と判断したと述べた。「問題を最もよく理解し、日常的に経営陣と対峙している人々が、交渉の場で主導権を握るべきだ」とニューサムは語る。 新聞労組の草の根的な闘争性は、シカゴで隔年開催される「レイバー・ノーツ」大会への大規模な参加によっても支えられている。過去2回の大会では、新聞労組は両方に100人以上の組合員を派遣した。来年はさらに多くの参加を目指す。「私たちはレイバー・ノーツ大会に参加し、他職場の一般組合員と交流し、そこで得たものを持ち帰って研修に取り入れている」とシュルースは語る。 同氏が説明するところでは、新聞労組がレイバー・ノーツや他組合から学んだ戦略の一つが「公開交渉」だ。会社との交渉会議に一般組合が同席することを要求する手法である。組合員が経営陣の強硬で柔軟性のない姿勢を目の当たりにすると、闘争心が高まるのだ。 ストライキ準備完了新聞労組は必要な時にはストライキする覚悟があることを示してきた。昨年秋、ニューヨーク・タイムズ社では技術部門労働者による8日間のストライキが行われ、数百人の労働者がピケラインに立った。組合員オルガナイザーの支援で組織されたこのストライキは大統領選挙の週に実施され、組合が最大の交渉力を発揮できるタイミングで行われた。タイムズ社は選挙向けに計画していた特集記事の多くを掲載できなかったと、タイムズ技術部門組合のキャシー・チャン支部長は語る。 チャンさんによれば、新聞労組は技術部門のストライキ闘争を支援するため3人の組合員オルガナイザーを配置した。ストライキに至る最大の争点は、労働協約に「解雇に必要な正当な理由条項」を盛り込むことをタイムズ社が拒否したことだ。同社には説明なしに労働者を解雇する前例があり、この条項があればそのような行為は禁止される。ストライキから1か月後、組合は正当な理由のない解雇からの保護を含む協約合意に達したと発表した。 新聞労組の組織化戦略はラトガース大学の労働研究のエリック・ブラン教授の注目を集めた。彼の近著『私たちが組合だ:労働者同士の組織化が労働運動を活性化し大きな勝利をもたらす方法』は新聞労組のモデルを強調している。 「新聞労組は国内で最も効果的な組織化モデルを持っている」とブランはインタビューで語った。「国内の全ての組合が新聞労組の方向へ進むべきだ。労働者リーダーを育成し、従来は専従スタッフのみが担えるとされた責任を引き受けさせているからだ」「体系的な訓練により労働者により多くの責任を与えることで、新聞労組は拡大可能なプログラムを構築している」とブラン教授は説明する。「数千万の労働者を組織化しようとするなら、ほとんどの組合は新聞労組が行っていること——つまり労働者リーダーにより多くの指導力と責任を与えること——を実践する必要があるたろう」。 *ランディ・ファーストは新聞労組の活動的な組合員であり、1973年から2025年までミネソタ・スター・トリビューンの記者を務め、今年引退した。 Created by staff01. Last modified on 2025-09-01 16:53:22 Copyright: Default |