『平和のための日本民衆外交団』大使館めぐり
〜パレスチナ大使からガザの被害実態をうかがう
知多 歩

パレスチナの人々の苦難は続いている。2023年10月からのイスラエルによるガザ地区への攻撃はますます厳しさを増し、被害拡大も続いている。
イスラエルによる占領政策は国際法違反であると2024年7月に国際司法裁判所ICJは勧告的意見を出し、11月には国際刑事裁判所ICCが戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いでネタニヤフ首相ら3人に逮捕状を出した。また同年9月には国連総会の緊急特別会合で1年以内の占領終了を求める決議が日本を含む賛成多数で採択されたにもかかわらず、事態好転はいっこうに見えない。
この状況は座視できないと心を痛める人たちが全国各地から集まり今年春に動き始めた『平和のための日本民衆外交団』は、瀬尾英幸事務総長を中心に議論を重ね一万人超に情報を発信、日本国内の大使館への働きかけなどを行っている。6月には日本政府外務大臣宛に、パレスチナを正式に国家承認するよう求める文書を送った。
ガザの被害実態は報道をはるかに上回る
8月20日、パレスチナ大使館に求めていた面談がかない、パレスチナ国駐日パレスチナ常駐総代表部ワリード・アリ・シアム大使と一時間あまり話をすることができた。大使からはガザおよびパレスチナの被害その惨状についてイスラエル側が発信しているSNS動画を示しながら説明を受け、さらに参加メンバーの質問に丁寧な返答をいただいた。
最も驚いたのは、ガザに住む220万人のうち死者および消息、行方不明者を含む総数で、15万人という耳を疑う衝撃的な数字。マスコミを通じて我々が見聞きする死者数は6〜7万人でそれも十分に痛まし過ぎるのに、実際の被害はそれをはるかに上回っているというのだ。この数はガザの市民登録数や抹殺された家族の記録などから明らかであると。しかも攻撃のターゲットは女性や子どもで、パレスチナの次世代を無くすのが目的だとのこと。

またガザに落とされた爆弾は88000トンでこれは6発の原爆にも匹敵する攻撃であり、ガザの75%が破壊されているそうだ。イスラエル兵士は爆撃を楽しんでいるようだとも。爆撃だけでなく、水や食料、物資の不足による死傷者も多く、ガザ出身の大使夫人の身内も被害を受け、いとこは心臓病の薬が手に入らず亡くなったそうである。
イスラエルによる攻撃が収まらず激しさを増す理由についての質問には、経済や政治、報道など世界中のあらゆる分野にユダヤの強大な力が及んでいるためだとの認識だった。
団結した大きな声で国を動かしてほしい
ジェノサイド被害当事国の大使に、日本に住む私たちへの要望をうかがったところ、答は「まず選挙への投票」。パレスチナに共感連帯し平和を実現出来る政治家を増やしてほしいとのこと。そしてパレスチナに心を寄せる日本市民への感謝の言葉とともに口にされたのは、日本では個人や小さなグループの活動ばかりでその声は小さく弱い。行われているデモも欧米などに比べ、人数が桁違いに少ない。さまざまな団体が集まり団結して大きな声で国を動かしてほしいとの要望だった。これは私たちも共感せざるをえない耳の痛い指摘であり、まさに私たち市民活動の課題だと思った。
ちなみに今年6月、一等参事官からうかがっていたのは、1 いま行われているのは紛れもなく「ジェノサイド」であること、2 イスラエルへの武器供給をやめること、3 援助は国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWA(略称アンロワ)を通して行なってほしいこと、の三つだった。
誰かの利益のために不正義が大手をふってまかりとおり戦争が絶えない現状、とりわけ罪のないパレスチナの人々が苦しむ状況は酷すぎる。許されるはずがない。国際秩序の崩壊と暴力の連鎖はすでに始まっているのではないか。
私たちに、私に、出来ることを考え、平和を築くために必要なことをやっていくしかない。パレスチナ大使からいただいた課題は重い。
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staff01.
Last modified on 2025-08-22 12:41:49
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