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「外国人は優遇されている」は全く根拠のないデマ

竪場勝司


 参院選で日本社会に外国人などを敵視する排外主義が急速に拡大している状況に危機感を覚えた、外国人などの人権問題に取り組むNGOが7月8日、東京都千代田区内で記者会見を開き、「参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明」を発表した。

 声明は、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人権差別撤廃法」の制定を求める連絡会(外国人人権法連絡会)、外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会、人種差別撤廃NGOネットワーク、全国難民弁護団連絡会議、つくろい東京ファンド、反貧困ネットワーク、フォーラム平和・人権・環境、の8つのNGOが呼びかけ、266団体から賛同があった。

 会見では、最初に外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士が声明の趣旨について説明した(写真下)。師岡さんは「参院選挙にあたり、『外国人が優遇されている』、『外国人が治安を悪化させている』などのデマに基づいて、日本社会に外国人、外国ルーツの人たちを敵視する排外主義が急速に拡大していることに、私たちは強い危機感を持っている。外国人などが置かれている厳しい状況を直接知っている私たちが、声を届けなければならないと考え、急きょ共同声明を出すことにした」と声明発出に至った経緯を語り、NHKなどが6月に発表した調査では「日本社会では外国人が必要以上に優遇されている」と考える人たちが6割を超えていることに触れた。

 師岡さんは「埼玉県南部に居住するクルド人へのヘイトデモ、街宣が毎月のように行なわれ、ネット上は連日大量のヘイトスピーチがあふれている。クルド人の子どもがスマートフォンで無断撮影され、『万引きをした』などのデマとともにアップされたり、公園で遊んでいる子どもたちが複数の男性に暴力を振るわれたりなどのヘイトクライムも行なわれている」と深刻な現状を語った。

 参院選に関しては「『違法外国人ゼロ』、『外国人優遇策の見直し』、『日本人ファースト』が掲げられるなど、各党が排外主義的な政策を競い合っている状況だ。政府も『ルールを守らない外国人により国民の安全安心が脅かされている社会情勢だ』として、『不法滞在者ゼロ』を打ち出している」と指摘。

 師岡さんは「『外国人が優遇されている』というのは全く根拠のないデマだ。外国人は税金や社会保険料を払っている。それなのに選挙権がない、政党に寄付することもできないなど、意見を表明する権利は非常に制限されている。生活保護制度は、準用はされているが、日本国籍者とは異なって不服申し立てをすることはできず、法的な権利としては認められていない。医療、年金、国民健康保険、奨学金制度などで外国人が優遇されているという主張は、事実ではない。『日本人ファースト』とのスローガンは外国人というだけで『ないがしろにしていいい』というメッセージを含んでおり、排外主義につながる」と強調した。

 声明は、各政党・候補者に対し「排外主義キャンペーンを止め、排外主義を批判すること」、政府・自治体に対し「選挙運動におけるヘイトスピーチが許されないことを徹底して広報すること」を強く求め、有権者に対しては「外国人への偏見の煽動に乗せられることなく、国籍、民族に関わらず、誰もが人間としての尊厳が尊重され、差別されず、平和に生きる共生社会をつくるよう共に声をあげ、一票を投じるように」と訴えている。

政党や政府がヘイトを煽っている

 会見では、続いて8団体の関係者が次々と発言した。移住連の鳥井一平さんは「メディアのみなさんも事実を知らせてほしい。政府の移民政策は歪んでいる。現にいる移民を認めないものだから、『労働者の受け入れ』と『共生』を別個に議論している。技能実習の『奴隷労働』の実態は今も続いている。どこが優遇されているのか。私たちは選挙でだまされてはいけない。外国人のせいにするな、ということだ。『外国人のせいで賃金が上がらない』と公然と放送の中で言っている人がいるが、そんな事実はどこにも見当たらない。政党が、政府がヘイトを煽っている、デマや嘘を拡散している。投票する人たちには事実を知ってほしい。この社会は外国人の存在なくして、移民の存在なくしては成り立たない。人々が求めている次の社会はヘイトの社会ではなく、違いを尊重する社会だ。目の前にいる外国人たちと何とかうまくやっていきたいという、その声を反映するのが政治の責任だ」と強い口調で語った。

 生活困窮者の支援に取り組んでいる、つくろい東京ファンドの大澤優真さんは、数々のデータを示しながら、「外国人は医療を食い物にしている」、「生活保護をいっぱい受けている」、「外国人のせいで治安が悪化している」といった言説が、事実に基づかないデマであることを訴えた。

 8団体では、緊急共同声明を政府や各政党に送り、今後も声明への賛同を募る活動え続けていくことにしている。


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