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LNJ Logo 報告 : 大阪「どうしたら戦争をなくせるの?」集会
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今こそ語りたい〜戦争をとめるにはどうすればいいか

かわすみかずみ

*討論会で挨拶する山橋さん(向かって左)中央はダニー·ネフセタイさん、右は石田隆至さん

 7月6日、大阪市阿倍野区の阿倍野区民センターで「どうしたら戦争をなくせるの?」 (主催:大阪城狛犬会)という集会が行われた。会場には約150人が集まった。1時間に およぶ討論会がメインの集会で、日本が軍事化に突き進もうとする現状への危惧も感じら れるものとなった。

 午前9時、阿倍野区民センター前に集会のスタッフが集まった。集会全体を統括する大 阪城狛犬会の伊関要さんは、大きな荷物を抱えて現れた。朝早いのに、もう気温は30度を 超える勢いだ。汗だくになりながら会場が開くのをみんなで待つ。 9時25分に会場に入り、簡単な打ち合わせのあと、それぞれの持ち場に着いた。登壇者の 机や椅子のセッティングや受付準備にあちこち動き回る人々。今日の登壇者であるダニー ・ネフセタイさんや石田隆至(りゅうじ)さんの書籍、わだつみ会(戦没学生記念会)の 資料集が並んだ。

 10時半。集会が始まった。司会の伊関さんは「7月7日は中国では抗日戦争勝利の日で すが、日本では盧溝橋事件があった日です。このあと日本軍は南京を陥落させ、同時に南 京大虐殺を遂行しました。日本人は提灯行列で銃後から応援したことを忘れてはならない と思います」とあいさつした。 戦争は洗脳によって作られたもの

 最初の登壇者はダニー・ネフセタイさん。イスラエルで生まれ育ち、高校卒業後に徴兵 制によって軍隊に入った。イスラエルではパイロットになることが最高の栄誉とされ、パ イロットになった子どもを持つ母親は称賛される。ダニーさんも当然パイロットを目指し たが、試験に落ちたためなれなかった。

 45年前に来日し家具職人となった。日本での暮らしの中で気づいたことがあると、ダニ ーさんはいう。  ダニーさんは、パイロットになれなかった自分をずっと卑下してきた。だが、日本でそ のことを考えているうちに、「パイロットになっていたら、自分はガザに爆弾を落として 、たくさんの人を殺していたかもしれない」と思うようになった。自分は洗脳されていた のではないか?と感じた。  イスラエルでは、「シリア人は敵だ」と教えられてきた。会ったこともないシリア人を 、ダニーさんは敵だと思って生きてきた。

 ある日、ダニーさんは公園で露店を営むシリア人に出会う。公園にいたシリア人と、ダ ニーさんは普通に話をして、露店で食事をした。イスラエルで教わったことは何だったの だろう?とダニーさんは思う。  ダニーさんは言う。「戦争はDNAに刻まれたものじゃない。洗脳によって作られたもの だ」と。

被爆ピアノで平和を歌う

 12時45分からは池辺幸恵さんの平和コンサートが行われた。池辺さんは広島で生まれ育 った。親戚や友達を原爆で亡くした。池辺さんは被爆したピアノを修理して、被爆ピアノ とともにコンサートを行っている。日朝国交正常化への取り組みに熱心に関わり、平壌で コンサートも行なった経験を持つ。沖縄や慰安婦問題にも関心を寄せている。

 この日はショパンの別れの曲や、阪神淡路大震災の際、被災地で作られた「幸せ運べる ように」などの演奏に合わせて、原爆投下後の街の様子や沖縄戦の映像などを映した。

戦争を止めるために

 石田隆至さん(写真)は、上海交通大学で人文学副研究員として日本史を研究している。石田さ んは、戦争を実際に終わらせることができた実例として「撫順戦犯管理所」を挙げた。撫 順戦犯管理所では、日本軍に家族を殺された人々が戦犯である日本人約1000人に温かい食 事を作り、風呂を沸かし、世話をした。戦犯の日本人たちは、ここでの待遇や多くの対話 の中で、自分達の加害を見つめ、告白していった。  石田さんは、「戦争を終わらせるには心からの謝罪と反省が必要だ」という。ダニーさ んが長い時間をかけて、自分がしてきたことがどれだけの人を苦しめたかを考えたことと ともに「洗脳を解く」ことの重要性を語る。

 一方で、戦時中に朝鮮やアジア諸国で日本軍の慰安婦とされた女性たちの問題は解決し ていない。日本政府は日韓基本条約(1965年)によって解決したという常套句を繰り返す だけで、元慰安婦への謝罪も補償も行なっていない。

語る場を作りたかった

 15時からは全体討論が行われた。討論をまとめる山橋宏和さんは、ベトナム戦争で日本 から飛行機が戦地に行ったことに「これで良いのか?」と思った経験から、今に続く活動 を始めたという。山橋さんと伊関さんは「1%の底力」という団体を作り、朝鮮学校に収 入の1%を送る活動を続けている。2人はこの集会の主催である大阪城狛犬会のメンバー としても活動。大阪城に置かれている狛犬が中国から略奪されたものであることから、大 阪城の案内板に事実を記すよう継続的な働きかけを行なっている。 今回登壇した石田さんは「僕は本当は、井関さんや山橋さんの話こそ聞きたいと思うんで す」と、講演の合間に語った。

 山橋さんは「昔は職場でも学校でも、討論する場所がいっぱいあった。でも、今は減っ ているような気がします。だからこそ、今日は討論の場を作りたかったんです」という。

 会場からは、何人もの人が手を挙げて発言。資本主義の持つ特権性が戦争を起こしてい るという意見や、次世代に「戦争はいけない」と伝えることが必要だという声があった。  岡山から参加した在日コリアン2世の男性は、「日本は"終戦"というが、"敗戦"なのか "終戦"なのか?」と問うた。  これに対し石田さんは「"終戦"という言葉はごまかしだと思います」と毅然と答えた。

 一方で「今、続いている戦争があり、多くの人が犠牲になっています。すぐに止めない といけない。具体的な実施策を話し合うべきじゃないですか?」という意見も出され、白 熱した議論となった。山橋さんは「日中友好こそが戦争を止める方法だと思います。信頼 できる関係をつくれば戦争は起こらないはずです」と結んだ。

 参加者の関心は高く、休憩時間には書籍販売のコーナーに人だかりができた。石田さん の本は完売し、ダニーさんの本も30冊以上売れた。

抑止力で平和は作れない

 大阪城狛犬会は、昨年からこの集会を準備してきた。集会のチラシには「この討論会は あなたがこのチラシを手にした時から始まります」と書かれている。戦争をなくすための 具体的な方法をいろいろな人に投稿してもらい、《日中友好ひろば https://nittyuyuko-hiroba.com/》に掲載している。山橋さんにお聞きし たところ、集会当日までに12件の投稿があったという。 山橋さんは、「現役自衛官の方からの投稿もありました。12件の投稿で、抑止力を高める べきという意見を挙げた人はひとりもいませんでした」と語った。

 今も戦火を逃れる人々がいる。その一方で戦争によって儲けている人々がいる。「命よ り金」という社会を変えるために私たちができることは何か?そのことを深く考えさせら れた集会だった。


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