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●根津公子の都教委傍聴記(2025年6月26日)

教育委員は都教委の施策を無批判に受け入れないで

 議題は、議案が「いじめ総合対策〈第3次〉について」、報告が「今年度東京都教科用図書選定審議会の答申について」(来年度から使用する都立小学校家庭科教科書)「来年度使用都立高校用教科書の調査研究資料について」「東京都が目指す『次世代の学びの基盤プロジェクト』〜『新たな教育のスタイル』の確立に向けて」。「懲戒処分」の案件は珍しく、ありませんでした。   

■「いじめ総合対策〈第3次〉について」

 教員向けには162ページからなる『いじめ総合対策〈第3次〉学校の取組』、及び120ページからなる『いじめ総合対策〈第3次〉実践プログラム』を、子ども向けには『いじめ総合対策〈子供版〉小学校1年生から3年生向け』、同『小学校4年生から6年生向け』、同『中学生・高校生向け』を6月末までに配布し、この先4年間、各学校はこの冊子を使って取組を進めると言います。280ページに及ぶ冊子を、果たしてどのくらいの教員が読むでしょうか。

 この冊子作成に当たっては、3月末から1ヶ月間、パブリックコメントを募集し、4月中旬から1ヶ月間は都教委指導部の指導主事(元は教員)が小・中・高・特別支援学校各1校を訪ねて意見聴取をしたとのこと。その際、特別支援学校の生徒が発言した「いじめをした人は あまり覚えていないかもしれないけれど いじめを受けた人はずっと忘れないよ 心に一生消えない傷が残るんです」のことばを子ども版の最後に記載したとのことです(『小学校1年生から3年生向け』は易しい言葉で)。このことばは体験からのことばか、大事なメッセージではありますが、こうしたことでいじめが少なくなるとは思えません。

 「いじめ・不登校は過去最多」と今春も報じられました。2014年から学校・地域住民・警察などの関係機関が一体となっていじめ防止に動いてきたはずなのに、いじめは減るどころか増えるばかり。このことについて都教委は、何が要因なのかを検討していないのではないかと思います。学校が子どもたちにとって楽しいところ、自他ともに認め合える、上下のない関係にあれば、いじめは起きないはずで、学校がそうでないから子どもたちはうっぷん晴らしにいじめに走る、あるいは自分が標的にならないようにいじめに加担するのだと思います。

 これまでに何度か書いてきましたが、私が1990年代に働いていた学校は、学校が子どもたちにとって楽しいところ、自他ともに認め合うところになっていて、私の在職した10年間に不登校もいじめもありませんでした。そのきっかけは94年3月の卒業式の朝、職員も生徒たちも「日の丸」掲揚に反対する中、校長が市教委の「指導」という名の指示・命令に従い「日の丸」を掲揚したことにありました。生徒たちは主張し実行することの大切さを、校長を反面教師にして学んだのでした。その経緯を見てきた教員の一人である私は、だから、いじめの要因・予防を断言できるのです。

 上意下達の学校体制を、20世紀までのように生徒たちの声をもとに職員会議で決定し実行する学校に変えることが先決です。都教委が各学校を管理・監視し指示命令を出してきたことを止め、学校に決定をゆだねるべきです。そうすれば必ずや、いじめ防止、そして不登校防止につながります。教育委員の皆さんは、都教委の施策を安易に受け入れずに、都教委に批判的な私たちの声にも耳を傾けてほしい。

■「東京都が目指す『次世代の学びの基盤プロジェクト』〜『新たな教育のスタイル』の確立に向けて」

 都立高校を「新しい学びの場」へ進化させるために、「デジタルとリアルを組み合わせた学び」「教員が生徒の学びを伴走」「LMS(*)により多様な学び方を実現し、教育効果を高める」ことで、「自立した学習者の育成」をするのだと都教委は言います(*Learning Management System)。

 今年度、すでに6校でデジタル教科書の使用を始めていて、今後、校長や教務担当者を集めたところで周知させ、実施できる学校から取り組む(ませる)とのことです。「この改革が都だけでなく、全国に広がるように」と、事務方は張り切って言いました。

 スウエーデンやイギリスなどいくつもの国がデジタル教育をやめているのに、都教委(文科省も)はなぜ、これに前のめりなのか。教育産業からのおこぼれを見込むのか、なんて思ってしまいます。  二つ目に、「教員が生徒の学びを伴走」と言いますが、そんな時間が教員にあるはずがないでしょうに。教育委員諸氏はこの「改革」を絶賛する発言をしましたが、教員にその時間が確保できるかは考えなかったのか、とても疑問でした。「働き方改革」を声高に言うようになった都教委及び教育委員の誰一人としてこれを言わなかったのですから。理解できない企画です。

 すでに、都教委HPにこの「構想資料」と「都民のみなさまへ」が掲載されています。

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 定例会傍聴報告ではありませんが、教育委員諸氏にぜひ見てほしい報道なので、ここに記します。この報道を見て現実を知ったなら、夜間定時制高校を廃校にすべきと表明してきた教育委員の方々の考えは変わると思うのです。6月22日(日)BS-TBS「噂の!東京マガジン」が夜間定時制問題を取り上げた番組です。
https://tver.jp/episodes/epzhcf6dqgp で30日12時までまで見ることができます。


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