万博工事未払い問題被害者の会：大阪府に要望書提出

かわすみかずみ

６月２３日、万博工事未払い問題被害者の会は大阪府に対して要望書を提出した（写真上）。アンゴラ館、マルタ館、ルーマニア館、セルビア館などで未払いに遭った業者６名が参加。大阪府広報広聴課に要望書を手渡した。被害者の会代表のアンゴラ館の建設業者は、「業者やその家族約１０００人が路頭に迷っています。早急に対応してほしいと思います」と切実に訴えた。

被害者の会は当初、吉村洋文大阪府知事に手渡したいと言っていたが、知事は夢洲での会議があり不在とのことだった。

記者クラブのほぼ全社が取材した他、大阪民主新報やフリージャーナリスト数名が参加した。

被害者の会は ①被害企業への早急な立て替え金の導入 ②建設業許可なく万博工事に参加した企業の実名公表と行政処分 ③下請け業者が安全に働けるための行政による監視 ④府の相談窓口の実用性向上 ⑤府から未払い企業への支払いの働きかけ、を要望。６月２７日までに回答するよう伝えた。

＊会見後に記者が更に質問を行っている

14時からの記者会見では、新たに参加した４社の被害企業が実情を語った。

Aさんはルーマニア館の元請けとして、GLジャパン社から昨年10月に１億４千万円の全館工事を請け負った。今年４月10日にすべての工事を完了し、４月１３日に請求書を送ったが、支払いの回答はない。メールや電話で催促するが「待ってほしい」と言われる。先々週には「契約違反があるので契約解消する」と一方的に文書を送ってきたという。セルビア館では元請けが最初から入れず、肩代わりした。その際の費用６６０万円も未払いとなっている。

Bさんはドイツ館の一次下請け業者だ。GL社からドイツ館の工事作業員が足りないので助けてほしいと言われ、作業員を送ったが、人件費の約1000万円が支払われない。GL社の財務担当者と話したが、振り込みはいまだ行われていない。

セルビア館では２次下請けとして館内工事に入った。GL社から工事費約3150万円が未払いとなっている。

GL社との話し合いを望んだが、「責任者がフランスにいるため分からない」などと話し合いに応じない姿勢だという。「人件費の未払いはあってはならないことです」と強い口調でGL社を非難した。

Ｃさんはルーマニア館、セルビア館の二次下請け業者だ。一次下請けが未払いになっているために、連鎖的に未払いが起こっている。セルビア館の追加工事分の約2400万円とルーマニア館の約2300万円がいまだ払われていない。一次下請けのＢ社とともに、GL社に交渉しているが、「わかりません」と言われるばかりで、どうしていいのか分からないという。

Ｄさんはルーマニア館、セルビア館の二次下請けだ。セルビア館では約260万円、ルーマニア館では約3069万円が未払いになっている。運転資金をすべて使って、関係する企業に支払いを行なったが、それでも払えないところがあり、待ってもらっている状態だそうだ。銀行の借り入れも断られ、事業継続が難しくなっている。「GL社は前日に作業員を◯人欲しいと言ってきて、無茶な要望だと思いながらも、なんとか人を集めてきたのに、本当に酷いと思います」とＤさんは語る。

質疑応答のところで、筆者は被害者それぞれに ①現場で夜間労働や長時間労働がなかったか ②理不尽なやり直し工事がなかったか ③留置権の行使についてどう考えているか、などを聞いた。

被害者らは一様に工事を急がされたことや、工事の内容が違うとやり直しをさせられたと答えた。

留置権(他者のものを占有するものが未払いなどを起こした場合、債権者が占有物を差し押さえる権利)については、「夜間に行って、全部撤去しようと何回も思ったのですが、万博ということもあってできませんでした」と悔しい表情を見せた被害者もいた。

GL社は国際イベントニュース(2019年7月)において今後５年以上はアジアや日本で活動したいと語っている。GL社は仮設建築物のスペシャリストとして世界中のメガイベントに参加。安く短期間でできる仮設建築を謳う。だが、その陰で泣かされている下請け業者が多数出ていることも事実だ。

2026年、愛知で行われるアジア競技大会での愛知県とスポンサー契約を結ぶGL社。被害者の会は、国家事業にこのような事業者を入れていいのかと憤る。

この他、中国パビリオンで下請け業者への未払いを行う名古屋市中村区の中日建設についても、実名を公表している。マスコミによる実名報道と取材を求めている。

要望書については、大阪府が対応してくれることを望むが、不可能であれば国に対しても要望すると述べた。